ハッカーや電子工作好きに人気の多機能ツール「Flipper Zero」を手がけるFlipper Devicesが、新製品の集中支援ガジェット「BUSY Bar」を発表しました。ドット状のLEDで「取り込み中」の状態を周囲に知らせ、ポモドーロタイマーやスマホアプリの遮断機能で作業への没頭を後押しする卓上デバイスです。価格は通常249ドル(約4万円)で、最初の3,000台は199ドル(約3万2,000円)に設定されています。出荷は7月14日に始まる予定です。
多機能ツールの次に選んだのは「集中」
Flipper Devicesは、Bluetooth・RFID・NFC・微弱電波などを1台で扱える携帯ツール「Flipper Zero」で知られる企業です。今回のBUSY Barは、そのハッカー的な路線とは方向性を変え、在宅勤務やデスクワークでの集中をテーマに据えた製品となります。構想自体は前年に公表されており、今回ようやく一般販売へと進みました。
見た目は、つまみやボタンが並んだ横長の卓上クロックのような形です。本体に表示や操作の要素を集約し、パソコンやスマートフォンと連携しなくても単体で使える点を重視しています。
ドット表示のLEDと物理ボタンで操作
正面には、72×16のRGB LEDマトリクス(細かなドットの集まりで文字や絵を表示するパネル)を備えます。1,600万色を表示でき、明るさは最大400ニトです。内蔵の光センサーで周囲の明るさに合わせて輝度を自動調整するため、明るい部屋でも暗い部屋でも見やすさを保ちます。
背面には160×80ドットのモノクロ有機ELを搭載し、正面の表示内容を映し出します。本体が自分とは反対側を向いていても、手元で状態を確認したり操作したりできる作りです。側面には通知音を鳴らすスピーカーも組み込まれています。
操作は物理的なパーツが中心です。開始・停止ボタン、4つの動作モードを切り替えるセレクター、時間設定やメニュー移動に使うスクロールホイール、戻るボタンが用意され、画面を見なくても扱えるよう大きめに設計されています。通信はWi-Fi 6とBluetooth Low Energy 5.4に対応し、充電とパソコン接続にはUSB Type-Cを使います。電池は3,250mAhで、稼働状態で最大8時間、待機なら最大2週間持つとされ、15Wの充電器を使えば約1時間で満充電になります。
ポモドーロと「集中の敵」を遮断する仕組み
BUSY Barの核となるのが、集中のための時間管理機能です。25分の作業と5分の休憩を繰り返す「ポモドーロ」と呼ばれる手法をベースにしたタイマーを備え、設定した時間だけ作業に向き合う使い方ができます。前面のLEDには「取り込み中」のメッセージや残り時間が表示され、いつ手が空くのかを周囲に伝えられるため、在宅勤務で家族や同居人がいる環境でも声をかけられにくくなります。
特徴的なのは、集中を妨げる通知やアプリを抑える機能です。無料のスマホアプリと連携すると、集中モード中はスマートフォンやパソコンの通知を自動でミュートし、あらかじめ選んだアプリを開けないようにできます。InstagramやTikTokのような時間を吸い取られやすいアプリを遮断する用途を想定しており、解除するまでアプリを完全にロックする「ハードコアモード」も用意されています。このモードでは集中時間が終わるまで解除できず、途中で外したい場合は端末を初期化するしかないという、かなり思い切った仕様です。
パソコンとの連携も細かく作り込まれています。マイクが有効になると自動で「通話中」の表示に切り替わり、OBSなどの配信ソフトを起動すると配信中の表示が点灯します。対応するのはWindowsとmacOSで、Linux版も準備が進められています。
スマートホーム連携と開発者向けの作り込み
BUSY Barは、スマートホームの共通規格「Matter」に対応します。Matterは、AppleやGoogle、Amazon、Samsungが中心となって策定した、メーカーをまたいで機器をつなぐための規格です。これにより、Apple HomeやGoogle Homeと連携し、自分が集中状態に入ったら音楽を止める、照明を変える、といった自動化のきっかけとして使えます。オープンソースのスマートホーム基盤「Home Assistant」とも、HTTP API経由で連携できます。
開発者向けの作り込みも、Flipper Zeroを生んだ会社らしい点です。ファームウェアはオープンソースで公開され、HTTP APIやMQTT、PythonやJavaScript、Go向けのライブラリが用意されています。これらを使えば、自作のウィジェットを表示させたり、社内システムの状態をLEDに映したりといった応用ができます。接続もUSBやLAN、クラウド経由に対応し、特定のサービスに縛られない設計をうたっています。表示できるアプリには時計や天気、YouTube・Instagram・TikTokの統計などがあり、第三者が作ったアプリにも対応します。
価格と発売時期
BUSY Barの価格は通常249ドル(約4万円)で、待機リスト経由で申し込んだ先着3,000人は199ドル(約3万2,000円)で購入できます。出荷と販売は7月14日に始まり、対象地域はアメリカ、欧州連合(EU)、イギリス、カナダとされています。同梱物は本体と2メートルのUSB-Cケーブルで、別売りで壁掛け用のマウントなどのアクセサリーも予定されています。
注意したいのは、現時点で案内されている発売地域に日本が含まれていない点です。購入には公式サイトの待機リストへの登録が必要で、日本での展開時期や価格は明らかになっていません。単機能の卓上ガジェットとしては安くはない価格でもあり、集中の妨げをどこまで物理的に断ち切りたいかで評価が分かれそうです。
※1ドル=162円換算(2026年6月30日時点)
まとめ
BUSY Barは、Flipper Zeroで知られるFlipper Devicesが、集中とデスクワークをテーマに送り出した卓上ガジェットです。ドット表示のLEDで「取り込み中」を周囲に伝え、ポモドーロタイマーやアプリ遮断で作業への没頭を支えます。Matter対応によるスマートホーム連携や、オープンなAPI・ライブラリによる開発者向けの拡張性も用意され、Flipper Zeroの自由な作り込みを受け継いでいます。一方で、価格は通常249ドルと手頃とは言いにくく、初期の発売地域に日本が含まれない点も含め、手に取れるのはもう少し先になりそうです。
