Appleが8月25日、新しいデスクトップ向けチップとしてM6とM5 Ultraを発表しました。M6は同社初の2ナノメートルプロセスで作られたチップで、新型Mac miniに搭載されます。M5 Ultraは4つのダイを1つにまとめたApple史上最もパワフルなチップで、新型Mac Studioに載ります。どちらもデバイス上でAIを動かすことを強く意識した内容です[1]。
M6はApple初の2nmチップ
M6の一番の変化は製造プロセスです。Appleとしては初めて2ナノメートルの最先端プロセスを採用し、より小さなダイに高い密度でトランジスタを詰め込むことで、性能と電力効率の両方を引き上げています[1]。
CPUは12コア構成になりました。内訳は2つのスーパーコア、4つの高性能コア、6つの高効率コアで、M5から2コア増えています。重いシングルスレッド処理はスーパーコアが受け持ち、マルチスレッドの負荷は高性能コアが少ない電力で加勢し、バックグラウンドの雑務は高効率コアに任せるという役割分担です。マルチスレッド性能はM5と比べて最大1.2倍、M1と比べて最大2.4倍とされています[1]。
GPUも12コアに増え、各コアにNeural Accelerator(AI演算専用の回路)が組み込まれています。AI用途でのピークGPU演算性能はM5比で30パーセント近く、M1比では8倍以上に伸びており、デバイス上のLLM(大規模言語モデル)に指示を出したときのプロンプト処理が目に見えて速くなるという説明です。グラフィックス側では、シェーダコアアーキテクチャの更新、Dynamic Caching、ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシングに加えて、複雑な形状を扱うジオメトリレートが50パーセント向上しています[1]。
デュアル16コアのNeural Engineという新しい形
M6で目を引くのが、Neural Engineを16コア×2基というデュアル構成にしてきた点です。前世代と比べてピーク演算性能は最大2倍になり、しかもシステムフレームワーク側が2基を自動的に同時に使うため、アプリ側が特別な対応をしなくてもモデルの実行が速くなります[1]。
メモリは最大32GBのユニファイドメモリに対応し、帯域幅は最大170GB/sです。M5より10パーセント、M1と比べると2.5倍に増えています。ローカルでLLMを走らせる場合、演算能力だけでなくメモリ帯域が効いてくるので、ここを地道に積み増してきたのは理にかなった判断だと言えます[1]。
M5 Ultraは初のクアッドダイ構成
一方のM5 Ultraは、次世代のUltraFusionを使って2つのデュアルダイM5 Maxをつなぎ、Mシリーズとして初めて4ダイ構成を実現しました。ダイ間の帯域幅は4.4TB/s以上、接続密度は6倍以上に引き上げられており、この超低レイテンシーな相互接続によって4つのダイが1つのプロセッサとして振る舞います[1]。
CPUは最大36コア(12のスーパーコアと24の高性能コア)、GPUは最大80コアです。M3 Ultraとの比較ではシングルスレッドが最大1.25倍、マルチスレッドが最大1.3倍、AI用途のピークGPU演算性能は最大4.5倍、グラフィックス性能は最大40パーセント高速とされています。M1 Ultraと比べればAI演算は6倍以上です[1]。
メモリまわりは数字がさらに大きくなります。最大512GBのユニファイドメモリに、M3 Ultra比で50パーセント高速な1.2TB/sの帯域幅。数千億パラメータ級のLLMを丸ごとデバイス上で動かせるという主張は、この容量と帯域があってこそ成り立つものです[1]。
映像系も強化されており、H.264とHEVCの専用ハードウェア、4基のProResエンコード/デコードエンジン、ハードウェアアクセラレーテッドAV1デコードを搭載します。Neural Engineは32コアです[1]。
Appleのシリコンエンジニアリンググループ担当バイスプレジデントであるスリ・サンタナムは、M6について新しいCPUコンプレックスとデュアル16コアNeural Engine、拡大したメモリ帯域幅の組み合わせを挙げ、M5 Ultraについてはデスクトップでできることの限界を押し広げるチップだと述べています[1]。
搭載機の価格と発売日
M6は新型Mac miniに、M5 Ultraは新型Mac Studioに搭載されます。日本では8月25日に予約受付が始まり、発売は9月22日です[2]。
Apple Storeでの最小構成の価格は次の通りです[2]。
| 製品 | 構成 | 価格(税込) |
|---|---|---|
| Mac mini | M6 | 14万9800円 |
| Mac mini | M5 Pro | 29万9800円 |
| Mac Studio | M5 Max | 41万9800円 |
| Mac Studio | M5 Ultra | 94万9800円 |
なお、Mac Studioの512GBメモリ構成のみ、出荷は10月下旬の予定とされています[2]。
開発者向けの受け皿も用意
Core AI、Core ML、Metal、Xcodeといった開発者向けのフレームワークとツールは、どちらのチップのハードウェアにも直接アクセスできます。CPU、GPU、Neural Engineをまたいだ最適化はフレームワーク側が自動で行うため、開発者はApple Foundation ModelやApp Intents経由でApple Intelligenceの機能を使ったり、自前のモデルを完全にデバイス上で動かしたりできます[1]。
Mac上で大規模モデルのファインチューニングまで完結させられる、というのがAppleの描く絵です。M5 Ultraの512GBという容量は、その主張を額面通りに受け取れるだけの余裕があります。ちなみにApple Intelligenceは現在Apple Beta Software Programでのテスト提供にとどまっており、対応デバイスでは今秋のmacOS 27から利用できる予定です[1]。
まとめ
Appleは8月25日、Apple初の2ナノメートルチップであるM6と、初のクアッドダイ構成となるM5 Ultraを発表しました。M6は12コアCPU・12コアGPUとデュアル16コアNeural Engineを備え、M5 Ultraは最大36コアCPU・最大80コアGPUに最大512GB・1.2TB/sのユニファイドメモリを組み合わせます。搭載機はMac miniとMac Studioで、日本では9月22日発売、価格はMac miniが14万9800円から、Mac Studioが41万9800円からです。デバイス上でLLMを動かすことを前提に設計を積み上げてきたことが、今回の数字からははっきり読み取れます。
出典: https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/2608/25/news100.html
