Metaは2026年9月下旬に開催した自社イベントで、スマートグラス向けの新機能「Hearing Enhancement」を発表しました。軽度から中程度の難聴がある人向けに、米食品医薬品局(FDA)の認可を受けた聴力補助ソフトウェアで、1回149ドルの支払いか「Meta One」への加入で利用できます。処方箋は不要で、自宅で数分の設定を済ませるだけで使い始められるのが特徴です。

会話を聞き取りやすくする既存機能とは別枠で用意

Metaのスマートグラスには、雑音の多い場所での会話を聞き取りやすくする「Conversation Focus」というモードがすでに搭載されています。今回のHearing Enhancementは、これとは別に用意された新機能です。Conversation Focusが特定の状況で音を強調する補助的な機能であるのに対し、Hearing Enhancementは軽度から中程度の難聴を抱え、普段なら補聴器を使うような人を対象にした、より本格的な聴力補助を目指しています。

使い方はシンプルです。専用アプリでグラスを装着したまま1〜2分程度の簡易な聴力検査を行うと、その結果をもとに個人ごとの音声増幅プロファイルが自動で作成されます。医療機関での処方や調整は不要で、音声コマンド「Hey Meta, start Hearing Enhancement」でいつでも起動・停止できます。

FDAが認可、価格は149ドルから

Hearing Enhancementは、米国の規制区分でクラス2に当たる医療機器ソフトウェアとしてFDAの認可(510(k))を取得しています。処方箋なしで購入できる、いわゆる市販(OTC)の補聴器ソフトウェアという位置づけです。

価格は1回限りの支払いで149ドル(約2万3,400円)。定額制の「Meta One」に加入していれば追加費用なしで利用できるほか、購入前に30日間の無料トライアルも用意されています。米国では医療費積立口座(HSA・FSA)からの支払いにも対応しており、実質的な負担を抑えられる仕組みが整えられています。

対応するのはMetaブランドのグラスのみ、当面は米国限定

注意したいのは対応機種です。Hearing Enhancementが使えるのは、価格249ドル(約3万9,100円)からの「Meta」ブランドのスマートグラスに限られ、レイバンとの共同開発モデルは提供開始時点では対象外とされています。展開時期は2026年内を予定していますが、地域はまず米国のみで、スマートフォン側のアプリもiOS向けが先行し、Android対応は後日追加される見通しです。

同時にMetaは、視覚に障害のある利用者からの意見を踏まえて画面や物体の説明機能「Detailed Responses」を改良したほか、音声・操作まわりのカスタマイズ項目も追加したと説明しています。単発の目玉機能ではなく、アクセシビリティ全般への投資の一環として位置づけている様子がうかがえます。

補聴器市場に投じる一石

米国では成人のおよそ6人に1人が何らかの難聴を抱えているとされ、市場の裾野は決して小さくありません。すでにAppleはAirPods Pro 2に無料の聴力補助機能を搭載しており、Hearing EnhancementのFDA申請でも比較対象として扱われています。また、EssilorLuxotticaが手がける「Nuance Audio」は699ドル(約10万9,700円)前後からの価格帯でOTC補聴器メガネを展開しており、こちらは事前に設定された増幅パターンから選ぶ方式を採る点でMetaのアプローチとは異なります。

スマートグラスという既存の製品カテゴリーに聴力補助という新しい価値を重ねることで、Metaは日常的にかけるメガネそのものを健康機器の入り口に変えようとしていると言えそうです。対応機種が限られる立ち上げ初期の段階を経て、どこまで対象を広げていくのかが今後の焦点になります。

まとめ

Metaは、スマートグラス向けにFDA認可の聴力補助機能「Hearing Enhancement」を発表しました。軽度から中程度の難聴を持つ利用者を対象に、149ドルの一回払いか「Meta One」加入で利用でき、自宅での簡易な聴力検査だけで個人向けの音声プロファイルを作成できる手軽さが特徴です。当面は249ドルからのMetaブランドのグラスに限定され、米国での提供が2026年内に始まる予定です。

※1ドル157円換算(2026年9月27日時点)