画像生成AIで知られるMidjourneyが、全身を約60秒で撮影する医療用スキャナーの開発を明らかにしました。新部門「Midjourney Medical」の最初のハードウェアで、放射線も強力な磁場も使わず、超音波と水だけで体内の3次元画像を得る仕組みです。同社はスキャナーを置いた施設をスパのように展開する構想も示しており、まずは来年にサンフランシスコでの開設を予定しています。
※1ドル=約161円換算(2026年6月23日時点)
画像生成AIが医療機器に踏み出した理由
Midjourneyはこれまで、文章から画像を生み出すサービスで広く知られてきました。今回の発表は、その看板事業とはまったく異なる領域への挑戦です。同社は「自分たちは何で差別化し、何になりたいのか」を問い直した結果として、医療事業への進出を選んだと説明しています。掲げるのは、「MRIほど高性能で、スパに立ち寄るくらい気軽に受けられる検査」という構想です。今回のスキャナーは、その第一歩に位置づけられます。
仕組み:水と超音波で全身を立体化する
検査の流れは独特です。利用者が台に乗ると、毎秒およそ5センチ(2インチ)の速さで水のなかへ沈められます。体の周囲には、砂粒ほどの小さな素子を50万個並べたリングが配置されています。素子の一つ一つが超音波を発する小さなスピーカーであり、同時に体を通って跳ね返ってきた音を拾うマイクでもあります。
原理はソナーやイルカのエコーロケーションに近く、あらゆる角度から当てた音の反響を解析して体内を描き出します。Midjourneyによれば、得られるのはミリメートル以下の精度の3次元マップで、見た目は現在のMRIに近いといいます。大きく違うのは速さです。全身MRIが通常60〜90分かかるのに対し、このスキャナーは60秒未満を目標に掲げています。検査中には毎秒テラバイト単位のデータが生じるとされ、その膨大な情報を画像へと組み立てます。
Butterfly Networkと組み、数年がかりで実用化へ
ハードウェアは、手のひらサイズの超音波機器を手がけるButterfly Networkと共同で開発しています。Midjourneyは2025年11月に同社と契約を結び、半導体の上に超音波機能を集積する技術の独占的な利用権を得ました。医療部門はTom Calloway博士が率いています。報道では、この事業に7,400万ドル(約120億円)超を投じるとされています。
計画は段階を踏みます。今後12か月はアルゴリズムと装置の調整、研究目的の試験、第2世代ハードウェアの設計に充てる方針です。来年(2027年)にはサンフランシスコで最初のスパを開き、その後に米食品医薬品局(FDA)の承認取得を目指します。2028年には独自開発のチップを使う第3世代機で画質を高め、対応都市を広げる構えです。最終的には2031年までに世界で5万台を設置する目標を掲げています。
期待と、現時点での注意点
Midjourneyは大きな展望を語っています。「十分に早い段階で画像検査を受けられれば、将来的にはあらゆる死因の30パーセント、医療費の50パーセントを避けられる可能性も十分にある」というのが同社の主張です。
一方で、現時点のスキャナーはあくまで第1世代の試作機であり、診断機器としての規制当局の承認はまだ得ていません。検査がどこまで実際の診断に使えるかは、今後の試験とFDAの審査の結果次第です。構想としては画期的ですが、医療現場で当たり前に使われるようになるには、まだ時間と検証が必要だと言えます。
まとめ
Midjourneyは、画像生成AIで培った技術を土台に、超音波と水で全身を60秒でスキャンする医療機器の開発へ乗り出しました。MRI並みの精度を桁違いの速さで、しかも気軽に受けられる検査として広めることを狙っています。実現には規制当局の承認や複数世代にわたる改良という高い壁が残りますが、AI企業が医療の現場へ挑む新たな動きとして注目を集めそうです。
