Samsungは2026年9月18日、Galaxy Budsに搭載する補聴器機能が米国食品医薬品局(FDA)から店頭販売用医療機器(OTC)として認可されたと発表しました。対応するのはGalaxy Buds3 ProとGalaxy Buds4 Proの2機種で、軽度から中等度の難聴が気になる18歳以上のユーザーが、医療機関を受診せずに聴力検査と音の増幅機能を利用できるようになります。米国では2026年第4四半期からの提供を予定しています。

Galaxy Budsだけで完結する聴覚ケア

今回FDAの認可を受けたのは、Galaxy Budsの設定画面から利用できる聴力検査機能と補聴器機能の2つです。聴力検査は約5分のセルフ形式で、臨床レベルの純音聴力検査を用いたソフトウェアが左右の耳を個別に測定します。測定結果は言語聴覚士による評価に匹敵する精度のオージオグラム(聴力図)として示され、聴力の状態を正常、軽度、中等度、高度、重度の5段階に分類します。このうち聴力検査機能はSoftware as a Medical Device(SaMD、医療機器プログラム)として登録されており、医療グレードの検査結果を提供するとしています。

検査結果をもとに、補聴器機能は高周波音や周囲のささやき声、遠くの声など聞き取りにくい音を、一人ひとりの聴力プロファイルに合わせて増幅します。正面から聞こえる音に焦点を当てながら背景雑音を抑えるノイズ除去やビームフォーミングにも対応し、処方補聴器のフィッティングに世界的に用いられる標準方式「NAL-NL2」を採用しています。騒音ばく露レベルや聴力検査結果はSamsung Healthアプリからも確認でき、別途専用アプリをインストールする必要はありません。

2020年からの積み重ねと3大学での臨床検証

Samsungは2020年、Galaxy Buds+に個人用音響増幅製品(PSAP)機能を搭載したのを皮切りに、聴覚サポート技術の開発を進めてきました。このPSAP機能は2021年、難聴のある人の日常的なコミュニケーションを支援する手段として臨床的に検証されており、今回の補聴器機能はその土台の上に構築されています。

新機能の開発にあたっては、National Acoustic Laboratories(NAL)とSamsung Medical Center(SMC)が連携し、Vanderbilt University Medical Center、San Jose State University、University of Memphisで臨床検証研究が実施されました。Samsungのモバイル事業部(MX)でデジタルヘルスチームを率いるHon Pak氏は、聴覚の健康は心身の健康全体を支える重要な要素であり、コミュニケーションや周囲とのつながりに大きく影響すると述べ、今回の認可によって聴覚サポートへのアクセスをさらに広げたいとの考えを示しています。

Appleに続く形での参入、市場拡大の背景

米国では2022年、FDAが店頭販売(OTC)補聴器を新たな製品カテゴリーとして定める規則を施行しました。この枠組みのもと、Appleは2024年9月、AirPods Pro 2向けの補聴器機能で先行してFDAの認可を取得し、2025年2月には英国、同年3月にはオーストラリアへと対応地域を広げています。現行のAirPods Pro 3では聴力検査・補聴器・耳の保護の3機能が搭載されており、Samsungは今回、この分野でAppleを追う立場での参入となります。

世界保健機関(WHO)の推計によると、世界では15億人以上が何らかの難聴を抱えており、2050年には25億人に達すると見込まれています。一方で、高額な費用や社会的な偏見、専門的なケアへのアクセスの難しさから、補聴器の恩恵を受けられる人の多くが実際には利用していないのが現状です。イヤホンという身近な製品に検査と補聴の機能を統合する動きは、こうした課題への対応策の1つとして位置づけられます。

まとめ

SamsungはGalaxy Buds3 ProとGalaxy Buds4 Proの補聴器機能について、米国FDAから店頭販売用医療機器としての認可を取得したと発表しました。約5分のセルフ聴力検査と、個人の聴力プロファイルに合わせた音の増幅・ノイズ除去機能が特徴で、Samsung Healthアプリとも連携します。米国では2026年第4四半期から、必要な認可を得た国・地域へ順次提供される予定です。先行するAppleに続く形での参入となりますが、世界的に広がる難聴人口を踏まえると、身近なイヤホンで手軽に聴覚ケアができる選択肢が増えること自体に意義があると言えそうです。