インドの地球観測企業Pixxelが、シリーズCで1億ドル(約156億円)を調達しました。シンガポール政府系のTemasekと、英国のSeraphim Space Investment Trustが共同で主導しています。累計調達額は1億9,500万ドル(約304億円)となり、インドの宇宙テック企業が1回のラウンドで集めた金額としては過去最大です。資金は軌道上のセンサーを増やす方向と、集めたデータを売り物にするソフト側の両方に向かいます。

※1ドル156円換算(2026年9月上旬時点)

共同主導はTemasekとSeraphim

今回のラウンドには、新規投資家として360 ONE AssetとIMM Investmentが加わり、既存株主のRadical Venturesとかねてから出資しているgrowX Venturesも参加しました。Pixxelは以前からGoogleの出資を受けている企業としても知られています。

共同主導のうちSeraphimについては、ラウンド全体の発表より1か月ほど早く金額が表に出ていました。ロンドン上場のSeraphim Space Investment Trustが8月4日の規制開示で、Pixxelへ2,500万ドル(約39億円)を追加出資すると明らかにしていたためです。今回の発表でTemasekが共同主導として並び、投資家の全体像がようやく見えた形になります。

土台になっているのは軌道上の6機

Pixxelの現在の商用基盤は、Fireflyと名付けたハイパースペクトル衛星のコンステレーションです。2025年1月14日にSpaceXのTransporter-12ミッションで最初の3機を、同年8月末にはカリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地からNAOSミッションで残る3機を打ち上げ、6機体制が揃いました。

ハイパースペクトルは、反射光を細かい波長の帯に分けて記録する観測手法です。ふつうのカメラが赤・緑・青の3色で世界を見るのに対し、Fireflyは450〜900ナノメートルの範囲を135以上のバンドに刻みます。色の違いではなく物質そのものの違いが読み取れるため、作物のストレスや水質の変化、鉱物の分布といった、見た目には現れない情報を拾えるのが特徴です。

機体の諸元は、1機あたり約50キログラム、高度550キロメートルの太陽同期軌道、地上分解能5メートル、観測幅40キロメートル。同じ地点を24時間ごとに撮り直せる設計になっています。50キログラム級の小型衛星でこの分解能とバンド数を両立させた点が、同社の主張する優位性です。

次に来るのは「Honeybee」と解析ソフト

調達した資金の使い道として挙がっているのは、大きく3つです。1つ目はHoneybeeと呼ぶ新しいコンステレーションと、高分解能の光学撮像衛星の投入。ハイパースペクトル一本だった観測手段を広げる狙いです。

2つ目がAuroraの開発継続で、こちらは衛星ではなくブラウザで動く地球観測プラットフォームにあたります。Pixxel自身の画像に加えて、オープンソースや第三者の観測データ、各種の指標やモデルを1つの画面に集め、範囲を指定して分析したり、同じ手順を繰り返し実行したり、APIで外部システムにつないだりできます。専用の解析ソフトを自分の端末に入れる必要がないという設計です。

3つ目が製造能力で、Gigapixxelと呼ぶ量産向けの拠点を通じて衛星の生産ペースを上げるとしています。センサーを作り、軌道に上げ、データを配り、解析まで自社で抱えるという構えで、画像を売る会社から一段広い位置に移ろうとしていることが読み取れます。

政府案件が事業の背骨になっている

Pixxelの売上の輪郭は公表されていませんが、公的機関との契約は個別に明らかになっています。米国側では、NASAの商用小型衛星データ取得プログラム(CSDA)の複数社受注枠に選ばれてハイパースペクトルデータを供給しているほか、国家偵察局(NRO)の商用システムプログラム室からも5年契約を受けています。

インド国内では、宇宙分野の民間開放を担うIN-SPACeの案件で、Dhruva Space、PierSight、SatSureとの企業連合を率いる立場になりました。この連合は、光学・マルチスペクトル・SAR・ハイパースペクトルを組み合わせた12機の衛星を、民間主導で設計・製造・保有・運用します。インドの国家的な地球観測網を民間が担う初めての枠組みで、5年をかけて配備する計画です。

数字が出ていない部分もある

一方で、今回の発表で示されていない情報も少なくありません。Honeybeeや光学衛星をいつ打ち上げるのかという時期は明かされておらず、売上高、顧客数、企業価値といった経営数値も出ていません。Auroraが実際にどれだけ使われているかも同様です。

衛星事業は、資金が入ってから軌道上の稼働に変わるまで年単位の時間がかかります。打ち上げの失敗や運用の遅れが直接そのまま業績に響く分野でもあり、1億ドルという金額が能力に変換されるかどうかは、これから数年の実行力次第ということになります。

まとめ

PixxelはシリーズCで1億ドルを調達し、インドの宇宙テック企業として単独ラウンド最大の記録を作りました。軌道上ではハイパースペクトル衛星6機が動いており、次はセンサーの種類を増やす段階に入ります。ハードとソフトを両方抱え込む構えは、地球観測を「画像の販売」から「意思決定に使える情報の提供」へ寄せようという流れそのものです。ただし打ち上げ時期も経営数値も伏せられたままで、評価が定まるのはもう少し先になりそうです。