KDDIは2026年9月15日、衛星とスマートフォンが直接つながるサービス「au Starlink Direct」を次の段階へ進めるため、SpaceXの次世代衛星「Starlink Mobile V2」のサービス提供契約を結んだと発表しました。契約自体は8月10日付で、同社によればアジアの通信事業者としては初の締結です。現在は圏外でのメッセージ送受信や一部アプリのデータ通信にとどまっている機能を、2027年内に日常利用に近い高速データ通信と音声通話(VoLTE)まで広げることを目指します。
1基あたりのスループットは約20倍、データ密度は約100倍
Starlink Mobile V2は、スマートフォンとの直接通信を担う衛星の第2世代にあたります。第1世代と比べてアンテナのサイズが大きくなり、衛星1基あたりのスループットは約20倍に向上するとされています。さらに通信ビームの本数を増やすことで、一定の範囲に届けられるデータ量、いわゆるデータ密度は約100倍に達する見込みです。
現行のau Starlink Directが文字中心の用途に絞られているのは、衛星1基が地上の端末とやり取りできる容量に限りがあるためです。容量が桁違いに増えれば、地上の基地局が届かない山間部や離島、海上でも、ウェブ閲覧や動画の再生、通話といった普段どおりの使い方に近づいていきます。KDDIは「空が見えれば、どこでもつながる」という体験を、この衛星の投入で一段と進化させる構えです。
au Starlink Directはこの1年半で用途を広げてきた
au Starlink Directは2025年4月に、日本全土をエリアとする衛星とスマートフォンの直接通信サービスとして始まりました。2026年に入ってからは、3月に海外ローミング接続を開始し、4月には圏外からのSOS発信を受け付ける専用センターの新設と、IoT機器との直接接続にも対応しています。7月には圏外エリアで衛星経由でドローンを制御する飛行実証にも成功しており、個人の安心・安全だけでなく、防災や獣害対策といった地域の課題に使う場面も増えてきました。
つまり今回の契約は、用途を横に広げてきたサービスに対して、通信の「太さ」そのものを底上げする位置づけです。メッセージが送れるだけの圏外対策から、通話もブラウジングもできる圏外対策へと、体験の質が変わることになります。
SpaceXとの関係は2021年から、AI領域にも提携を拡大
KDDIとSpaceXの協業は2021年の業務提携にさかのぼります。au基地局のバックホール回線(基地局と基幹網をつなぐ回線)にStarlinkを採用したほか、法人や自治体向けの「Starlink Business」を国内で初めて提供し、能登半島地震の際には避難所へStarlinkを無償で提供して通信復旧に取り組みました。今回のStarlink Mobile V2は、こうした積み重ねの延長線上にあります。
発表には両社トップのコメントも添えられています。SpaceXのGwynne Shotwell社長兼COOは、KDDIとともに日本の利用者へこれまで以上に強靭でシームレスな通信体験を届けられることを歓迎し、今回の取り組みを協業の新たな章の幕開けと位置づけました。KDDIの松田浩路社長は、テキサス州のStarbaseを訪れてShotwell氏と意見を交わしたことに触れ、Starlink Mobile V2に加えてxAIや宇宙データセンター構想が、KDDIの掲げる「AI前提社会を支える次世代インフラ構想」と共鳴すると述べています。両社は衛星通信にとどまらず、AI領域にも提携を広げる方針です。
ドコモは2028年度、KDDIは2027年内という時間差
なお、Starlink Mobile V2を使った次世代サービスについては、NTTドコモも2026年8月にStarlink Japanと契約に合意したと発表しており、こちらは2028年度中の提供開始を予定しています。音声通話、ブラウジングなどの高速通信、IoT機器との直接通信を計画している点は共通しています。
KDDIが掲げる2027年内という目標は、それより1年ほど早い時期です。もちろん実際のサービス開始は衛星の打ち上げ状況や端末の対応、周波数の調整などに左右されますし、料金や対応機種、通信速度の具体的な条件はKDDIからもまだ示されていません。それでも、圏外での通話と高速通信の実現時期が国内2社から具体的な年で示されたことで、衛星直接通信が「非常時の保険」から日常のインフラへ移る道筋が見えてきたといえます。筆者としては、登山や離島でのテザリングが当たり前になる日を楽しみに、2027年の続報を待ちたいところです。
まとめ
KDDIは2026年8月10日にSpaceXと次世代衛星「Starlink Mobile V2」のサービス提供契約を締結し、9月15日に発表しました。アジア初となる契約で、第1世代比で衛星1基あたり約20倍のスループットと約100倍のデータ密度を持つ衛星を使い、2027年内に圏外エリアでの高速データ通信と音声通話の提供を目指します。2021年から続くSpaceXとの協業はAI領域にも広がる予定で、2028年度の提供を予定するNTTドコモとの時間差にも注目が集まりそうです。
