NVIDIAは、Amazon Web Services(AWS)との協業をさらに深め、AIを本番環境で大規模に動かすための基盤を強化したと発表しました[1]。新しいGPU搭載インスタンス「Amazon EC2 G7」の提供開始、ベクトル検索のGPU高速化の標準化、学習向けの性能認定という3つの柱で、企業がAIを実証実験の段階から実運用へと移しやすくするのが狙いです[1][2]。
新GPUインスタンス「Amazon EC2 G7」
今回の中心となるのが、NVIDIAの「RTX PRO 4500 Blackwell Server Edition」GPUを搭載した新インスタンス「Amazon EC2 G7」です[1][2]。AWSは、このサーバー向けBlackwell GPUを採用した最初の主要クラウド事業者になります[2]。提供は2026年6月18日に始まり、当初は米国東部(オハイオ)と米国西部(オレゴン)の2リージョンが対象です[2]。
性能面では、前世代の「G6」と比べてAI推論で最大4.6倍、グラフィックス処理で最大2.1倍に達するとしています[1][2]。構成は最大8基のGPUを搭載でき、GPUメモリは合計256GB、ネットワークはEFA(Elastic Fabric Adapter)対応で最大700Gbps、ローカルストレージは最大7.6TBのNVMe SSDを備えます[1]。GPUを1基・2基・4基・8基から選べるほか、ベアメタル(仮想化を挟まない物理サーバー直接利用)構成も近く加わる予定で、ワークロードに合わせて過剰な確保をせずに規模を調整できると説明しています[1]。プロセッサにはIntel製のXeon 6を採用しました[2]。
用途も幅広く想定されています。AI推論に加え、動画や画像の高解像度処理、CAD(コンピューター支援設計)や仮想デスクトップ、ゲーム、空間コンピューティングといったグラフィックス中心の作業を、同じインスタンス種別でこなせるとしています[1]。データ分析では、Apache Spark向けの「NVIDIA cuDF」ライブラリをAmazon EMRで使うことで、GPUによる高速化を分析パイプラインに持ち込めます[1]。G7は、AWSの各種機械学習向けマシンイメージやコンテナ、Amazon EMR・EKS・ECSなどから利用でき、Amazon SageMaker AIへの対応も近く加わる予定です[1]。
ベクトル検索のGPU高速化を「標準」に
2つ目の柱は、検索基盤「Amazon OpenSearch」の刷新です。次世代の「OpenSearch Serverless」では、NVIDIAのオープンソースライブラリ「cuVS」を使ったGPUによるベクトル索引づくりが、すべてのベクトルコレクションの既定の処理方法になります[1][3]。ベクトル検索とは、文章や画像などを数値の並び(ベクトル)に変換し、意味の近いものを探し出す仕組みで、生成AIの土台として広く使われています。
この変更が効いてくるのが、検索拡張生成(RAG。外部データを参照して回答精度を高める手法)や意味検索、推薦システム、自律的に動くエージェント型AIといった用途です[1]。NVIDIAによれば、CPUだけで索引を作る場合と比べて、ベクトル索引づくりは最大10倍速く、コストは4分の1に抑えられ、10億件規模のベクトルデータベースも1時間以内に構築できるようになるとしています[1][3]。これまで専門的な最適化プロジェクトとして扱われがちだったGPUによるベクトル検索が、AWSの標準機能として誰でも使える形になる点が大きな変化です[1]。
学習性能に「お墨付き」 GB300でExemplar Cloud認定
3つ目は、学習ワークロードに関する認定です。AWSは、NVIDIAの最上位システム「GB300」を使った学習で、NVIDIAの「Exemplar Cloud」認定を取得しました[1]。これは、NVIDIAが自社の基準アーキテクチャ(性能の物差しとなる参照構成)に照らして定めた厳格な性能水準を、AWSの環境が満たしていることを意味します[1]。
NVIDIAは、この認定を両社の緊密な共同設計(コエンジニアリング)の成果だと位置づけています[1]。「Exemplar Clouds」の枠組みを通じて、開発者やAI部門の責任者は、大規模学習に使うクラウド基盤が一貫して高い性能を出せるかどうかを判断しやすくなり、総保有コスト(TCO)の改善や、計画から本番までの移行を効率化できるとしています[1]。
まとめ
NVIDIAとAWSの今回の発表は、新GPUインスタンス「EC2 G7」、cuVSによるベクトル検索のGPU標準化、GB300でのExemplar Cloud認定という3点で、AIインフラの各層を一度に底上げする内容です。共通する狙いは、運用の手間を増やさずに本番規模で性能を出せる基盤を整え、企業がAIを試す段階から実際に使う段階へと進めやすくすることにあります。生成AIの利用が実証実験から日常業務へと広がるなかで、クラウド側がどこまで導入のハードルを下げられるかが問われています。もっとも、示された数字はいずれもNVIDIAとAWS自身の計測に基づくもので、実際の効果は個々のワークロードでの検証にかかっています。
出典: https://blogs.nvidia.com/blog/nvidia-aws-ai-production-scale/
