中国のx86互換CPUメーカーであるZhaoxin(兆芯)が、教育分野での導入実績を公表しました。同社の自社命令セット「ZX86」を採用した端末・サーバー・大型ディスプレイの累計出荷は100万台を超え、海南省の小中学校向け整備事業では34,000台超の案件を100パーセント落札したとしています[1]。国産化を進める中国の学校市場で、自社CPUがどこまで実装段階に入ったかを示す数字です。

上海の学術会議でZX86の導入実績を紹介

Zhaoxinがこの内容を明らかにしたのは、上海大学交流展示センターで開かれた第3回上海市教育業界情報技術応用イノベーション・IPv6応用学術会議の場です。同社はZX86演算チップの技術と教育分野での導入事例をテーマに講演し、ZX86アーキテクチャのサーバーや教育端末を展示しました[1]。

同社は上海に拠点を置き、汎用CPUの設計と業界導入を手がけています。プロセッサとシステムプラットフォームチップの中核技術を自社で握り、ZX86命令セットの知的財産体系を整備したうえで、「自主不封閉、兼容不依附」(自主だが閉じない、互換だが依存しない)という方針を掲げています[1]。x86互換を維持しながら独自に反復開発できる形を取る、という立て付けです。

サーバーはKH-50000、端末はKX-7000で分担

ZX86の製品群は、PC・組み込み向けの開先(KaiXian)シリーズと、サーバー向けの開胜(KaiSheng)シリーズの2本立てです。学校での役割分担も明快で、新世代のサーバー向けプロセッサ「KH-50000」がキャンパスクラウド、AI実習環境、大容量データ保管を受け持ち、PC・組み込み向けの「KX-7000」などがマルチメディア授業、AI教室、日常の授業や教職員の事務作業を担います[1]。

KH-50000は2025年9月に詳細仕様が公開された製品です。Chiplet(複数の小型ダイを1パッケージに統合する実装)を採用し、1つのパッケージに最大12個のCPUダイを載せて96コア版と72コア版を用意します。基本周波数は96コア版が2.2GHz、72コア版が2.6GHzで、最大動作周波数は3.0GHz、3次キャッシュは最大384MBです。メモリーは12チャネルのDDR5-5200 ECCに対応して最大3TB、外部接続は128レーンのPCIe 5.0(CXLと自社開発のZPI相互接続に対応)と16レーンのPCIe 4.0を備えます。1台のサーバーに最大4基を搭載でき、その場合は384コアの構成になります[2]。前世代のKH-40000が1ソケット最大32コアだったので、演算密度は大きく引き上げられた形です。

ソフトウェア側の足回りとして、Zhaoxinは麒麟軟件(Kylinsoft)、統信軟件(UnionTech)、中科方德(NFS China)といった中国国内の主要OSベンダーと適合検証を続けており、6,000社を超えるパートナーとの間で24万件以上の製品適合・性能最適化を完了したとしています[1]。CPUを出すだけでは学校に入らないため、この積み上げが導入の前提になります。

3つの標準モデル校プロジェクト

Zhaoxinは、他校が真似しやすい「型」を作る狙いで、3つの導入事例を挙げています[1]。

上海大学では、ZX86プロセッサ搭載機にNFS ChinaのOSとKingsoft Officeを組み合わせた、国産構成のみで固めた教育実習ラボを構築しました。通常授業のほか、学科コンテストや専門実習にも使われており、すでに常時稼働しています。

北京市第二十中学校では、Lenovoの国産化ブランドである開天(KaiTian)と組み、小中学校向けとしては中国初となる全構成国産のAI実習教室を整備しました。ZX86の演算基盤、一体型のクラウドデスク、AI一般教養カリキュラムを組み合わせた形で、AIを使った創作や自律エージェント開発といった授業を展開しています。

上海科技大学では、ZX86プラットフォームのサーバーに銀河麒麟OSとZStackの国産クラウド基盤を載せ、キャンパス全体の仮想化基盤を構築しました。従来のVMware環境からの移行を段階的に進め、教育・研究・事務の中核業務を同じ基盤上で動かしています。VMwareのライセンス方針変更が世界的に移行の動機になっている状況を考えると、この事例は中国国外の運用担当者にとっても参考になる部分がありそうです。

累計100万台、海南省では全量落札

これらの積み重ねの結果として、Zhaoxinは自社CPUを載せた端末・サーバー・スマート大型ディスプレイの累計出荷が100万台を突破したと説明しています。授業や事務、スマート教室、校務管理、試験・実習、遠隔教育といった用途に広がっているとのことです[1]。

なかでも目を引くのが海南省の案件です。同省の小中学校スマート教育基盤整備プロジェクトで、34,000台を超えるZX86搭載機とスマートディスプレイが100パーセント落札されたとしています。情報技術教室、生徒用PCルーム、教員の授業準備端末、対話型の大型ディスプレイまでを一括して置き換える規模です[1]。1つの省の基礎教育インフラを丸ごと自社CPUで賄う案件が成立している点は、部分導入の段階を越えつつあることを示しています。

会議の会場には、パートナー各社の実機も並びました。KH-50000を2基搭載するストレージサーバー「AS13000G7-460」、KX-7000などを採用したLenovo開天のデスクトップパソコン「M75Z」とノートパソコン「N8 Pro」「X5z」、そしてKX-7000を載せた希沃(Seewo)の教育端末「華騰 D50sz G1e」といった構成です[1]。

まとめ

ZhaoxinはZX86命令セットを軸に、サーバー向けのKH-50000とPC向けのKX-7000で学校のインフラから教室の端末までを一通り揃えました。累計100万台の出荷と海南省での34,000台一括採用は、中国の教育市場における国産CPUの置き換えが実装段階に入ったことを示す数字です。ただし今回の情報はいずれも同社自身の発表に基づくもので、第三者による性能検証や運用面の評価は別途確認する必要があります。

出典[1]: https://www.zhaoxin.com/news_view.aspx?nid=2&typeid=289&id=2060

出典[2]: https://www.zhaoxin.com/news_view.aspx?nid=2&typeid=283&id=1898