NVIDIAとGoogle Cloudは、今年のGoogle I/Oに合わせて、両社が共同運営するAI開発者コミュニティの拡充を発表しました[1]。参加者は10万人を超え、NVIDIAのGPU上でJAXを動かす学習パスや、推論の最適化に取り組むNVIDIA Dynamoのコードラボ、毎月配信される開発者向けライブ配信が新たに加わります[1]。AIエージェントの開発に必要な道具立てを、学習リソースごと一気にそろえる狙いです。

10万人超の開発者コミュニティに新メニュー

このコミュニティは昨年のGoogle I/Oで立ち上げられたもので、NVIDIAとGoogle Cloudの最新技術を使ってAIのスキルを磨きたい開発者やデータサイエンティスト、機械学習エンジニアが集まる場です[1]。Google Cloud上でNVIDIAのAIプラットフォームをフルスタックで活用しながら、学習パス(体系立てた教材)やハンズオンの実習、イベントを通じて開発を後押ししてきました[1]。

今年新たに加わるのは、NVIDIAのGPU上で機械学習向けライブラリ「JAX」を動かす学習パス、推論を効率化するソフトウェア「NVIDIA Dynamo」のコードラボ(手を動かして学ぶ実習)、そして毎月配信される開発者向けライブ配信です[1]。

NVIDIAによれば、この1年でコミュニティはAIを作る人たちの拠点として定着し、Google Kubernetes Engine(GKE)上で本番運用に耐えるRAG(検索拡張生成、外部データを参照して回答を組み立てる仕組み)アプリを構築したり、エージェントの稼働状況を可視化する仕組みを整えたりといった成果が生まれているとしています[1]。スポーツ分析や企業のデータ処理といった現実の用途に向けて、オンプレミスとクラウドを組み合わせた推論の試作も進んでいるとのことです[1]。

Gemma 4・Nemotron・オープンフレームワークで作る

両社は、NVIDIAのライブラリやオープンモデル、各種ツールをGoogle CloudのAI基盤と組み合わせ、本番品質のAIアプリを素早く作れるようにする教材や実習を用意しています[1]。たとえば、データ処理を高速化するNVIDIAの「cuDF」ライブラリを「Google Colab Enterprise」や「Dataproc」で使ったり、Google DeepMindのオープンモデル「Gemma 4」とNVIDIAのオープンモデル「Nemotron」、Googleの「Agent Development Kit(ADK)」を組み合わせて、複数のAIが連携するマルチエージェントのアプリを動かしたりできます[1]。実行環境には、NVIDIAの「RTX PRO 6000 Blackwell」GPUを搭載したGoogle Cloudの「G4」仮想マシンを、「Cloud Run」やスポットインスタンスで利用します[1]。

オープンフレームワークの「JAX」については、1基のGPUでの実験から複数ラックに及ぶ大規模な構成まで、NVIDIAのAIインフラ上で一貫した性能と使い勝手で動かせるよう連携を進めているとしています[1]。大規模モデルを効率的に学習させる「MaxText」フレームワークは、こうしたJAXの最適化を「Google Cloud AI Hypercomputer」で活用します[1]。推論側では、GKE上で動く「NVIDIA Dynamo」が、複数の専門モデルを使い分けるMoE(Mixture of Experts、混合エキスパート)のような大規模な推論を効率化します[1]。JAXをNVIDIA GPUで動かす学習パスと、GKE上のDynamoを扱う推論コードラボは、いずれも来月からコミュニティのメンバー向けに提供される予定です[1]。

SynthIDとCosmosで「責任あるAI」を後押し

AIエージェントは、自分で考え、計画し、人に代わって行動する複数のモデルを組み合わせて作られることが増えています[1]。こうした流れの中で、生成された内容の出どころや仕組みを把握できる「信頼性」と「透明性」が土台になるとNVIDIAは指摘します[1]。

NVIDIAは、Google DeepMindのAI電子透かし技術「SynthID」に最初に協力した業界パートナーです[1]。SynthIDは、AIが生成したコンテンツに目立たない形でデジタル透かしを埋め込む技術で、NVIDIAの基盤モデル群「Cosmos」が生み出す出力の信頼性を保つのに役立つとしています[1]。Cosmosは、ロボットや自律機械といった物理世界で動くAI(フィジカルAI)向けに、立体的な空間認識やシミュレーションの機能を提供する「ワールド基盤モデル」で、build.nvidia.com上で利用できます[1]。両者を組み合わせることで、画像や映像の透明性を保ちつつ、クラウドからエッジ、現実環境までエージェント型のアプリを責任ある形で展開しやすくなるとしています[1]。

フルスタック基盤の広がり

今年のGoogle I/Oは、エージェント型の新しい体験と開発者向けツールに焦点を当てています[1]。NVIDIAとGoogle Cloudは、開発者がそれらを使いこなすためのインフラ、ソフトウェア、学習リソースをそろえることに力を入れており、コミュニティで身につけたスキルや道具は、試作から企業レベルの本番運用までそのまま拡張できるとしています[1]。

両社は先のGoogle Cloud Nextでも、エージェントの学習・展開・運用を支えるフルスタックの基盤を拡張しています[1]。この取り組みには、NVIDIAの次世代設計「Vera Rubin」を採用した「A5X」インスタンスやGoogle DeepMindの「Gemini」モデルなどが含まれ、OpenAIやThinking Machine Labs、Schrödinger、Salesforce、Snap、Crowdstrikeといった主要なAIラボや企業に活用されているとしています[1]。

まとめ

NVIDIAとGoogle Cloudは、共同の開発者コミュニティにJAXやNVIDIA Dynamoの学習メニューを追加し、Gemma 4やNemotron、RTX PRO 6000 Blackwell搭載のG4インスタンスなど、AIエージェントを作るための環境を一段と充実させました。SynthIDによる電子透かしやCosmosを使った責任あるAIの取り組み、Vera Rubin採用のA5Xインスタンスまで含め、学習から本番運用までを地続きにする「フルスタック」志向が鮮明です。新しい学習パスとコードラボは来月から提供される予定です。

出典:https://blogs.nvidia.com/blog/google-cloud-developer-community-ai-builders/