Amazonは、自社の通販サイトに出店する事業者向けの管理ツールを外部のAIエージェントに開放すると発表しました。第一弾としてAnthropicの「Claude」との連携プラグインを米国でベータ公開し、出店者は管理画面にログインせずに在庫確認や価格変更を任せられるようになります。一方で同じ時期に、Metaの汎用AIエージェント「Muse」による自社サイトへのアクセスは遮断しており、AIエージェントをめぐる大手プラットフォーム間の駆け引きが浮き彫りになっています。

出店者支援プラグインの中身

今回発表されたのは、出店者管理システム「セリングパートナー」の機能を外部のAIエージェント経由で呼び出せるプラグインです。裏側ではAnthropicのClaudeと、Amazon自社開発のAIモデル「Nova」の両方をクラウド基盤「Amazon Bedrock」上で組み合わせて動かす構成になっており、特定の1社に依存しない設計とされています。導入作業はおよそ60秒で完了し、プログラミングの知識は不要です。プラグインを通じて在庫の確認や価格の調整、商品ページの更新といった作業を、管理画面を開かずにチャット形式で指示できるようになりますが、実際の操作を実行する前には必ず出店者本人の承認が必要になる仕組みです。

あわせて、価格設定や広告キャンペーンの分析を視覚的に確認できる「キャンバス」機能を備えた新しいセラーアシスタントも公開されました。さらに、主要アカウントの保有者を対象に、有償サービス「Amazon Quick Plus」を2026年12月31日まで無償で提供するキャンペーンも同時に始まっています。

なぜ今、出店者にAIエージェントを開放するのか

Amazonの説明によれば、同社の通販サイトで販売される商品のうち6割以上は独立系の出店者によるものです。出店者からの手数料収入は2026年第2四半期だけで468億ドル(約7兆3,500億円)に達しており、Amazonにとって出店者の業務効率化は収益基盤そのものに直結する課題です。加えて、出店者の9割ほどがすでに何らかの形で外部のAIツールを業務に取り入れているという実態調査もあり、Amazonとしては公式な連携経路を用意することで、非公式なツール経由でのデータ流出リスクを抑えつつ、既存の需要を自社エコシステム内に取り込む狙いがあるとみられます。プラグイン開発を担当する幹部は、出店者が管理画面を開かずに済むよう「彼らが普段使っている場所にツールを届ける」ことを目指したと説明しています。

Metaの「Muse」は締め出し、Anthropicとは蜜月続く

一方で今回の発表と同じ週、Amazonは競合にあたるMetaの汎用AIエージェント「Muse」による自社通販サイトへのアクセスを遮断しました。Amazon側は、Museがサイト閲覧の許可を得ておらず、閲覧時に自らをAIエージェントだと名乗っていなかった点を問題視し、利用者の認証情報が外部に漏れる懸念があると説明しています。これに対しMetaは、Museがパスワードや決済情報にアクセスすることはないと反論しており、両社の主張は食い違ったままです。Museはこの措置を受けてWalmartやSephora、Best Buyといった他の小売サイトへの対応を広げており、9月8日の提供開始以降、Meta株はおよそ2割上昇し時価総額を約2,000億ドル(約31兆円)押し上げたとも報じられています。

対照的にAmazonとAnthropicの関係は深まる一方です。Amazonはこれまでにおよそ130億ドル(約2兆400億円)をAnthropicに投資しており、一定の条件を満たせばさらに200億ドル(約3兆1,400億円)を追加投資する枠組みもあるとされています。Anthropic側も今後10年間でAWSの技術に1,000億ドル(約15兆7,000億円)超を投じる方針を明らかにしており、両社は資本と技術の両面で結び付きを強めています。

まとめ

Amazonは出店者向け管理ツールをAIエージェントに開放する一方で、許可なく自社サイトへアクセスしようとした競合のAIエージェントは締め出すという、選別的な姿勢を鮮明にしました。今回の一連の動きは、生成AIが単なるチャット相手にとどまらず、実際の商取引の現場で「誰の代理として動くか」を各プラットフォームが線引きし始めた事例といえます。ネット通販の現場でAIエージェントがどこまで踏み込めるかをめぐる駆け引きは、今後も他の大手小売サイトを巻き込みながら続きそうです。

※1ドル157円換算(2026年9月26日時点)