OpenAIは9月14日、AIエグゼクティブアシスタントを手がけるスタートアップFyxerの導入事例を公式サイトで公開しました[1]。50万時間分の人力アシスタント業務データとOpenAIのモデルを組み合わせ、利用者ごとの文体で返信を下書きする仕組みが特徴です[1]。Fyxerは2025年にARR(年間経常収益)を100万ドル(約1億5,000万円)から3200万ドル(約49億円)へと32倍に伸ばしており、AIエージェント活用の実例として注目されます[1]。

メール対応を50近くの専門AIで分業

Fyxerは、受信トレイや会議、複数のアプリにまたがるやり取りを追跡し、依頼への返信案を自動作成するAIエグゼクティブアシスタントです[1]。同じメールを受け取っても、相手との関係性やこれまでのやり取り次第で適切な返信内容は大きく変わるため、AIにとっては「簡単そうで実は難しい」タスクだと、Fyxerの共同創業者アーチー・ホリングスワース氏は説明しています[1]。

同社はこの課題を、1つの巨大なモデルにすべてを任せるのではなく、30〜50個の専門特化した小規模モデルに分業させる形で解決しました[1]。新着メールが届くと、まず返信の要否を判定するモデルが動き、必要と判断されればさらに複数のモデルが意図の分析や、記憶すべき過去のやり取りの抽出を担当します[1]。「1つのモデルに良いメールを書かせようとするより、小さなモデルに分けたほうがはるかにうまくいく」とホリングスワース氏は述べています[1]。

50万時間分の人力アシスタント業務がAIの教材に

Fyxerの創業チームは、AI事業を始める前に人力のエグゼクティブアシスタント代行サービスを運営しており、当時は最大500万ドル(約7億7,000万円)の売上を上げていました[2]。そこで蓄積した50万時間超の実務データを学習の土台にしています[1][2]。OpenAIのファインチューニング基盤を使った教師あり学習やLoRA(低ランク適応)で複数のモデル派生版を作り分け、さらに利用者がAIの下書きを編集した差分を「直接選好最適化(DPO)」の学習データとして取り込むことで、実運用の中で精度を継続的に高めています[1]。新しいモデルはA/Bテストで統計的に有意な改善が確認できたものだけを本番投入する運用です[1]。

こうした仕組みの結果、Fyxerが生成した返信案のうち53%がそのまま採用されており、利用開始から90日が経過した時点でも90%の利用者が有料契約を継続していると公表されています[1]。

ARRは1年で32倍、著名投資家も出資するシリーズB

Fyxerは2025年の1年間でARRを100万ドル(約1億5,000万円)から3200万ドル(約49億円)へと伸ばしました[1]。シリーズB調達までの8カ月間だけでも100万ドル(約1億5,000万円)から1700万ドル(約26億円)まで増えており、成長ペースが加速していたことがうかがえます[2]。

2025年9月には、Madronaを主導投資家に、Lakestar CapitalやSalesforce創業者のマーク・ベニオフ氏なども参加する形で3000万ドル(約46億円)のシリーズB資金調達を実施しました[2][3]。調達資金は米国事業の拡大に充てられる計画です[3]。創業者は兄弟のリチャード・ホリングスワース氏とアーチー・ホリングスワース氏で、最高技術責任者(CTO)のマット・フレンチ氏とともにロンドンを拠点に事業を展開しています[2]。導入企業には不動産大手のナイト・フランクやeXpリアルティなどが名を連ねており、情報セキュリティ認証のISO 27001とSOC 2 Type IIも取得済みです[2]。

※1米ドル=154.1円換算(2026年9月時点)

まとめ

OpenAIが公開した今回の事例は、汎用の大規模モデルをそのまま使うのではなく、業務データを使った継続的なファインチューニングと小規模モデルの分業によって実用レベルの精度を引き出した点が特徴です[1]。Fyxerは2025年にARRを32倍に伸ばし、著名投資家を集めたシリーズB調達も実現しており、AIエージェント市場における実例の1つとして今後の展開が注目されます[1][2][3]。

出典:https://openai.com/index/fyxer

出典:https://techfundingnews.com/startup-in-spotlight-fyxer-ai-raises-30m-to-bring-ai-productivity-assistants-to-everyday-professionals/

出典:https://sifted.eu/articles/ai-exec-assistant-startup-fyxer-raises-30m-to-expand-to-the-us