Adobeは9月2日、Slackの中からAdobeの各種ツールを呼び出せる「Adobe for Slack」の提供を始めました。Firefly、Adobe Express、Photoshop、Premiere、Acrobat、InDesign、Illustrator、Stock、Lightroomなどから集めた70を超えるツールが対象で、利用者はSlack標準のAIアシスタント「Slackbot」に作りたいものを言葉で伝えるだけです。対象はSlackのBusiness+とEnterprise+プランで、デスクトップ・Web・モバイルのいずれからも同日から世界で使えます。

「ツールを開く」のではなく「Slackbotに頼む」

今回の仕組みで特徴的なのは、利用者がPhotoshopやAcrobatを直接操作しない点です。Slackのアプリ一覧からAdobeアプリを追加しておくと、以降はSlackbotとの会話の中で「この画像の背景を消して」「この資料をPDFにまとめて」といった依頼をするだけで、Slackbotが用途に合ったAdobeのツールを選んで処理を実行します。どのツールを使うかを人が決める必要はありません。

背景には、SlackbotがMCP(Model Context Protocol)のクライアントとして外部アプリと接続できるようになったことがあります。Adobe側はツール群をMCP対応のアプリとして用意し、SlackbotがそれをAIエージェントとして呼び分ける形です。SlackのChief Product OfficerであるJaime DeLanghe氏は、Adobeアプリを「SlackにおけるMCPアプリの好例」と位置づけています。

もう1つのポイントは、Slack内にすでにある情報をそのまま素材にできることです。Slackbotはチャンネルの会話、共有されたファイル、Canvasに書かれた企画書などを文脈として読み取れるため、「先週のスレッドで決まった方針で告知画像を作って」といった頼み方が成り立ちます。Adobeは、次の成果物に必要な文脈の多くはすでにSlackの中にある、という考え方でこの連携を説明しています。

具体的に何ができるのか

Adobeが挙げている使い方は、マーケティングやSNS運用、社内文書の作成といった日常業務に寄ったものです。

会話やCanvasの内容をSlackbotに要約させ、それをもとにPDFや画像、動画を作ってチームに共有する。Creative Cloudに保存済みの素材を、被写体や雰囲気といった条件で検索して呼び出し、そのままSlack上で編集を続ける。承認済みの画像や動画から、各SNSのサイズに合わせたバリエーションを一気に作る。数千種類のテンプレートから選んで文言や色を変え、SNS向けにアニメーション化したり印刷用PDFにしたりする。スプレッドシートを渡して、その内容をPDFや図版に変換する。社員の顔写真やイベント写真を一括で処理し、背景の削除、明るさや色味の調整、切り抜きやサイズ変更を行う、といった具合です。

作ったものはそのままチャンネルに投稿でき、ほかのメンバーが「もう少し明るく」「別パターンも」と続けて依頼できます。より細かい調整が必要になった段階で、Adobe ExpressやPhotoshop、Premiere、Acrobat、Fireflyといった本来のアプリに引き継ぐ流れが想定されています。

Adobeアカウントがなくても始められる

導入手順は簡単で、Slackbotとのダイレクトメッセージを開き、「Apps」ボタンから「Manage Apps」を選んでAdobeを追加するだけです。この時点でAdobeアカウントは必須ではなく、ゲストとして使い始められます。Adobeアカウントでサインインすると、使えるツールとスキルが増え、生成AI機能やCreative Cloud上のファイルへのアクセス、セッションをまたいだ作業の継続が有効になります。

利用できるのは前述のとおりSlackのBusiness+とEnterprise+の契約チームで、それ以外のプランは今回の案内には含まれていません。

ChatGPT、Claude、Copilotに続く「チャット側へ出向く」戦略

Adobeはここ数か月、自社ツールを外部のAIチャット環境に載せる動きを続けています。8月にはChatGPTの中でAdobeツールを使える連携を発表しており、Claude向けとCopilot向けの連携もすでに提供しています。Geminiへの対応も近く予定されているとしています。今回のSlack対応は、この「利用者が普段いる場所にAdobeが出向く」戦略の一環です。

Adobeでエージェント型AIを担当するシニアディレクターのDeepti Pradeep氏は、こうした外部連携の利用実態について、画像の一括編集やクリエイティブのサイズ違い作成のような、繰り返しの多い作業で使われていると説明しています。利用者の反応としては、時間の節約や、手順を細かく指示しなくても目的の結果にたどり着けること、そして作業中の場所を離れずにAdobeを使えることが評価されているそうです。

CanvaやFigmaも同様にChatGPTやClaudeへの機能提供を進めており、クリエイティブツール各社が「チャット画面の中の1機能」になろうとする競争は今後さらに激しくなりそうです。一方でAdobeは、画像・動画・文書という複数の領域にまたがるツールを1社でそろえている点を自社の強みとしています。

まとめ

Adobe for Slackは、Slackbotに言葉で頼むだけでPhotoshopやFirefly、Acrobatなど70超のAdobeツールが裏側で動く仕組みで、会話やCanvasの文脈をそのまま素材にできる点が特徴です。Business+とEnterprise+のチームなら同日から利用でき、Adobeアカウントがなくても試せます。ChatGPT、Claude、Copilotに続く外部連携で、Gemini対応も控えています。