AMD は 2026 年 3 月 2 日、スペイン バルセロナで開催中の Mobile World Congress 2026 に合わせて、デスクトップ向けプロセッサー「Ryzen AI 400 シリーズ」と「Ryzen AI PRO 400 シリーズ」を発表しました。最大の注目点は、デスクトップ用 CPU としては世界初となる Microsoft の Copilot+ PC 対応です。Zen 5 コア、RDNA 3.5 内蔵グラフィックス、最大 50 TOPS の XDNA 2 NPU を 1 パッケージに収め、AM5 ソケットの既存マザーボードでそのまま使える点が、自作 PC ユーザーや OEM 各社の関心を集めています。

デスクトップ初の Copilot+ 対応、AM5 ソケットで使える内蔵 NPU

Copilot+ PC は、Microsoft が 40 TOPS 以上の NPU を搭載した PC に与える認証区分で、これまではノート PC 向けの Snapdragon X Elite や Intel Core Ultra (Lunar Lake)、AMD Ryzen AI 300 シリーズなどに限られていました。今回の Ryzen AI 400 シリーズはこの NPU 性能要件を満たし、デスクトップ機としては初めての Copilot+ 認定となります。NPU が常時オンデバイスで動作することで、画像生成や音声書き起こし、リアルタイム翻訳、ローカル LLM 推論などをクラウドに依存せず処理でき、機密データを社外に出さずに AI 機能を使える点が法人ユースで重視されています。

PRO 400 シリーズは AMD PRO テクノロジー(セキュリティ・管理機能)を上乗せしたビジネス向けで、Lenovo や HP などの OEM から 2026 年第 2 四半期以降、Ryzen AI 400 搭載デスクトップが順次出荷される予定です。 出典: AMD 公式プレスリリース (https://ir.amd.com/news-events/press-releases/detail/1281/amd-gives-consumers-and-businesses-more-ai-pc-options-with-expanded-ryzen-ai-400-series-portfolio) / Tom's Hardware (https://www.tomshardware.com/pc-components/cpus/amds-ryzen-ai-400-series-includes-the-first-copilot-desktop-cpu-team-red-refreshes-zen-5-apus-and-strix-halo)

デスクトップ向けの主要モデルとスペック

今回投入されたデスクトップ SKU は、いずれも Zen 5 コアと RDNA 3.5 iGPU、XDNA 2 NPU の組み合わせで、TDP 65 W の「G」モデルと 35 W の「GE」モデルが用意されています。発表時点で公開されている主なモデルは次の通りです。

Ryzen AI 7 PRO 450G / 450GE は 8 コア 16 スレッド、最大ブースト 5.1 GHz、内蔵 GPU は Radeon 860M。Ryzen AI 5 PRO 440G / 440GE は 6 コア 12 スレッドに Radeon 840M を備え、Ryzen AI 5 PRO 435G / 435GE はその下位モデルとして同じ 6 コア構成ながら動作クロックを抑えた省電力寄りの位置付けとなります。NPU はいずれのモデルも 50 TOPS で、Copilot+ の要件である 40 TOPS を上回ります。プラットフォーム面では PCIe 5.0 と DDR5 メモリに対応し、既存 AM5 マザーボードでも BIOS 更新で動作する見込みです。 出典: TechPowerUp (https://www.techpowerup.com/346918/amd-launches-ryzen-ai-400-series-processors-for-mobile-and-desktop) / Wccftech (https://wccftech.com/amd-ryzen-ai-400-desktop-apus-8-cpu-gpu-cores-50-tops-am5-socket-official/)

Intel Core Ultra との比較データ、AMD は強気

AMD は同時に、モバイル向けの上位モデルを Intel Core Ultra と比較したベンチマーク値を公開しています。Ryzen AI 9 HX PRO 470 は Intel Core Ultra X7 358 比でマルチスレッド性能が最大 30 パーセント高いとし、フラグシップの Ryzen AI 9 HX 470 を 28 W で動作させた場合と Intel Core Ultra 9 288V を 30 W で動作させた場合を比較すると、マルチタスキングで 1.3 倍、コンテンツ制作で 1.7 倍、ゲーミングで 1.1 倍の性能差があると主張しています。

NPU 性能でも、フラグシップの Ryzen AI 9 HX 475 は最大 60 TOPS を達成し、Intel の主流 Panther Lake が 50 TOPS 前後で頭打ちとなっている状況に対して 20 パーセントほど上回るとされています。デスクトップ SKU は 50 TOPS にとどまるものの、それでも Copilot+ の要件を満たしつつ、第三者の評価レポートでも整数量子化タスクで Intel Core Ultra 9 288V 比 15〜20 パーセント高いスコアが報告されています。 出典: Neowin (https://www.neowin.net/news/amd-touts-blazing-windows-11-performance-benchmarks-on-ryzen-ai-400-series-vs-intel/) / Notebookcheck (https://www.notebookcheck.net/AMD-launches-Ryzen-AI-400-desktop-processors-with-up-to-50-TOPS-NPU-and-Copilot-support.1239340.0.html)

注意点も整理しておきたい

期待値は高い一方で、押さえておきたい注意点もあります。まず、デスクトップ SKU は当面 OEM 専売で、自作 PC 市場へのリテール販売(箱売り)は計画されていません。HP や Lenovo の完成品 PC からの提供が中心となるため、自作派ユーザーが Ryzen AI 400 の恩恵を受けるにはもう少し待つ必要がありそうです。また、Notebookcheck は Ryzen AI 400(コードネーム Gorgon Point)を「現行世代からの伸びは比較的小さく、CPU 単体の純粋な世代間ジャンプは控えめ」と分析しており、純粋な CPU 性能を重視するユーザーには物足りなく映る可能性があります。

NPU 50 TOPS は確かに Copilot+ の入り口を満たしますが、ローカル LLM のような実用ワークロードでは VRAM 容量や iGPU の演算能力も併せて効いてくるため、実際のアプリ体験については実機ベンチが出揃うまで保留が無難です。 出典: Notebookcheck Performance Analysis (https://www.notebookcheck.net/AMD-Ryzen-AI-400-Performance-Analysis-Gorgon-Point-debuts-with-only-minor-improvements.1211982.0.html)

まとめ

Ryzen AI 400 シリーズは、デスクトップでも Copilot+ の世界が始まる、という象徴的な発表となりました。AM5 プラットフォームを活かして既存資産を温存できる点、NPU と iGPU を 1 ソケットに統合してミニ PC や省スペース機の選択肢を広げる点、そして Intel に対して NPU と総合性能で攻勢をかける点で、今年後半の AI PC 市場をかき回す存在になりそうです。OEM 限定スタートという制約はあるものの、まずは 2026 年第 2 四半期に登場する HP や Lenovo の搭載モデルが、どこまで実力を発揮するのかに注目したいところです。