Micron Technologyは2026年9月15日(米国時間)、サーバー向けとして世界初となる512GB容量のDDR5 RDIMMを、複数のサーバープラットフォーム上で動作させることに成功したと発表しました。最大9,200MT/sで動作し、24本のメモリースロットを持つデュアルソケットサーバーなら1台で12TBのメインメモリーを積めます。同じ容量を128GBモジュール4本でそろえる場合と比べて動作電力は60パーセント以上少なく、AMDとIntelが次世代サーバー向けの検証を進めている段階です。量産は2027年後半の見込みで、すぐに買える製品ではありませんが、AIサーバーのメモリー構成を変えうる節目の発表といえます。

DRAMダイを縦に積んで1本で512GB

1本のモジュールに512GBを詰め込めた理由は、DRAMのダイ(半導体チップ本体)を垂直に積み重ねる実装技術にあります。積層したダイ同士はTSV(シリコン貫通ビア)と呼ばれる貫通電極でつながれ、パッケージの面積を増やさずに1パッケージあたりの容量を引き上げています。HBMでも使われている考え方を、サーバーの標準的なメモリーモジュールであるRDIMMに持ち込んだ形です。

モジュールの外形やスロット数は従来のままなので、サーバー側は筐体を変えずに搭載容量を伸ばせます。Micronが示す例では、24スロットの2ソケット機で最大12TBに到達します。現在サンプル出荷中の256GBモジュールでも、同じ構成なら6TBが上限だったため、単純計算で倍増です。

動作速度は最大9,200MT/sです。Micronは1γ(1ガンマ)世代のDRAMを使う256GB RDIMMでも9,200MT/sをうたっており、512GBモジュールも同じ速度帯で次世代プラットフォームに合わせて投入されます。

128GB×4本と比べて動作電力は3分の1近くに

Micronが強調しているのが電力効率です。512GBモジュール1本の動作電力は16.0Wで、同じ512GBを128GBモジュール4本で構成した場合の合計44.2Wと比べると、削減率は60パーセント以上(計算上は約64パーセント)になります。メモリーは常時通電している部品なので、この差はサーバー1台あたり、さらにはラック全体の消費電力に直接効いてきます。

性能面では、メモリー帯域と容量がボトルネックになる処理での効果が示されています。Sparkのサポートベクターマシン(SVM)を使ったデータ分析では、256GBのDDR5構成と比べて最大1.4倍の性能が出るとしています。RocksDBやRedisのようなメモリー常駐型のデータベースやキャッシュ基盤でも、スループットと同時処理数が上がり、データセットを効率よく広げられると説明しています。ただし、実際の伸び幅はワークロードやサーバー構成次第です。

想定用途はLLM推論からインメモリDB、仮想化まで

Micronがこのモジュールの用途として挙げているのは、大規模言語モデル(LLM)やエージェント型AI、リアルタイム推論、コア数の多いCPUを使う処理、インメモリデータベース、キャッシュサービス、そして仮想マシンの集約です。共通しているのは、大きなデータをストレージに退避させずメインメモリーに置いたままにしたい、という要求です。データをストレージとの間で行き来させる回数が減れば、その分だけ遅延と電力を節約できます。

Cloud Memory Business Unitを率いるRaj Narasimhan氏は、512GB RDIMMによって既存のサーバーの物理的な枠内でマルチテラバイト級の構成が可能になり、AIとデータベースの大型化、仮想化密度の向上、電力効率の改善を同時に進められると述べています。

AMDとIntelが検証、JPMorganChaseも期待を表明

発表にはAMDとIntelの両社がコメントを寄せています。AMDのAmit Goel氏はMicronとの設計面での協業によって演算とメモリーの革新を結び付けると述べ、IntelのKarin Eibschitz Segal氏も次世代データセンター向けの将来プラットフォームで512GB RDIMMを使えるようにするため、検証を進めていると説明しています。両社が同時に検証を明言していることから、次のサーバー世代では標準的な選択肢として扱われる可能性が高そうです。

ユーザー側からはJPMorganChaseでインフラ基盤を担当するCIOのDarrin Alves氏が、演算・メモリー・効率のバランスを最適化するうえで大容量メモリーが役立つとコメントしています。金融機関のようにインメモリ処理を多用する業種にとって、1台あたりの搭載容量が倍になる意味は小さくありません。

量産は2027年後半、サプライ全体の動きとも重なる

Micronは512GB RDIMMの量産時期を2027年後半とし、顧客の需要に合わせて立ち上げるとしています。発表から1年以上先になるため、当面は256GBモジュールが最上位という状況が続きます。それでも、DRAMの需要がAI向けに集中し、各社が新しい工場への投資を急いでいる今の局面で、1スロットあたりの容量を倍にできる技術が確定したことの意味は大きいでしょう。

なお今回の発表は「実証と検証中」の段階で、型番や価格は公表されていません。筆者としては、AI向けにDRAM需要が集中している状況を考えると、量産が始まる2027年後半にサーバー用メモリーの市場がどうなっているかも含めて注目したいところです。

まとめ

Micronは世界初の512GB DDR5 RDIMMを複数のサーバーで実証し、最大9,200MT/sの速度と、2ソケット機で12TBという容量を示しました。TSVでDRAMダイを積層する実装技術により、128GB×4本と比べて動作電力を60パーセント以上減らせるのが特徴で、AMDとIntelが次世代プラットフォーム向けに検証中です。量産は2027年後半の予定で、LLM推論やインメモリデータベースなど、大容量メモリーを求める用途に向けた製品になります。