Google は 2026 年 5 月 19 日、研究者向けの AI ツール群「Gemini for Science」を Google I/O 2026 に合わせて公開しました[1]。Co-Scientist で組まれた仮説生成ツール、AlphaEvolve をベースにした計算実験エンジン、NotebookLM 由来の文献分析ツールという 3 つのプロトタイプを Google Labs で順次提供しつつ、エージェント開発基盤 Antigravity 向けには 30 以上の生命科学データベースを束ねた「Science Skills」も同時投入。AI を「研究者の代わりに走るパートナー」へ近づける布陣がそろっています[1][2]。

Labs で順次公開される 3 つの研究プロトタイプ

Gemini for Science の中核は、Google Labs から段階的にアクセス開放される 3 つの実験ツールです[1]。

1 つ目は Hypothesis Generation で、DeepMind の AI 共同研究エージェント「Co-Scientist」を基盤に、研究課題を定義したうえで複数エージェントによる「アイデア トーナメント」を回し、仮説を生成・議論・評価するところまでをワンセットで担います[1][3]。生成された主張はクリック可能な引用とともに深く検証されるため、ハルシネーションが研究プロセスへ紛れ込むリスクを抑え込む設計です[1]。

2 つ目は Computational Discovery で、DeepMind の AlphaEvolve と、本日 Nature に掲載された ERA(Empirical Research Assistance) を組み合わせたエージェント型リサーチ エンジンです[1][4]。コード変種を数千通り並列で生成・採点しながら、太陽光発電予測や疫学のような計算負荷の高い領域でも、手作業なら数か月かかるモデリングを短時間で回し切る位置づけになっています[1]。

3 つ目は Literature Insights で、NotebookLM の上に構築されており、論文を検索してカスタム属性付きの表へ整理し、横並びで比較できるようにします[1]。チャットでニュアンスを掘り下げ、レポートやスライド、インフォグラフィック、音声・動画ナレーションといった成果物まで生成できる点が、従来のサーベイ作業との差をはっきり付けてきています[1]。

3 ツール共通で、Google は本日から段階的にアクセス開放を始めるとしており、興味のある研究者は labs.google/science から申請できます[1]。

Antigravity 上の「Science Skills」、生命科学 DB を 30 超統合

もう 1 本の柱が Science Skills です[1]。これは、UniProt、AlphaFold Database、AlphaGenome API、InterPro など 30 以上の主要な生命科学データベースとツールを、Google のエージェント開発基盤 Antigravity 上のスキル パックとして束ねたもので、構造バイオインフォマティクスやゲノム解析といった、本来なら数時間かかる手作業のワークフローを数分単位まで縮められると説明されています[1]。

Google 内部のテストでは、Science Skills を使って AK2 遺伝子の変異が引き起こす希少疾患 に関する解析を行い、発症メカニズムに関する新しい仮説を導いたといいます[1]。研究者は antigravity.google/use-cases/science から、Antigravity の中で Science Skills をそのまま試せます[1]。

エンタープライズと学術界、両面で実用フェーズへ

Gemini for Science は実験ツールにとどまりません。Google Cloud 経由でエンタープライズ向けにも展開されており、BASF が AlphaEvolve でサプライ チェーン最適化を、Klarna が機械学習モデルの強化を進めているほか、第一三共、Bayer Crop Science、米国エネルギー省の Genesis Mission に参加する米国国立研究所群が Co-Scientist を使って研究を加速しているとされています[1]。

学術界とのつながりも厚みが出てきました。Google は 100 以上の機関と連携しており、スタンフォード大学(肝線維症)、Imperial College London(薬剤耐性)、Francis Crick Institute との複数年に及ぶ協業など、生命科学の重い課題に AI を当てに行っています[1]。検証用にはトラステッド テスター コミュニティが編成されており、PhD 学生からノーベル賞受賞者まで含む顔ぶれで、生成された結論をストレス テストにかけている点も、結果の信用度を担保する重要な仕掛けです[1]。

本日付では ERA と Co-Scientist の検証論文が Nature に掲載 されたほか、ICML や STOC、NeurIPS とのエージェント型ピアレビュー実験(Paper Assistant Tool や ScholarPeer)も走り出しており、研究のループ全体に AI が入り込み始めた構図です[1]。すでに AlphaFold は 300 万人超 の研究者に使われ、AlphaGenome は疾患ドライバーの特定に活用されているという数字も改めて示されており、Gemini for Science は単発のキャンペーンではなく、Google が積み重ねてきた科学向け AI 群の集約点として位置づけられそうです[1]。

まとめ

Google が I/O 2026 で公開した Gemini for Science は、Labs の 3 プロトタイプと Antigravity の Science Skills という 2 段構えで、エージェント型の AI を研究プロセスへ正面から差し込む発表になりました[1]。BASF や第一三共、米国国立研究所といったエンタープライズ・学術両面の事例と、Nature に掲載された検証論文が後ろ盾にあり、AI が「研究を手伝う」段階から「研究を仕掛ける」段階へ移っていく流れが、はっきり見えてきています[1][4]。

出典 [1]: https://blog.google/innovation-and-ai/technology/research/gemini-for-science-io-2026/

出典 [2]: https://ai.google/gemini-for-science/

出典 [3]: https://deepmind.google/blog/co-scientist-a-multi-agent-ai-partner-to-accelerate-research/

出典 [4]: https://research.google/blog/empirical-research-assistance-era-from-nature-publication-to-catalyzing-computational-discovery/