Xiaomiが8月24日、スマートフォン向けの自社設計SoC「XRING O3」を正式に発表しました。製造はTSMCの3nm世代N3Pプロセスで、トランジスタ数は240億、ダイ面積は133平方ミリメートルです。AnTuTuでは522万点を記録し、スマートフォン用チップとして初めてLPDDR6メモリに対応しました。自社チップ第1弾のXRING O1から約1年での世代交代となります。

10コアのうち6基を大型コアで固めた構成

XRING O3のCPUは10コア構成です。内訳はArmのC1-Ultraコアが2基で最大4.35GHz、C1-Premiumコアが4基で3.68GHz、C1-Proコアが4基で3.15GHzとなっています。Xiaomiは発表時の資料で、この構成を6基の大型コアと4基の小型コアという組み合わせとして説明しています。省電力コアを最小限に抑え、上位のコアを厚く積んだ設計です。

ダイ面積はXRING O1の109平方ミリメートルから133平方ミリメートルへ広がりました。面積が増えた理由の1つが16MBのSLCキャッシュで、コアの増強とキャッシュの拡大を同時に行った結果、前世代よりも大きなチップになっています。3nm世代にとどまりながら中身を作り替えた、という表現が近いでしょう。

初期のベンチマーク報告では、Geekbench 6.5でシングルコアが3,945、マルチコアが15,221という数値が伝えられています。ただしこれはXiaomiが公式に示した数字ではなく、負荷が続いたときの発熱と持続性能については独立した検証を待つ必要があります。オールビッグコアに近い構成は瞬間的なスコアが伸びやすい反面、長時間の負荷で本領が問われる作りでもあります。

GPUは16コア、レイトレーシングは182パーセント向上

グラフィックス側はG2-Ultra NXという16コアのGPUを載せています。Xiaomiの説明によれば、前世代と比べてグラフィックス性能が85パーセント向上し、レイトレーシング性能は182パーセント向上、消費電力は64パーセント削減されました。数字の伸び幅としては、CPUよりもGPUのほうが大きく変わった世代と言えます。

このGPUには専用のニューラルコアがダイ上に組み込まれており、フレーム生成や空間方向のアップスケーリングをGPUのキャッシュ階層の内側で処理します。NPUやシステムメモリを経由せずに完結させる作りで、ゲーム中の描画補間のようにレイテンシが効く処理を近い場所で回す狙いです。NPU側の演算性能は200TOPSとされています。

カメラ処理も更新されました。第5世代のイメージングシステムは4億3,200万画素のセンサーと24bitの色深度に対応し、H.266のハードウェアデコードも備えます。折りたたみ端末やタブレットのように画面が大きい機器を想定した強化と読み取れます。

スマートフォン用チップとして初めてLPDDR6に対応

XRING O3で目を引くのがメモリ周りです。スマートフォン向けSoCとしては初めてLPDDR6をサポートし、転送速度は10,667Mbps、バス幅は24bitが4系統、メモリ帯域幅は113.8GB/sに達します。XRING O1からは48パーセントの増加です。

帯域が効くのは、GPUとNPUが同じメモリを取り合う場面です。生成AIの推論を端末側で動かすと、モデルの重みを読み出す速度がそのまま応答時間に効いてきます。高精細なゲーム描画と、端末内で走るAI処理が同時に走る前提で組むなら、演算器の数よりもメモリ帯域のほうが先に足かせになりやすい部分です。LPDDR6への一番乗りは、その意味で分かりやすい差別化になります。

搭載第1号は折りたたみ端末、車載とAI向けチップも同時公開

XRING O3の最初の搭載機は、9月に中国での発売が予定されている折りたたみスマートフォン「Xiaomi 18 Fold」と、タブレットの「Xiaomi Pad 9 Pro Max」です。海外の複数の報道では、初期の生産出荷は20万台から30万台の規模で始まると伝えられています。中国市場が中心だったXRING O1に対し、O3は展開範囲が広がるという見方も出ていますが、地域ごとの正式な発売計画はまだ公表されていません。

Xiaomiは同じタイミングで、スマートフォン以外に向けたチップも公開しています。1つは6nmのNPU「XRING O100」で、メモリの近くで演算するニアメモリ構成を採り、複数の機器にまたがるAI処理を想定しています。もう1つが3nmの車載向けチップ「XRING D100」で、同社の電気自動車に載せる自動運転システム用として設計され、商用展開は2027年が見込まれています。スマートフォン、AI、クルマの3方向に自社設計チップを広げる構図です。

まとめ

XRING O3は、2nmではなく3nmにとどまりながら、CPUのコア構成、GPU、メモリ規格をまとめて作り替えた世代です。AnTuTu 522万点という数字も目立ちますが、実際の使い勝手を左右するのはLPDDR6で得た113.8GB/sの帯域と、GPU内部に置かれたニューラルコアのほうかもしれません。9月のXiaomi 18 Foldで、発表会の数字が実機でどこまで再現されるかが最初の答え合わせになります。