Seeed Studioが、磁石で壁や冷蔵庫に貼り付けて使う3.97型のタッチ対応ePaper端末「reTerminal Sticky」を発売しました。ESP32-S3を積んだ小さな板ですが、ボタンを押して話しかけるとその場でメモに書き起こしてくれます。標準のアプリで家族の伝言板として使うほか、電子書籍リーダーやスマートホームの表示端末に丸ごと入れ替えることもできる、珍しい立ち位置の製品です。
手元の紙とスマホの間を埋める端末
冷蔵庫に貼る紙のメモは確実に目に入りますが、書き換えるたびに手間がかかります。スマートフォンの共有リストは更新こそ簡単でも、通知の山に埋もれて誰も見ません。reTerminal Stickyはその中間を狙った端末で、常時表示のE Inkに家族全員が見る前提の情報だけを出しておく、という割り切った作りになっています。
本体サイズは106×65.5×7.3mm、重さは70gです。背面には磁石が内蔵されており、冷蔵庫やスチール製の扉にはそのまま貼り付きます。金属以外の面にはアクセサリーのマグネットリングを使う形です。厚みが7.3mmしかないため、貼っておいても壁掛けのカードくらいの存在感で収まります。
画面は3.97型のモノクロePaperで、解像度は800×480、4階調のグレースケールに対応します。画素密度は235ppi前後で、E Ink端末としては文字が潰れにくい部類です。静電容量式のタッチに対応しているので、表示中のアプリを指で切り替えられます。
AIボタンを押して話すとメモになる
reTerminal Stickyが一般的なePaperディスプレイと違うのは、入力手段を持っている点です。本体にはPDMマイクが1基とAI Voiceボタンが用意されており、ボタンを押して声を出すと、その内容がテキストのメモや、やることリスト、リマインダーとして画面に書き込まれます。SoCであるESP32-S3R8のベクトル命令によるAI処理を使った機能で、Seeed Studioはこれを指して「AI搭載」と説明しています。
センサー類も一通り載っています。温湿度センサーと3軸加速度センサーを備えており、室温の表示や、端末の向きに合わせた縦横の切り替えに使えます。このほかブザー、ページ送り用の上下ボタン、内部リセットボタンを搭載します。
主なスペックは以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| SoC | Espressif ESP32-S3R8(デュアルコアTensilica LX7、最大240MHz) |
| メモリー | 8MB PSRAM |
| ストレージ | 32MBフラッシュ、microSDカードスロット |
| 無線 | 2.4GHz Wi-Fi 4、Bluetooth 5.0 LE |
| ディスプレイ | 3.97型モノクロePaper、800×480、4階調、静電容量式タッチ |
| 音声 | PDMマイク1基 |
| センサー | 温湿度センサー、3軸加速度センサー |
| 電源 | USB Type-C(5V/1A)、750mAhバッテリー |
| 待機時間 | 平均7日 |
| 外形寸法 | 106×65.5×7.3mm |
| 重さ | 70g |
待機時間は平均7日とされています。表示内容をほとんど書き換えない静止画のような用途であれば、省電力モードでさらに延びるとSeeed Studioは説明していますが、具体的な時間は同社も検証中としています。
標準ファームウェアは日本語未対応、代わりに丸ごと差し替えられる
出荷時のファームウェアは、Android版とiOS版が用意される専用アプリ「Seeedash」と組み合わせて使います。メモの送信が主な役割で、写真の表示や、動かしているAIエージェントの状況表示にも使えます。ただし対応言語は現時点で英語と簡体中文のみで、Seeed Studioは他言語への対応を進めているとしています。日本語で使いたい場合は、ここが当面の関門になります。
その代わり、この端末は中身の差し替えを前提に作られています。Seeed Studioが挙げているのは4つのオープンソースファームウェアです。
Crosspointを書き込めば電子書籍リーダーとして動きます。TRMNLは各種の情報を並べたダッシュボードを表示するプロジェクトで、時計や天気、カレンダーを1枚にまとめた掲示板になります。スマートホーム側に寄せたい場合はESPHomeかOpenDisplayを選ぶと、Home Assistantの表示・操作端末として組み込めます。加えて、コードを書かずにePaper向けの画面を作れる同社のSenseCraft HMI向けファームウェアも用意されています。
ESP32-S3に8MB PSRAM、32MBフラッシュ、microSDスロットという構成は、この手の自作向けボードとしては余裕のある部類です。ボタンとタッチ、マイク、センサーが最初から付いた筐体ごと手に入ると考えると、自分でケースを起こす手間が丸ごと省けます。標準アプリの完成度より、そちらに魅力を感じる人向けの製品と言えそうです。
価格は49.90ドル、出荷は9月中旬の見込み
価格は49.90ドル(約7,900円)です。先着500台には39.90ドル(約6,300円)の早期割引が設定されていましたが、こちらはすでに終了しています。出荷は9月中旬からとされており、今後はSeeed StudioのAliExpressストアでも取り扱う予定です。
※1米ドル=159円換算(2026年7月31日時点)
同じ3.97型のE Inkでも、読書に振り切った端末や、自作の家族用予定表とは向いている方向が違います。reTerminal Stickyは「置いた場所で情報を見せる板」を安く作るための土台で、標準の使い方に収まらなければ好きなファームウェアに入れ替えてしまえばいい、という設計思想が価格に見合っています。
まとめ
reTerminal Stickyは、3.97型モノクロePaperにESP32-S3とマイク、温湿度センサー、磁石を組み合わせた49.90ドルの端末です。声でメモを書き込める標準ファームウェアに加え、電子書籍やダッシュボード、Home Assistant連携といった4つのオープンソースファームウェアが選べます。標準アプリが英語と簡体中文のみという制約はありますが、貼れるE Ink画面が1万円を切る価格で手に入る点は魅力的です。出荷は9月中旬からの予定です。
