OpenAIが現地時間9月16日、高齢者向けの対面ワークショップ「Older Adults AI Skills Jam」を全米10都市で開くと発表しました。AARP傘下のOATSと組み、合計1,000人の高齢者に無料でChatGPTの使い方を教える内容です。単なる操作講習ではなく、詐欺メッセージの見抜き方をカリキュラムの柱に据えている点が目を引きます[1]

全米10都市で1,000人、参加費は無料

今回の主役はOpenAI Academyと、AARPの高齢者向けテクノロジー支援団体であるOATS(Older Adults Technology Services)です。両者は複数年にわたる取り組みを進めており、今回のSkills JamはOATSの旗艦プログラムSenior Planetを通じて実施されます[1]

開催地は10のコミュニティで、地域団体との共催という形を取ります。Senior Planetが担当するのはコロラド州デンバー、フロリダ州マイアミ、テキサス州サンアントニオ、メリーランド州モンゴメリー郡、ニューヨーク州クイーンズの5拠点です。残りはミズーリ州セントルイスのThe Mirowitz Center、ミネソタ州ツインシティーズのSenior Community Services、テネシー州ナッシュビルのNashville Public LibraryとFiftyForward、カリフォルニア州フレズノのFresno EOC、アイダホ州ボイシのLEARN Idahoが引き受けます[1]

想定されている使い道は、旅行の計画づくり、読みにくい通知や請求書の内容を理解すること、詐欺の疑いがある連絡を見抜くこと、新しい趣味を始めること、家族や友人とつながり続けることなど、生活に密着したものが並びます[1]

55歳以上の利用は1年で6パーセントから約10パーセントへ

OpenAIは、この取り組みの背景として実際の利用データを挙げています。米国では、55歳以上の人に紐づくメッセージの割合が1年間で6パーセントから約10パーセントまで伸びたとのことです。用途としては、実務的なアドバイス、情報探し、文章を書く作業が多いと説明されています[1]

外部の調査でも近い傾向が出ています。AARPが公表した高齢者のテクノロジー利用に関する調査では、高齢者のAI利用が倍増し、さらに30パーセントがその可能性に期待していると報告されました[2][3]。数字だけを見れば、高齢者はAIから遠い層という前提はすでに崩れつつあります。

詐欺対策は「立ち止まる、考える、尋ねる」

ワークショップのなかでも比重が大きいのが、オンラインでの安全確保です。講習では詐欺によくある警告サインとして、急かすような言い回し、他人に言わないよう求める内容、不審なリンクの3つを取り上げます。そのうえで示される行動指針は、立ち止まる、考える、尋ねる(pause, think, ask)という簡潔なものです[1]

ChatGPTはここで、もう一段のチェック役として位置づけられています。OpenAIによれば、不審なメッセージやメール、ウェブサイトの判断を手伝ってほしいという依頼は、週に数千万回という規模で寄せられているそうです[1]

ただしOpenAI自身も、AIが人間の判断を置き換えるわけではないと明言しています。9月のAARPとの発表では、ChatGPTは不審な内容にフラグを立てる助けにはなるものの、本人の判断や、リンクを開かない、個人情報を渡さないといった基本的な安全行動と組み合わせて使うべきだと説明されました[2]。この線引きを講習の側で崩さないことが、実効性を左右しそうです。

AARPとの複数年計画の一部

今回のSkills Jamは、突発的な単発イベントではありません。OpenAIとAARPは2025年9月に複数年の取り組みを発表し、ChatGPTで詐欺を見抜く方法を扱うOpenAI Academyの動画から着手していました[2]

資金面の土台はさらに前からあります。2024年にOpenAIはOATSとともにSocietal Resilience Fundを立ち上げており、Microsoftの支援を受けた200万ドル(約3億1,000万円)の拠出でSenior Planetなどの活動を強化してきました[2]

※1ドル155円換算(2026年9月16日時点)

次の段階として掲げられているのは、Senior Planetのカリキュラム刷新と地域団体への助成によるAIリテラシー拡大、プライバシーとデータ保護の新講座やAARP州事務所向けの専門研修、そして高齢者のAI利用に関する年次の全国調査です[2]。教える、守る、測るの3点を並行して回す構えと言えます。

なお、OpenAI Academyは開設から1年で200万人以上が利用したとされています[2]。今回のような対面プログラムは、そのオンライン中心の取り組みを地域に降ろす役割を担うことになります。

まとめ

OpenAIとOATSによるOlder Adults AI Skills Jamは、全米10都市で1,000人の高齢者に無料の対面ChatGPT講習を届ける取り組みです。米国では55歳以上に紐づくメッセージの割合が1年で6パーセントから約10パーセントへ伸びており、実際の利用増を背景にした施策と読めます。詐欺対策を柱に据えつつ、AIが人の判断を代替しないと明示している点は、この種のAIリテラシー教育の現実的な落としどころを示しています。

出典:https://openai.com/index/helping-older-adults-use-ai-in-everyday-life

出典:https://openai.com/index/aarp-partnership-older-adults-online-safety/

出典:https://www.aarp.org/pri/topics/technology/internet-media-devices/2025-technology-trends-older-adults/