業務管理ツールを提供するAsanaが、社内で5年がかりと見積もっていたコードの大掃除を、OpenAIのCodexを使って2週間で終わらせたと明らかにしました[1]。かかったモデルとインフラの費用は約1万2,000ドル(約190万円)で、人員を割り当てる従来案の約600万ドル(約9億5,000万円)と比べると桁が2つ違います。何をどう任せたのかを追いかけます。

5年の見積もりが2週間に縮んだ

対象になったのは、Enzymeという古いテスト用ツールをコードベースから取り除く作業です[1]。Asanaのフロントエンドはこのツールに依存していて、それが土台の刷新を止める要因になっていました。

作業に費やしたエンジニアの実働は1.5週間分で、カレンダー上は2週間で完了しています[1]。従来の計画では少なくとも5年、費用は約600万ドルと見積もられていたので、期間も費用も想定から大きく外れた形です。モデルとインフラにかかった費用は約1万2,000ドルにとどまりました[1]。

※1米ドル=159円換算(2026年8月18日時点)

指示は5文、エージェントは最大4体を並列で

やり方はかなり素朴です。出発点は5文のプロンプトで、そこから最大4体のコーディングエージェントが並列で動きました[1]。それぞれのエージェントはコードベースの別々の複製の中で作業するため、互いの変更がぶつかりません。

人間の関わり方も限定的です。担当エンジニアは1日2回だけ進捗を確認し、提案された変更はすべて目視でレビューしてから承認しました[1]。Asanaが振り返りとして挙げているのは、凝った仕組みを組むよりも単純な指示のほうがうまくいったという点です[1]。エージェントに渡す情報を増やして制御しようとするより、作業を細かく切って並べたほうが結果につながったことになります。

この「人が全部レビューする」という前提は、Asanaが自社製品で採っている考え方とも重なります。同社のプラットフォームはAIエージェントと自動化で作業の管理や実行を助ける設計になっていて、その進め方を自社のエンジニアリング組織にもそのまま持ち込んでいます[1]。

なぜEnzymeが「動かせない塊」になっていたのか

Enzymeは、もともとReactのコンポーネントを単体テストするために広く使われていたライブラリです。ただ、Reactが内部構造を変えたv17以降に追随できず、React 18に対応する公式アダプタは存在しないまま実質的に更新が止まっています[2]。

このため、Enzymeで書かれたテストを大量に抱えたプロジェクトは、Reactを新しくしようとした時点で足止めを食らいます。移行を試みた開発者の記録では、Enzyme APIを新しいテスト手法に翻訳する互換レイヤーを自作しようとしたものの、両者の設計思想が違いすぎて断念し、テスト実行時だけ古いReactを併走させるという回避策に落ち着いています[2]。数百件規模でもこの状態なので、Asanaのようなコード量になれば5年という見積もりも大げさではありません。

Enzymeが実装の内側(内部の状態や個別のメソッド)を検証する書き方を促していたことも、機械的な一括置換を難しくしていました。テストを1件ずつ意図を読み取って書き直す必要があり、まさに人手が延々と溶ける種類の作業だったわけです。

「やる価値がない」と切り捨てていた仕事が戻ってくる

Asanaはこの移行を終えたことで、これまで何年もかかると思って手を付けていなかった別の移行や書き直し、性能改善にもエージェントを試せるようになったとしています[1]。

OpenAIが引用しているAsana側のコメントも、期待の持たせ方としては慎重です。何年もかかるプロジェクトのすべてが数週間に縮むわけではないとしたうえで、エージェントによってエンジニアが本来の作り込みに割ける余地が広がり、これまで不可能とみなしていた作業に挑む価値が出てくると述べています[1]。

Codexの使われ方が広がっていることを示すデータもあります。OpenAIが2026年6月に公表した社内の集計では、同社従業員のCodex利用率は97.9パーセントに達し、2025年8月時点の約40パーセントから大きく伸びました[3]。法務や採用といった非技術部門でもCodexが主要なAIツールになっていると報告されています[3]。

まとめ

Asanaは、5年がかりと見積もっていたEnzymeの撤去作業を、OpenAIのCodexを使って2週間で完了させました。5文のプロンプトから最大4体のエージェントが並列で動き、エンジニアは1日2回の確認と全変更のレビューに徹する形です。費用はモデルとインフラで約1万2,000ドル(約190万円)と、従来案の約600万ドル(約9億5,000万円)を大きく下回りました。派手な仕組みではなく単純な指示のほうが効いたという振り返りは、エージェント活用を検討する現場にとって参考になりそうです。

出典[1]: https://openai.com/index/asana

出典[2]: https://darekkay.com/blog/react-18-enzyme/

出典[3]: https://www.theregister.com/ai-and-ml/2026/06/25/openai-says-979-percent-of-its-employees-are-now-using-agents/5262499