Anthropicが、画像や動画、音声ファイルをドラッグするだけで「Claudeが作成・編集に関わったか」を確かめられる無料ツール「Claude Content Checker」を公開しました。判定はすべてブラウザの中で完結し、ファイルがAnthropicのサーバーへ送られることはありません。アカウント登録も不要です。仕組みは、Claudeが生成したファイルに埋め込まれるC2PA規格の「コンテンツクレデンシャル」を読み取るというもので、Anthropicは「分かること」と同じくらい「分からないこと」を丁寧に説明しています。

ドラッグするだけ、ファイルは手元に残る

ツールはclaude.comの「check-content」ページで提供されています。使い方は、調べたいファイルをページ上に落とすか、クリックして選ぶだけです。対応形式は画像がJPG、PNG、GIF、WEBP、TIFF、HEIC、AVIF、SVG、DNG、JXL、動画がMP4、MOV、AVI、音声がWAV、MP3、M4A、FLACで、1ファイルあたり100MBまで扱えます。

Anthropicが強調しているのは、処理がすべて利用者の端末上で行われる点です。チェッカーが読むのはファイルに埋め込まれた署名付きの記録だけで、ファイル本体は保存も転用もされないとしています。社外秘の資料や未公開の素材を確認したい場合でも、外部にアップロードする心配がない設計です。

読み取っているのはC2PAの「署名付きメモ」

判定の根拠になっているのは、C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)という業界標準のメタデータです。カメラメーカーや写真編集ソフトが「この画像はどの機器で撮られ、どのソフトでどう編集されたか」を記録するために使っている仕組みで、Claudeが対応形式のファイルを生成すると、暗号署名の付いた来歴情報が自動で付与されます。たとえばClaudeに作らせたグラフの画像をダウンロードすると、その画像には「Claudeが処理した」ことを示す記録が入っている、というわけです。

チェッカーはこの記録を探し、Claudeを指すものが見つかれば「Claudeが関与した痕跡あり」と表示します。あくまでメタデータの照合であり、画像の見た目や文章の内容を分析してAIらしさを推定する、いわゆるAI検出ツールとは原理が異なります。

「見つからない」は「使っていない」ではない

Anthropicは、このツールにできないことをはっきり書いています。

第一に、判定はあくまで「そのファイルがClaudeで処理されたか」を示すもので、中身の正しさや価値については何も語りません。ClaudeはファイルのAI生成だけでなく、変換や修正にも使われるため、記録があってもアイデアや元データの出どころが別のところにある可能性は残ります。

第二に、記録が見つからなくてもClaude製でないとは言い切れません。形式変換や再保存、スクリーンショットの撮り直しでメタデータが落ちれば、痕跡は消えてしまいます。また、来歴の付与に対応していないモデルや機能、プラットフォームで作られたファイルには、そもそも記録が入っていません。

第三に、記録には利用者を特定できる情報が含まれていません。「誰が」作ったかは分からず、分かるのは「Claudeが関与したか」だけです。

EU AI法対応の一環、文章の透かしとは別系統

今回のツールは、Anthropicが8月から段階的に進めているAI生成コンテンツの標示施策の一部です。同社はEU AI法第50条2項にもとづく透明性の行動規範に署名しており、2026年8月2日以降に投入されたClaudeモデルは、生成した文章に電子透かしを、生成したファイルには署名付きの来歴メタデータを付ける方針を示しています。現時点で対応しているモデルはFable 5.1とMythos 5.1で、それ以前のモデルにも順次広げるとしています。

標示はClaudeのAPI、Claudeアプリ、Claude Code、Claude Cowork、Claude Tagと、AWSやGoogle Cloud、Microsoft Foundry経由の利用まで含め、提供地域を問わず全世界で適用されます。

ただし、文章側の透かし検出はまだ非公開のプレビュー段階です。EU法上で検証が求められる規制当局や報道機関、ファクトチェック団体、研究者などに限って提供され、企業がコンプライアンス目的で使う場合も申請が必要です。誰でも使える公開ツールとして出てきたのは、ファイルのコンテンツクレデンシャルを読むこのチェッカーが最初になります。文章の透かしの仕組みについては、当サイトでも8月に取り上げています。

まとめ

Claude Content Checkerは、C2PAの来歴情報を手掛かりに「このファイルはClaudeが処理したか」をブラウザ内で確かめる無料ツールです。ファイルを外に出さず、登録も不要で、対応形式も画像から動画、音声まで広く押さえています。一方で、見つかるのはあくまで残っている記録だけで、メタデータが消えたファイルや対象外のモデルで作られたファイルは判定できません。「AI製かどうかを見抜く道具」ではなく「Claudeが付けた印が残っているかを確かめる道具」として使うのが正しい距離感です。