Googleは7月30日、AIエージェント「Gemini Spark」をChromeと直接つなぐ新機能を公開しました[1]。利用者が許可すると、Chromeにログイン済みのアカウントと保存済みパスワードを使い、部屋の内見予約や航空券探しといった手間のかかるウェブ上の用事をSparkが代わりに進めます。支払いのような重い操作は人間に差し戻す設計です。あわせて、Google AI Proの契約者向けに提供地域を160カ国以上追加しました[1]。

遠隔ブラウザから「手元のChrome」へ

これまでのSparkは、Googleのサーバー側にある遠隔ブラウザを操作してウェブを見に行く仕組みでした。今回の更新では、利用者のパソコンで動いているデスクトップ版Chromeそのものを操作対象に加えます[2]。手元のブラウザに残っているログイン状態と保存済みパスワードをそのまま使えるため、ログインの壁で止まっていた作業に踏み込めるようになる、というのが変化の本質です。

Googleが挙げた例は2つです。保存済みの物件について内見の予約を入れること、そして航空券の候補を調べて予約手続きの途中まで進めることです[1]。どちらも複数のサイトを行き来しながら同じ情報を入力し直す、いわゆる雑用に近い作業です。

Sparkの道具立てとしては、Workspaceや検索とつながるConnected Apps、利用者の文脈を扱うPersonal Intelligence、コード実行が可能な遠隔コンピューター、Canvasなどがすでに用意されていました。Chrome auto browseはその列に加わる形になります[2]。アクセスを許可すると、Chromeの上部バーにGeminiとauto browseを示すインジケーターが表示されるため、いま自動操作が走っているかどうかは画面上で分かります[2]。

支払いの手前で人間に戻す

自分のログイン情報をAIに預ける以上、安全側の作りがどこまで用意されているかが気になるところです。Googleは2点を挙げています。1つはプロンプトインジェクション、つまりウェブページや文書に仕込まれた悪意ある指示にAIが従わされる攻撃への対策です。もう1つは、支払いのような機微な操作に差しかかったところで作業を利用者へ引き渡す挙動です[1]。

ただし、プロンプトインジェクション対策の中身については技術的な説明が示されておらず、既知の攻撃手法に対してどの程度検証されたのかも公表されていません[3]。この種のAIブラウザ機能には、白背景に白文字やHTMLコメントなど人間には見えない場所へ指示を隠す攻撃が繰り返し報告されてきた経緯があり、実効性の評価はこれからという段階です[3]。

利用者側の手綱としては、Sparkのタスク画面からいつでもブラウザの操作権を取り戻せる「Take over task」が用意されています。パスワードや支払い情報の入力など特定の場面では、Gemini側から操作を代わるよう求めてくることもあります[4]。同時に走らせられるタスクは15件までで、それを超えると先行するタスクの完了を待つことになります[4]。遠隔ブラウザに保存された認証情報は、設定画面からまとめて削除できます[4]。

160カ国以上を追加、欧州と英国は対象外

もう1つの発表が提供地域の拡大です。Google AI Proの契約者に対し、新たに160カ国以上でSparkを使えるようにしました[1]。これまでSparkは上位プランのGoogle AI Ultra契約者向けに提供されており、今回初めて下位のAI Proへ対象が広がった形です[1][5]。

ただし全世界というわけではありません。欧州経済領域(EEA)、ナイジェリア、スイス、英国は対象から外れています[3][5]。広告市場としては大きい欧州が丸ごと抜けている点は、この機能を前提にした検証や設計が当面できない地域が残ることを意味します[3]。Googleは除外の理由も解除の時期も説明していません[3]。なお日本は除外リストに含まれておらず、Spark本体は7月14日の対応言語・対応地域の拡大時点で、Google AI Ultra契約者向けに日本語環境でも使えるようになっています[5]。今回の発表は、その対象をGoogle AI Proへ下ろすものです[1]。

利用条件も整理されています。18歳以上であること、仕事用や学校用ではなく個人のGoogleアカウントで利用すること、Google AI ProまたはUltraを契約していること、そしてアクティビティの保存が有効になっていることが求められます[3]。Chrome auto browse自体にはさらに条件があり、現時点ではデスクトップ版Chrome上のSparkだけが利用できます。Spark本体が使える環境でも、モバイルのブラウザ操作には広がっていません[3]。

料金面では、Google AI Proが月額19.99ドル(約3,200円)、上位のGoogle AI Ultraが月額99.99ドル(約1万6,000円)からです[3]。

※1ドル160円換算(2026年7月31日時点)

2カ月半で段階的に、Sparkは階段状に開いている

Sparkの広がり方には一定の型があります。5月19日のGoogle I/O 2026で、SchedulesとSkillsを備えた常駐型のアシスタントとして米国限定で登場したのが出発点です[5]。6月17日に米国外へ提供が広がり、6月30日にはMac版のGeminiアプリでもSparkが使えるようになりました[5]。7月14日には対応言語をGeminiアプリの全対応言語へ広げ、Google AI Ultra契約者向けの提供地域を拡大しています[5]。そして7月30日、対象をAI Pro契約者へ下ろして160カ国以上を追加し、同時にChrome連携を米国から始めています[1]。

機能はまず最上位プランと米国で試し、手応えを見てから下位プランと他地域へ降ろしていく。今回の発表も、地域は大きく開きつつ、危険度の高いChrome操作は米国に留めるという二段構えになっています。逆に言えば、Chrome auto browseが米国の外へ出るタイミングが、Googleがこの仕組みの安全性にどれだけ自信を持ったかの目安になります。

まとめ

Gemini SparkのChrome連携は、AIエージェントを「見るだけ」から「ログイン済みの自分として動く」段階へ進めるものです。内見予約や航空券探しといった具体例は地味ですが、保存済みパスワードを預けるという前提の重さは相応にあります。支払い直前で人間に戻す設計や操作権の取り戻し、プロンプトインジェクション対策は用意されているものの、その効き目はまだ外部から検証されていません。まずは米国での使われ方と、欧州や英国が除外され続けるかどうかが見どころになりそうです。

出典:https://blog.google/innovation-and-ai/products/gemini-app/gemini-spark-updates-july-2026/

出典:https://9to5google.com/2026/07/30/gemini-spark-chrome-auto-browse/

出典:https://ppc.land/gemini-spark-blocks-eu-and-uk-users-as-google-adds-160-countries/

出典:https://support.google.com/gemini/answer/17094507

出典:https://support.google.com/gemini/answer/17171264