メモやドキュメント管理で知られるNotionが、OpenAIのAIコーディングツール「Codex」を開発の中心に据え、エンジニアの働き方を大きく変えていることが明らかになりました[1]。同社では、これまで2週間ほどかかっていた機能の実装を3時間ほどに短縮した例もあるといいます[1]。AIエージェントが書くコードが前提になりつつある現場の姿が、具体的なエピソードとともに語られています。
「2週間かかる機能を3時間で」音声入力をひとりで実装
NotionでAIプロダクトエンジニアリングを率いるRyan Nystrom氏のチームは、1年あまりで製品内のほぼすべてのAI機能に関わってきたといいます[1]。その同氏が、Web版Notionに音声入力機能を導入する作業を、Codexだけを使って進めた事例を紹介しています[1]。
この機能の要望が来た時点で、モバイルアプリには動作するバージョンがあったものの、デスクトップとWebのクライアントには未実装でした[1]。Nystrom氏自身もモバイルでの仕組みを完全には把握していませんでしたが、Codexにモバイル側のコードを参照させ、Webでどう見せたいかを明確に伝え、結果を検証する手段を渡したと説明しています[1]。するとCodexは、一度の指示でWeb実装の完成度の高い初版を返し、その内容はNotionのコード規約に沿っていたため、翌日には公開できる水準だったといいます[1]。
同氏は「2年前に同じ音声入力機能を作っていたら、私ともうひとりのエンジニアで2週間ほどかかった作業だ」と振り返り、「Codexを使えば、3〜4時間ほどで、それも完全にひとりで作れた」と述べています[1]。Codexがまずモバイルのコードを丁寧に調べたうえで、機能全体をほぼ一度に書き上げた点を評価しており、「実際に作り始める前に、じっくり把握する時間を取ってくれる。その結果、最初からコードベースの基準に沿ったものが出てくるので、後から手直しする手間が少ない」とも語っています[1]。
「もう手書きでコードを書かない」開発の進め方が変わる
Notionのエンジニアは、一連のタスクと成果を確認する方法をCodexに渡し、その間は別の作業に移れるようになっているといいます[1]。Nystrom氏は「Codexに渡す仕様書を書くことに、むしろ多くの時間を使うようになった。正直なところ、もう自分の手でコードを書くことはほとんどない」と話しています[1]。
働き方の変化も具体的です。Codex導入前は、各エンジニアが会議の合間やチームの支援をこなしながら、一度に1つのタスクに集中するのが精いっぱいでした[1]。現在は複数のタスクを並行して走らせ、それまでボトルネックになっていたチーム内の支援を保ったまま作業を進められるようになったとしています[1]。
Codexは時間帯も選びません。Nystrom氏は、就寝前にリサーチの問いを投げてCodexに一晩かけて処理させ、翌朝に仕上がったレポートを受け取る、といった使い方も挙げています[1]。「バグの修正でも、ちょっとした調整でも、Codexはいつでも応じてくれる。いわばNotionに24時間体制のインターンがいるようなものだ」と表現しています[1]。
管理職もコードに戻り、少人数で出せる量が変わる
変化はエンジニアだけにとどまりません。Nystrom氏は「私は人を率いる立場で、従来こうした管理職はコードを書く時間が取れなかった」としたうえで、「チームを支えながら、自分ひとりで機能を作れるのはすごいことだ。5年以上マネジメントをしてきたが、これほど深くコーディングの課題に取り組めたことはない」と述べています[1]。タスクを登録して会議に入り、戻ってきたら機能が仕上がっている、という進め方ができるようになったといいます[1]。
OpenAIは、Codexによって「小さなチーム、それこそひとりのチームであっても、何を世に出せるかという基準が引き上げられた」と位置づけています[1]。Notionでは、ソフトウェアの部品や抽象化のあり方そのものを、エージェントが使いやすいように考え直しているといいます[1]。新しくエンジニアを採用する際にも、この分野では本来求められるはずの長年の経験がまだ存在しないことを踏まえ、好奇心や柔軟な姿勢を重視して採用しているとのことです[1]。
まとめ
NotionによるCodex活用の事例は、AIコーディングエージェントが開発現場の前提を変えつつあることを具体的に示しています。2週間規模の機能をひとりが数時間で実装し、管理職が再びコードに向き合い、仕様書を書いてエージェントに委ねる働き方が広がっています。手書きでコードを書く時間が減る一方で、何を作るかを設計し検証する力の重みが増している点が、今回語られた変化の核心だと言えそうです。
