Salesforceは自社イベント「Dreamforce 2026」で、CRMのデータや業務ロジックをClaudeやSlackなど社外のAIツール側から直接呼び出せる新しいインターフェース層「AIforce」を発表しました。ユーザーがSalesforceの画面を開かなくても、普段使っているAIエージェント側からCRMの情報や権限をそのまま利用できるようにする狙いです。

AIforceとは何か

これまでAIエージェントを業務システムに接続する際は、Model Context Protocol(MCP)などの仕組みを使ってデータソースに個別につなぎ込む必要がありました。AIforceはこの発想を逆転させ、Salesforce側があらかじめ用意した業務ロジックや権限設定、セキュリティルールを、ClaudeやSlack、Amazon Quickといった外部のAI環境に届ける形を取ります。利用者ごとに設定されている既存のSalesforceの共有ルールや権限セットがそのまま引き継がれるため、新たな権限モデルを組み直す必要がない点が特徴です。

柱となる3つの新機能

今回の発表の中心となるのが、Claudeforce、Slackforce、Agentforce Coworkerの3つです。

Claudeforceは、AnthropicのClaudeとの連携を深めるもので、MCPサーバー経由でSalesforceの営業データをClaudeに橋渡しします。商談の掘り起こしからパイプライン管理まで対応する37種類の営業向けスキルに加え、開発者向けにはClaude Codeのプラグインとして40種類以上のスキルが用意されており、Deloitte、GitLab、Legoraなどが先行して試験導入しています。現時点はパブリックベータの段階です。

Slackforceは、Slack上でアカウント情報や案件の進捗、対応履歴などをその場で表示できる「Slackforce Surfaces」と、チャットの指示だけでSalesforceのレコードを作成・更新できる「Slack CRM」を柱としています。ダッシュボードや資料の作成をデザインの知識なしにテキストで指示できる点も特徴です。

Agentforce Coworkerは、Salesforceの標準画面「Lightning」に組み込まれるAIチームメイトで、アカウント情報や活動履歴を踏まえて提案を行い、必要に応じて専門特化した既存のAgentforceエージェントに作業を引き継がせます。有効化は1ステップで済み、新たな権限設定は不要とされています。試験公開から35日間で利用者数が10万人を超えたといい、金融機関のFulton Bankでは20種類以上の業務にすでに導入され、約3,000人規模で利用が進んでいるとのことです。

セキュリティは既存の権限をそのまま継承

Salesforceはいずれの機能についても、データを外部のAIモデルの学習に利用しない「Zero Data Retention」を徹底するとしています。Claudeforceでは、これに不正利用の監視を組み合わせた「Enterprise Frontier Safeguards」という仕組みも導入されました。Agentforce Coworkerについても、Salesforceの信頼境界の外にデータが出ない設計とされており、既存の業務ルールや権限設定をそのまま踏襲する形で動作します。

AWSやAIモデル各社との連携も拡大

AIforceと同時に、AmazonのAWSとの連携拡大も明らかになりました。AmazonのAIアシスタント「Amazon Quick」は、MCP経由でSalesforceの案件データや顧客情報を、追加の個別開発なしに参照できるようになります。SlackにはAWSのDevOps、セキュリティ、コスト管理(FinOps)向けのエージェントも組み込まれる予定です。さらにAgentforceの利用者は、Amazon Bedrock経由でAnthropicやNVIDIAの各モデルにZero Data Retentionを適用したままアクセスできるようになり、OpenAIのモデルについても近いうち対応するとしています。

会場では、NVIDIAの半導体技術を土台にした独自の推論モデル「Koa」も紹介されました。NVIDIAの「Nemotron 3 Super」をベースに、14以上の業種のCRM業務を想定した合成データで学習したモデルで、社内ベンチマークでは競合モデルよりエラー率が3分の1に抑えられたとしています。1-800Accountantや信用組合のBaxter Credit Union、Formula 1などが試験導入しており、米国内での一般提供は2026年冬を予定しています。

Salesforceの会長兼CEOであるマーク・ベニオフ氏は、「AIはインターフェースの革命を起こしつつある」と述べ、Zero Data Retentionを前提とした形で企業の基幹システムと連携する設計であることを強調しました。NVIDIAのCEOであるジェンスン・フアン氏も、各企業が自社の知識や業務内容に合わせたAIを必要としているとコメントを寄せています。

まとめ

Salesforceは、CRMのデータや業務ロジックをSalesforce外のAIツールに届ける新基盤「AIforce」を発表し、Claude向けの「Claudeforce」、Slack向けの「Slackforce」、社内向けAIチームメイト「Agentforce Coworker」を柱に据えました。既存の権限やセキュリティ設定を引き継ぎながら、AmazonやNVIDIA、Anthropicなど他社のAI基盤とも連携範囲を広げており、業務システムとAIエージェントの境界がさらに薄くなっていく流れがうかがえます。