Appleがプロ向けデスクトップ「Mac Studio」の新モデルを発表しました。搭載するのはM5 Max、そして新登場のM5 Ultraです。ユニファイドメモリは最大512GB、メモリ帯域幅は1.2TB/sに達し、巨大な言語モデルを手元のマシンだけで動かすことを正面から狙った構成になっています。予約はすでに始まっており、発売は9月22日です。
GPUのコアごとに演算器、AI性能は最大4.3倍へ
今回の刷新でいちばん大きいのは、GPUの中身が変わったことです。M5世代のGPUは各コアにNeural Acceleratorを内蔵しており、AI処理の中心にある行列演算を専用回路で受け止めます。この構造がUltraクラスのチップに載るのは今回が初めてです。
Appleの計測では、M5 Ultra搭載のMac StudioはM3 Ultra搭載モデルと比べてAI演算のピーク性能が最大4.3倍、M1 Ultra搭載モデルと比べると9.8倍に達するとしています。ストレージは最大2倍、グラフィックスは最大1.8倍、CPUは最大1.3倍という伸び方で、AI周りだけが突出して速くなっている点が今世代の性格をよく表しています。
メモリ帯域幅が1.2TB/sまで引き上げられたことも見逃せません。前世代比で50パーセント増という数字で、大きなモデルの重みを読み出し続けるようなワークロードでは、この帯域がそのまま速度に効いてきます。
M5 Max搭載モデルは18コアCPUと最大128GBメモリ
M5 Maxを載せた構成は、6基のスーパーコアと12基の高性能コアを組み合わせた18コアCPUを備えます。GPUは最大40コアで、前世代から最大50パーセント高速になりました。ユニファイドメモリは最大128GB、帯域幅は最大614GB/sです。
実アプリでの数値も公開されています。ローカルでLLMを動かすLM Studioのプロンプト処理はM4 Max搭載モデル比で3.9倍、テキストから画像を生成する処理は最大3.5倍。映像制作ではDaVinci Resolve StudioのMagic Maskが最大3倍、研究用途ではOxford Nanopore MinKNOWのDNAシークエンシングのベースコールが最大1.9倍という具合です。音楽制作や写真編集、ソフトウェア開発、リアルタイム3Dといった領域を想定した構成と言えます。
M5 Ultra搭載モデルは36コアCPUに512GBメモリ
上位のM5 Ultraは、12基のスーパーコアと24基の高性能コアによる最大36コアCPUを載せます。GPUは最大80コアで、Apple Silicon史上もっとも強力なGPUという位置づけです。マルチスレッド性能はM3 Ultra比で最大1.3倍、グラフィックスは最大1.8倍となりました。
こちらはユニファイドメモリが最大512GBまで伸びます。ローカルで動かせるモデルのサイズはメモリ容量にそのまま縛られるため、512GBという上限は、これまでクラウドに投げるしかなかった規模のオープンウェイトモデルを手元に降ろせる可能性を意味します。トークン数を気にせず、データを外に出さずに推論できる環境が1台で完結するわけです。
メディアエンジンのエンコード/デコードブロックはM5 Maxの2倍で、8K ProRes 422の30fps映像を最大33ストリーム同時再生できるとしています。Foundry NukeのCopyCatによる機械学習トレーニングはM3 Ultra比で最大3.3倍、Maxon Redshiftのシーンレンダリングは最大1.7倍です。
4台つなげて推論を3倍に
今回もうひとつ目を引くのが、複数台をまとめて使う仕組みです。Thunderbolt 5とRDMA(Remote Direct Memory Access)に標準対応したことで、複数のMac Studioをクラスタ化し、システムをまたいだ大きな共有メモリプールを作れるようになりました。4台構成では、1台の場合と比べて分散推論が最大3倍速くなるとしています。
開発環境の側も整えられています。Apple Siliconに最適化した新フレームワークCore AIが用意され、ユニファイドメモリとCPU、GPU、Neural Engineを前提にフルスケールのLLMをローカルへ展開できます。オープンソースの機械学習フレームワークMLXと合わせて、実験から学習、配布までをMacの中で回す構図です。
ストレージと接続、そしてmacOS 27
ストレージはPCIe Gen 6ベースの新しいSSDアーキテクチャに変わり、読み書きが最大2倍高速になりました。巨大なモデルの読み込みやプロジェクトの展開といった、待ち時間が積み上がりやすい場面で効いてくる部分です。
インターフェイスはThunderbolt 5が最大6ポートで、帯域は120Gb/s。独自開発のN1チップによってMac Studioとして初めてWi-Fi 7とBluetooth 6に対応しました。USB-C経由のGenlockにも新たに対応し、ディスプレイとiPhone 17 Proのようなプロ用カメラの映像を正確に同期できます。ディスプレイは最大8台、Studio Display XDRであれば5K解像度・120Hzで最大4台まで接続可能です。
OSは今秋提供予定のmacOS 27 Golden Gateが前提となります。Spotlightやシステム全体のコンテクストメニューに統合されたSiri AI、写真編集やショートカット作成を助けるApple Intelligenceの各機能が、この筐体の性能と組み合わさる形です。
環境面では、製品全体の35パーセントに再生素材を使い、筐体は100パーセント再生アルミニウム、マグネットは100パーセント再生希土類元素で構成されています。サプライチェーン全体の使用電力のうち40パーセントは風力や太陽光といった再生可能エネルギーから調達したとしています。
価格と発売日
日本での価格は、M5 Max搭載モデルが419,800円(税込)から、M5 Ultra搭載モデルが949,800円(税込)からです。学生・教職員価格はそれぞれ385,800円(税込)から、880,800円(税込)からとなります。
予約注文は日本を含む30の国と地域で開始済みで、店頭とお客様への出荷は9月22日から。ただしユニファイドメモリ512GBの構成だけは10月下旬の登場となります。最大構成を狙うなら、もう1カ月ほど待つ必要があります。
まとめ
新型Mac Studioは、M5 Max搭載モデルが18コアCPUと最大128GBメモリ、M5 Ultra搭載モデルが最大36コアCPUと512GBメモリという構成です。GPUコアごとのNeural AcceleratorでAI演算のピーク性能はM3 Ultra比で最大4.3倍、メモリ帯域幅は1.2TB/sに到達しました。Thunderbolt 5とRDMAによる4台クラスタで推論をさらに3倍まで伸ばせる点も含め、ローカルで大きなAIモデルを回したい人に向けた作り込みが目立ちます。価格は419,800円から、発売は9月22日です。
