Apple Silicon搭載Macの上でLinuxを動かすAsahi Linuxが、M3シリーズへの対応をインストーラーに取り込みました。開発チームは9月6日付の告知で、M3世代のMacを正式なサポート対象にしたと表明しています。Webカメラや無線まわりはM1・M2世代とほぼ同じ水準に届いた一方、GPUとスリープという分かりやすい穴が残ったままの船出です。
日常的に使う部分はほぼ埋まった
告知によると、M3シリーズのSoCとそれを積んだ機種は、M1・M2世代で動いていたもののほとんどがそのまま動く段階に達しました。具体的に名前が挙がっているのは、Webカメラ、内蔵マイク、USB(ハードウェアの上限であるUSB 3の10Gb/s まで)、Wi-Fi、Bluetooth、そしてハードウェア支援による動画デコードです。デコードにはAV1が含まれており、ブラウザで動画を再生する場面ではここが効いてきます。
対応機種はMacBookとiMacで、チップはM3、M3 Pro、M3 Maxの3種類です。Mac Studioに載るM3 Ultraは今回の対象から外れています。
Asahi Linuxは、Apple Siliconの仕様を外側から解析してドライバを書き起こしてきたプロジェクトです。公式のハードウェア資料が出てこない相手を相手取る以上、対応は一足飛びには進みません。開発チームも、今回の到達点が複数人による数年がかりの成果であり、寄付を通じてM3の実機を確保できたことが前提だったと書き添えています。
GPUとDCPが残った穴
裏を返すと、埋まっていない部分もはっきりしています。開発チームが例外として挙げたのは、GPUと、ディスプレイ制御を担うDCPの完全な対応の2点です。3Dアクセラレーションについては、現時点で高性能も高い電力効率も期待しないでほしいと明言されています。続報は今後数か月のうちに出る見込みです。
DCPが揃っていないことの影響は、その先にも及びます。現状ではファームウェアが用意したフレームバッファを使う都合で、スリープが機能しません。同じ理由でMacBookのHDMIポートも無効化されています。ノートPCとして持ち歩くうえで、蓋を閉じても眠らない状態はかなり効くはずで、常用に踏み切るかどうかの分かれ目はこのあたりになりそうです。
試すにはExpertモードを通す
作業が新しいこともあり、M3向けの導入はインストーラーのExpertモードの内側に置かれています。macOSのターミナルから次のコマンドを実行し、あとは画面の指示に従う流れです。
curl -L https://alx.sh/ | EXPERT=1 sh
インストールが終わったら、システムの更新を忘れないよう案内されています。
dnf upgrade --refresh
このExpertモードの要件は、Fedora Linux 45のベータ公開に間に合わせて外すことが目標として示されました。数週間先の話で、大きな不具合が見つからなければという条件付きです。裏返せば、それまではまだ試験的な位置づけだと受け取るのが妥当でしょう。
本流のカーネルに入るのはこれから
もう1つ押さえておきたいのは、今回の正式サポートがAsahi Linux側の話に閉じている点です。Linuxカーネルの本流には、M3を起動させるための基本的な対応が入った段階にとどまっています。Asahi Linuxと同じ水準に追いつくには、その後のバージョンに向けて残りのパッチを取り込んでいく作業が要ります。
ディストリビューションが先行し、本流が後から追いつく形はApple Silicon対応では珍しくありません。ただ、本流に入って初めて他のディストリビューションでも同じハードウェアが動くようになるので、M3搭載MacでLinuxを選ぶ人にとっては、この上流側の進み具合のほうが長い目では効いてきます。
まとめ
Asahi LinuxのM3対応は、Wi-FiやUSB、AV1を含む動画デコードといった日常的な部分が実用水準に届いた一方、GPUとスリープが残った状態での正式サポートです。対象はM3、M3 Pro、M3 MaxのMacBookとiMacで、M3 Ultraを積むMac Studioは含まれません。導入は当面Expertモード経由ですが、Fedora Linux 45のベータに合わせて通常の手順へ移す計画が示されています。常用機として選べるかはGPUとDCPの進捗次第で、今後数か月の報告が判断材料になりそうです。
