Metaは自社設計のAI推論チップ「Arke」(社内型番MTIA 450)の実機テストを開始したことを明らかにしました。2027年前半にデータセンターへの投入を目指しており、同じく推論に軸足を置く次世代チップ「Astrid」(MTIA 500)も設計完了が間近だといいます。NVIDIA製GPUへの依存を下げつつ、増え続けるAIインフラのコストを抑える狙いがあります。
推論に軸足を置く「Arke」と「Astrid」
MetaのカスタムAIチップは、これまでMTIA 300などを投入してきた「MTIAファミリー」の延長にあたります。今回明らかになったArke(MTIA 450)は第3世代の推論向けチップで、Facebook・Instagram・WhatsAppなど自社サービスの推論処理(学習済みモデルを使って予測や生成を行う処理)に特化し、消費電力あたりの性能を高める設計です。リアルタイム性が強く求められる用途での競合は想定せず、あくまで大量の推論処理をいかに安く回すかに軸足を置いています。
一方のAstrid(MTIA 500)は第4世代にあたるチップで、設計完了まで残り1カ月ほどとされ、2027年末までの投入とより広い展開が見込まれています。MTIAシリーズは設計上は学習を含む幅広い処理をこなせるとされますが、Metaは当面、ArkeとAstridのいずれも生成AIの推論処理を主用途として使う方針を示しています。
9月1日納品の試作機、シミュレーションとの誤差2〜3%
Arkeの試作チップ12基は2026年9月1日に納品され、初期テストの結果はMetaが事前に行っていたシミュレーションとの誤差がわずか2〜3%にとどまったといいます。テストにはMeta自社のモデルに加えて、DeepSeekやAlibabaが開発したモデルも用いられ、初日から問題なく動作したとのことです。他社製モデルでの動作確認まで含めて公表している点は、汎用的な推論基盤として仕上げたいというMetaの意図がうかがえます。
製造はTSMCが担当し、チップ設計にはBroadcomが協力しています。BroadcomとMetaの設計協業は2029年まで続く見通しで、複数世代にわたる長期的な取り組みとして位置付けられています。
学習と推論の両対応チップ「Olympus」は開発中止
今回の発表であわせて明らかになったのが、学習と推論の両方をこなす汎用チップ「Olympus」の開発中止です。Metaの試算では、両機能を1つのチップに詰め込むと製造コストが約3割上昇することが判明し、ギガワット規模でチップを展開する段階ではこのコスト差が無視できないと判断したとみられます。
カスタムシリコン事業を統括するエンジニアリング担当バイスプレジデントのYee Jiun Song氏は、今回の判断について「ギガワット規模の設備を積み上げていく段階になると、コストへのこだわりは一段と強くなる」との趣旨を述べています。推論用途に絞って設計を最適化したArkeとAstridの2本立て体制は、この考え方を反映した結果といえます。
12カ月で1ギガワット超、NVIDIA依存の低減へ
Metaは今後12カ月間で1ギガワットを超える計算能力をカスタムチップで導入する方針を掲げており、その後はさらに加速させる考えを示しています。目的は学習用途で高価なNVIDIA製GPUを使い続けつつ、推論用途は自社チップへ切り替えることで、AIインフラ全体のコストを抑えることにあります。生成AIサービスの利用拡大でデータセンターの電力需要と設備投資が膨らむ中、自社設計チップによるコスト最適化は、Metaに限らず主要なAI企業に共通する課題になりつつあります。
まとめ
Metaは推論向けの新型AIチップ「Arke」(MTIA 450)の実機テストを開始し、2027年前半のデータセンター投入を目指しています。同じく推論を主用途とする「Astrid」(MTIA 500)も設計完了が近く、2027年末までの投入が見込まれています。試作機はシミュレーションとの誤差2〜3%という高い精度を示した一方、学習と推論を1チップでまかなう「Olympus」はコスト増を理由に開発中止となりました。今後12カ月で1ギガワット超のカスタムチップ導入を掲げるMetaの動きは、NVIDIAへの依存低減とAIインフラコストの抑制を両立させる試みとして注目されます。
