NVIDIAとLGグループは、ロボティクスや自動運転、データセンター、GPUクラウドといったLGの次世代AI事業を加速するため、AIファクトリーを共同で構築すると発表しました[1]。NVIDIAのフルスタックなAIファクトリー基盤と、家電やロボット、車載部品で世界的な実績を持つLGの強みを組み合わせ、AIモデルの開発から物理AI向けのデータ生成、ロボットのシミュレーション、エッジ展開までを一つの流れとしてつなぎます[1]。

協業の中心にある「AIファクトリー」

今回の協業の核となるのが「AIファクトリー」です[1]。これは、AIを使うアプリケーションを学習・シミュレーション・検証・展開するための、高速なアクセラレーテッドコンピューティング基盤を指します[1]。NVIDIAは、AIモデルの開発、物理AI(フィジカルAI)向けのデータ生成、ロボットのシミュレーションと学習、エッジでの展開、そして工場規模のデジタルツイン(現実を仮想空間で再現する技術)までを、一続きのワークフローとして統合すると説明しています[1]。LGは家電、ロボット、モビリティ部品、スマート空間、データセンター技術といった幅広い事業を持ち込み、それぞれの現場にAIを行き渡らせる狙いです[1]。

フィジカルAIとロボティクスへ広がる連携

LG Electronicsは、室内の家事を幅広く手助けする家庭用ロボット「CLoiD」などを開発しています[1]。NVIDIAのロボット開発フレームワーク「Isaac Sim」「Isaac Lab」を取り入れ、物理的に正確な仮想環境で家庭向けの協働ロボット(コボット)を、展開前にシミュレーション・学習・検証できるようにします[1]。さらに、推論する視覚・言語・行動モデル「Isaac GR00T」の活用も検討しており、人間のような推論力と複雑な作業をこなす力をロボットに持たせることを目指します[1]。両社はリファレンスとなるロボットを共同開発し、LGのロボットをIsaac GR00Tのエコシステムに位置づける計画です[1]。

ロボット開発の壁となる学習データ不足にも取り組みます[1]。LG Electronicsは「物理AIデータファクトリー」を整備し、計算資源をデータに変えることで、ロボティクスや産業向けAIに使える高品質な学習データを供給します[1]。ここではNVIDIAの世界基盤モデル「Cosmos」を用い、合成データの生成や拡張を行います[1]。光学技術に強みを持つLG Innotekは、センシングを含むロボット部品をNVIDIAの開発環境やGPUアーキテクチャに最適化して提供する計画です[1]。LG CNSは、製造や物流の現場で誰もがAIロボットを導入できる仕組みづくりを進め、Isaacのフレームワークやオープンな世界モデル「Cosmos」、Isaac GR00Tを自社の産業用ロボット基盤「PhysicalWorks」に取り込みます[1]。

スマートファクトリーと次世代AIインフラ

製造現場のAI活用も柱の一つです[1]。LGが世界の生産拠点で培った製造技術データと、NVIDIAのAIインフラやデジタルツイン技術を組み合わせ、原材料の調達から生産、物流、顧客への配送までをデータとAIでリアルタイムにつなぐ自律的な製造エコシステムの構築を目指します[1]。両社はこれを、新しいグローバルなスマートファクトリーの標準にしたい考えです[1]。

AIファクトリーそのものの基盤づくりも進みます[1]。LG Electronicsは、AIファクトリーの排熱を管理する冷却分配ユニット(CDU)やコールドプレートでNVIDIAとの認証協力を進めてきましたが、今回はプレハブ式のモジュラー設計技術にも踏み込みます[1]。NVIDIAのAIファクトリー基盤「NVIDIA DSX」に合わせることで、拡張性の高い高性能な基盤を素早く展開できるようにする狙いです[1]。通信事業を担うLG Uplusは、LG ElectronicsやLG Energy Solutionと組み、NVIDIA DSXをベースにした電力効率の高いAIファクトリーや、最新GPUを収容する大規模なAIデータセンターの構築を計画しています[1]。LG Energy Solutionは、次世代GPUに対応するため、データセンター向けの800ボルト直流給電でNVIDIAと協力します[1]。

自動運転とモビリティAI

モビリティ分野では、LG Electronicsが先進運転支援システム(ADAS)や車載AIを、NVIDIAの車載基盤「NVIDIA DRIVE」に合わせていきます[1]。センサー・演算・ソフトウェアの構成を「DRIVE Hyperion」アーキテクチャにそろえ、自動運転やADAS、ソフトウェア定義車両(SDV)に向けたロードマップを支えます[1]。今後のモビリティ用途では、AIを活用したコックピットやエッジでのAI処理に向けて、車載向け演算基盤「NVIDIA DRIVE AGX」を採用する計画です[1]。LG Innotekも、センシングや接続、ライティングといった主力部品を軸に、NVIDIAアーキテクチャ専用に設計した次世代部品で協力します[1]。

ソブリンAI「EXAONE」の強化

NVIDIAとLG AI Researchは、韓国を代表するソブリンAI(自国で開発・運用するAI)モデルの一つ「EXAONE」の強化でも連携します[1]。EXAONEは、開発者や企業、研究者が利用できるオープンなモデル群です[1]。LG AI Researchはモデル開発にNVIDIAのBlackwell世代GPUや「NeMo」フレームワーク、「Nemotron」のオープンデータセットを用い、最適化した推論エンジンの構築には「TensorRT-LLM」を活用したとしています[1]。LGグループは、EXAONEを使った社内向けチャットサービス「ChatEXAONE」などを通じて、グループ各事業へのEXAONEやエージェントAIの導入を広げようとしています[1]。

まとめ

今回の発表は、NVIDIAのAI基盤を軸に、LGグループの家電・ロボット・モビリティ・エネルギー・素材といった幅広い事業へAIを行き渡らせる動きだと言えます。家庭用ロボットや自動運転のような身近な分野から、スマートファクトリーやデータセンターといった土台まで、現実世界に働きかけるAIをまとめて押し進める点が特徴です。韓国のソブリンAI「EXAONE」の強化も含め、有名企業と具体的なプロダクトが結びつくことで、フィジカルAIの実用化がさらに加速するか注目されます。

出典:https://blogs.nvidia.com/blog/nvidia-and-lg-group-ai-factory/