コシナが、フォクトレンダーブランドの中望遠レンズ「APO-LANTHAR 90mm F4 Close Focus VM」を2026年8月26日に発売しました。ライカMマウント互換のVMマウントを採用したマニュアルフォーカスレンズで、重量235g、マウント面からの全長54.8mmという小ささに、撮影倍率0.28倍の近接撮影能力を詰め込んでいます。希望小売価格は税込12万1,000円、カラーはシルバーとブラックの2種類です。

開放F4を選んだから小さくできた

このレンズを手に取ったときに最初に効いてくるのは、おそらく数字よりも寸法です。最大径53.0mm、全長54.8mm、重量235g。レンジファインダーカメラのボディに載せても前が重くならない範囲に収まっています。

小型化の理由ははっきりしていて、開放F値をF4に抑えたことと、フォーカス時にレンズ全体を前に繰り出すシンプルな構造を選んだことの2点です。F4という開放値は、レンジファインダー用の90mmレンズが伝統的に採ってきた設定でもあります。明るさで勝負するのではなく、そのぶんを寸法と光学性能に回した設計と言えます。

全長が短いことには、実用上のもうひとつの効き目があります。光学式のレンジファインダーで構図を決めるとき、鏡筒が長いレンズはファインダー内の撮影フレームに映り込み、画面の一部が隠れてしまいます。いわゆるケラレです。コシナはこの全長でケラレを解消したとしています。フィルター径はφ43mmで、フィルターを重ねても前方に伸びにくいサイズです。

8枚中6枚に異常部分分散ガラス

APO-LANTHARという名前は、フォクトレンダーのなかでも特に光学性能に振った製品に与えられてきた呼び名です。今回のレンズもアポクロマート設計、つまり赤・緑・青の3色の焦点位置をできるだけ一致させ、軸上色収差を限りなくゼロに近づける設計を採っています。

レンズ構成は7群8枚で、そのうち6枚に異常部分分散ガラスを使っています。8枚中6枚という比率は、この規模の中望遠レンズとしてはかなり思い切った配分です。コシナは解像力とコントラスト再現性の両面で妥協しなかったと説明しており、色にじみが出やすい高コントラストの被写体でどこまで粘るかが見どころになりそうです。

絞り羽根は10枚、最小絞りはF22。画角は27.5度で、35ミリ判フルサイズをカバーするイメージサークルを確保しています。

距離計連動の外側、0.5mまで寄れる

製品名にあるClose Focusが指しているのは、最短撮影距離0.5mという数字です。レンジファインダーの距離計が連動するのは0.7mまでで、そこから先はライブビューを備えたカメラでのピント合わせが前提になります。0.5mまで寄ると撮影倍率は0.28倍に達し、被写体の大きさをセンサー上で4分の1より大きく写せる、いわゆるクオーターマクロを超える領域に入ります。

近接撮影で画質が崩れないことも、アポクロマート設計と合わせて設計目標に入っています。寄れるけれど寄ると甘くなる、という中望遠レンズの定番の悩みを避けにいった格好です。

距離計が連動する範囲と、その外側の近接域との境目には、ピントリングを回したときにクリック感で分かる機構が入りました。ファインダーを覗いたまま、今どちらの領域にいるのかを指先で把握できます。距離計とライブビューを行き来しながら撮る人にとっては、地味ですが効く仕掛けです。

操作系と付属フード

鏡筒は総金属製で、ヘリコイドユニットは高精度に加工・調整されたうえ、適度なトルクを生む高品質グリースと組み合わせられています。マニュアルフォーカス専用レンズにとって、この回し心地は画質と同じくらい体験を左右する部分です。

専用の金属製フードが付属します。突出量は約9mmと短く、フレアを抑えつつ撮影フレームへの干渉を避ける寸法に設計されています。フード込みでも長くならないという点は、全長54.8mmという本体寸法と一貫しています。

どんな人に向くか

ライカMマウント互換のVMマウントですから、対応するのはMマウントのレンジファインダー機と、マウントアダプターを介したミラーレス機です。オートフォーカスはありません。そのうえで0.5mまで寄れて235gという組み合わせは、スナップの延長で寄りのカットも撮りたい人や、ミラーレス機に付けて軽い中望遠として持ち歩きたい人と相性が良さそうです。

一方で、開放F4は暗所や大きなボケを狙う用途では物足りない場面もあります。ここは設計の狙いがはっきりしている以上、割り切って選ぶところになります。

まとめ

APO-LANTHAR 90mm F4 Close Focus VMは、開放F値をF4に抑えることで235g・全長54.8mmを実現し、そのうえで8枚中6枚に異常部分分散ガラスを投入したアポクロマート設計の中望遠レンズです。最短撮影距離は0.5m、撮影倍率は0.28倍で、距離計連動域との境目にはクリック感を設けています。2026年8月26日発売、希望小売価格は税込12万1,000円、シルバーとブラックの2色展開です。