ASUSのグローバルサイトに、超小型デスクトップ「ASUS Mini PC VM31」の製品ページが並びました。容積0.55リットル、重さ330グラムという手のひらサイズの筐体に、USBを7ポートと4画面出力を詰め込んだ業務向けの1台です。搭載するAMDプロセッサーは「Ryzen 10シリーズ」という新しい名前ですが、中身は2022年から使われているZen 2世代の設計になります。
0.55リットル・330グラムという寸法が主役
VM31の本体サイズは135×115×35.8mmで、重量は0.33kgです。0.55リットルという容積は、単行本を2冊ほど重ねた程度の体積に収まります。付属品にはVESAマウントが含まれており、ディスプレイの背面や壁面に固定して使えます。
この寸法が効いてくるのは、机の上に置き場所がない現場です。レジ台の裏、教室の教卓、受付カウンターの内側といった、タワー型はもちろんミニタワーですら置きづらい場所に押し込めます。ASUSが想定用途として挙げているのも、中小規模のオフィス、小規模・在宅オフィス、教育機関、そして小売やサービス業のデジタルサイネージやPOS端末です。派手さのない製品ですが、こうした設置環境では筐体の体積そのものが仕様の一部になります。
電源は19V・4.74Aの90W ACアダプターです。本体色はアイアングレーで、ロゴなしの構成も選べます。企業のロビーや店頭に置く機器では、メーカーロゴを出したくないという要望が出ることがあり、その受け皿になる選択肢です。
「Ryzen 10シリーズ」の正体はMendocino
CPUは3種類から選べます。上からAMD Ryzen 5 40、AMD Ryzen 3 30、AMD Athlon Silver 10で、いずれも構成可能TDPは15Wです。グラフィックスは統合されたAMD Radeon 610Mを使います。
注意したいのは、この3つが名前だけ新しい製品だという点です。Ryzen 3 30は2022年に登場したRyzen 3 7320Uの、Ryzen 5 40はRyzen 5 7520Uの、Athlon Silver 10はAthlon Silver 7120Uの、それぞれ改称版にあたります。土台となっているのは6nmプロセスの「Mendocino」で、CPUコアはZen 2です。Zen 2は2019年のRyzen 3000シリーズで使われた世代ですので、2026年の新製品としてはかなり古い設計を引きずっていることになります。
Ryzen 3 30は4コア8スレッドで最大4.1GHz、L3キャッシュは4MBという構成です。ブラウザーと表計算ソフト、業務用のWebアプリを同時に開く程度なら問題なくこなせますが、動画編集や重い開発作業を任せる性能ではありません。ASUS自身も、日常的な事務作業と組み込み用途に向くという書き方をしています。
型番の数字が新しくなっても中身が据え置きという例は、ノートPC向けのAPUでは珍しくなくなりました。購入側にできるのは、モデル名ではなく世代とアーキテクチャを確認することくらいです。特に導入台数が多い法人調達では、数年後の更新時期を見積もる材料として、実質的な設計年次を把握しておく価値があります。
メモリとストレージは最小限、拡張の余地は小さい
メモリは最大16GBのLPDDR5-5500です。基板に直付けされる仕様のため、後から増設するという発想は取れません。用途に対して16GBで足りるかどうかを、購入前に決め切っておく必要があります。
ストレージはM.2 2280サイズのNVMe SSDが1枚で、接続はPCIe 3.0 x4です。完成品モデルには128GB、256GB、512GBのいずれかが搭載され、対応容量も128GBから512GBまでとされています。OSなしのベアボーン版も用意されており、こちらはWindows 11 Homeに対応します。完成品側はWindows 11 ProとWindows 11 Homeが選べます。
PCIe 4.0や5.0が当たり前になった時期にPCIe 3.0という点は物足りなく映りますが、Mendocino自体がPCIe 3.0までの対応です。CPU側の制約がそのままストレージ側に出ている形で、ここだけを引き上げることはできません。
USB 7ポートと4画面出力、有線は2.5G
小さい筐体のわりに、インターフェースは充実しています。前面にはUSB 3.2 Gen2 Type-Cが1基(DisplayPort 1.4出力対応)、USB 3.2 Gen2 Type-Aが2基、オーディオジャックが1基、そして側面にKensingtonロックスロットがあります。
背面はUSB 3.2 Gen2 Type-Aが2基、USB 3.2 Gen2 Type-Cが1基(同じくDisplayPort 1.4対応)、USB 2.0が1基、DisplayPort 1.4が1基、HDMI 2.0が1基(最大4K・60Hz)、2.5G対応のRJ45 LANポート、そしてDC入力という構成です。USBは前面3基と背面4基の合計7基あり、周辺機器を数多くつなぐ受付端末やPOS端末でも足りなくなりにくい配分です。
映像出力は、背面のDisplayPortとHDMI、そして前後のType-C 2基を合わせて最大4画面に対応します。サイネージや監視用途で複数のモニターに別々の内容を出したい場合、この4画面という数字が導入の可否を分けます。ネットワークは2.5G LANに加えて、無線がWi-Fi 6EとBluetooth 5.2です。6GHz帯を使えるWi-Fi 6Eは、無線が混み合うオフィスや店舗で効いてきます。オーディオコーデックはRealtek ALC 233です。
型落ちの中身でも成立する理由
VM31を性能で評価すると、2026年の製品としては見どころが少ない構成です。それでもこのクラスの機器が作られ続けるのは、業務端末に求められるものが処理能力とは別の軸にあるからでしょう。決まったアプリケーションが安定して動き、故障が少なく、置き場所を選ばず、そして安く数を揃えられる。この4点を満たすなら、CPUがZen 2かZen 5かは現場ではほとんど問題になりません。
むしろ枯れた設計であることは、法人調達では利点として働く場面もあります。ドライバーの成熟度が高く、消費電力が15Wクラスに収まるため冷却も静音も無理をしません。ASUSは1年間の国際保証を50カ国以上でうたっており、拠点が分散した企業にとっては保守の見通しが立てやすい構成です。
なお、この製品自体は2026年に入ってからドイツやオーストリアなどのドイツ語圏で先行して流通しており、今回グローバルの英語サイトに掲載されたことで、対象地域が世界へ広がる段階に入りました。日本国内での取り扱いや価格については、現時点で公式な案内は出ていません。
まとめ
ASUS Mini PC VM31は、0.55リットル・330グラムの筐体にUSB 7ポートと4画面出力、2.5G LANとWi-Fi 6Eを収めた業務向けの超小型デスクトップです。CPUはRyzen 5 40、Ryzen 3 30、Athlon Silver 10の3択で、いずれも実体は2022年のMendocino世代にあたります。メモリは最大16GBのLPDDR5-5500、ストレージは128GBから512GBのPCIe 3.0 SSDと控えめですが、サイネージやPOS、教育現場のように置き場所と拡張性が優先される用途では、この割り切りがそのまま強みになります。
