OpenAIが9月16日、労働市場に関する調査シリーズ「Work at the Frontier」の第2弾を公開しました[1]。2026年4月から7月までの業務関連ChatGPTメッセージ150万件超を分析したもので、自分の職種の外にある仕事にAIを使った人が、その後もその仕事に戻ってくる様子が数字で示されています。肩書きが変わらないまま、担当する仕事の幅だけが広がっていく可能性を指摘した内容です。
前回は「職種をまたぐ利用」、今回は「その後」
7月に公開された第1弾では、業務利用の中でも職種が特定できるメッセージのうち43.5パーセントが、本来は別の職種に結び付いた仕事だったと報告されていました[2]。デザイナーが広告文を書き、営業担当がソフトウェアの不具合を調べるといった、職種の境界をまたぐ使い方です。
今回の第2弾が問いかけたのは、その次の段階です。境界をまたいだ利用は一度きりの試し打ちで終わるのか、それとも仕事のやり方として残るのか。OpenAIはChatGPT Businessの利用データを4か月にわたって追いかけ、後者に近い動きを見つけたとしています[1]。
職種の外では、プロンプトの書き方が変わる
興味深いのは、同じ人でも仕事の種類によってAIへの頼み方が変わっていた点です。職種の外にある仕事について尋ねるとき、プロンプトは職種内の仕事を尋ねるときより平均して短くなります。説明を求めたり、手順を教えてほしいと頼んだり、回答の形式を指定したり、助言を求めたりする割合も下がります[1]。
その代わりに増えるのが、具体例や背景情報を添える行為と、内容が正しいかどうかの確認を頼む行為です。OpenAIはこれを、専門知識そのものを教わろうとしているのではなく、手元の問題と材料を持ち込んで別分野の知見を借りにいく動き、つまり専門性の借用と解釈しています[1]。新しい分野を学び直すのではなく、同僚に持っていく質問をAIに向けている、と言い換えてもよさそうです。
4か月で倍増した「戻ってくる利用」
定着ぶりを示す数字は2種類あります。ひとつは、4月から7月まで継続して観測できた約6,200人を対象にした集計です。過去に使ったことのある職種外の仕事は、職種が特定できるAI利用のうち4月時点で13.1パーセントを占めていましたが、7月には25.9パーセントまで伸びました[1]。
もうひとつは、1か月後の追跡です。前月に職種外の仕事でAIを使った人がその翌月も同じ仕事に戻ってきた割合は23.6パーセントで、前月に同じ利用が観測されなかった条件の近い人たちの8.4パーセントと比べて大きな差が出ています[1]。職種内の仕事や一般的な作業でも、同じような差が確認されたとのことです。
戻りやすい仕事と、そうでない仕事
再利用率は仕事の種類によってかなり開きがあります。翌月も戻ってくる割合が高かったのは、顧客と商品やサービスについて話す仕事が54パーセント、広告や販促の文章を書く仕事が44パーセント、マーケティング資料を作る仕事が37パーセントでした[1]。
一方で、財務情報を説明する仕事は15パーセント程度にとどまります。職種外の仕事全体でならした翌月の復帰率は18.5パーセントでした[1]。OpenAIは、この差がAIの得意不得意だけでなく、職場の慣習や慎重さ、間違えたときの影響の大きさをどう見ているかを映している可能性にも触れています。金額や数字の説明で外すと困る、という感覚は日本の職場でも思い当たるところではないでしょうか。
調査の作り方とプライバシーの扱い
分析対象になったのは、ChatGPT Businessの初期設定で入力された役職や部署の情報から職種を判定できた利用者の会話サンプルです。学習利用をオフにしたデータと、分類に使えなかったメッセージは除外されています[1]。
OpenAIは、メッセージを集計・匿名化したうえで扱い、研究チームが個々の利用者のメッセージを読むことはないと明記しています[1]。なお、月を追うごとに新しい仕事を試す人が増えるため、繰り返し利用と見なせる仕事の数自体も増えていく点は、数字を読むうえで頭に置いておきたいところです。
制度より先に、仕事の中身が動く
OpenAIはこの結果から、AIツールを配ることと同じくらい、仕事の分け方や進め方の設計が組織のAI戦略に重要だと結論づけています[1]。誰かが職種の外の作業を試し、AIが使えると分かり、以降その作業に戻ってくる。この積み重ねが続けば、肩書きはそのままでも、その職に含まれる仕事の組み合わせは広がっていくという見立てです。
同社は雇用への影響を整理する枠組みとして「AI Jobs Transition Framework」も公開しており、技術的な代替可能性だけでなく、人が担う必然性や需要の伸び縮みを含めて職種を分類しています[3]。今回の調査は、その枠組みが想定する変化が実際の利用ログの側からも見え始めていることを示す材料と言えます。
まとめ
OpenAIの第2弾レポートは、職種をまたぐAI利用が一過性の実験ではなく、日常の作業手順に組み込まれつつあることを150万件超のデータで示しました。職種外の割合は4か月で13.1パーセントから25.9パーセントへ伸び、顧客対応や販促の文章づくりでは半数近くが翌月も戻ってきています。求人票の肩書きが書き換わるより先に、担当業務の中身が静かに広がっている。そう考えると、自社でAIをどう配るかより、誰にどこまで任せるかの線引きを見直すほうが先かもしれません。
出典:https://openai.com/index/unlocking-new-ways-of-working/
出典:https://openai.com/index/how-ai-is-expanding-what-people-do-at-work/
