矢崎総業、Cuebus、山善の3社が、静岡県裾野市に新設されたイノベーション施設「Innovation Hub – REN(錬)」で、都市型立体ロボット倉庫「CUEBUS」を使った実証実験を2026年9月21日から始めます。倉庫が自動で吐き出した部品を、自律型ヒューマノイドロボットが受け取って次の工程へ渡す。種類の違うロボット同士でバトンをつなぐ、という珍しい組み合わせの検証です。

通路のない倉庫という前提の置き換え

CUEBUSはCuebusが開発した立体ロボット倉庫で、床に埋め込んだ独自のリニアモータでトレイを走らせる仕組みです。人が歩くための通路を前提としないため、ケースを隙間なく詰め込んだまま立体的に保管でき、必要なものだけを自動で取り出せます。同社は従来の平置き棚と比べて同一面積で4倍以上の収納量になるとしています。

工場や倉庫の自動化というと、まず搬送ロボットを何台も走らせる絵が浮かびがちです。CUEBUSはそこを逆に振っていて、走るのは荷物を載せたトレイのほうです。棚のところまでロボットが迎えに行く時間が発生しない、というのがこの構造の狙いになります。

矢崎総業が実証の場に選んだInnovation Hub – REN(錬)は、AIとロボティクスを使った次世代のものづくりを試すために用意された施設です。人手に頼る工程や負荷の高い作業をどこまで減らせるか、限られた面積をどこまで使い切れるかを、実機で確かめる位置づけになります。

出庫の先にヒューマノイドが立つ

今回の実証で目を引くのは、CUEBUSの出口側です。自動出庫された部品や資材を、同施設に導入されている自律型ヒューマノイドロボットが受け取り、次の工程へ引き渡します。3社は、この工程間の連携に加えて、動線の効率や在庫管理の最適化にどれだけ効くのかを検証するとしています。

ヒューマノイドを工場に入れる話は増えていますが、周辺設備との噛み合わせまで込みで検証する例はまだ多くありません。人間の動きを模したロボットは、既存の設備をそのまま使えるのが売りである一方、受け渡しのタイミングや位置決めの精度は相手次第で変わります。倉庫側がどこにいつ何を出すかを制御できるCUEBUSと組ませるのは、その不確実さを削りにいく組み合わせと言えます。

山善はこのヒューマノイドの導入でパートナーとして加わっており、フィジカルAIのデータとの連携も検証対象に入っています。生産財と消費財の両方を扱う専門商社という立場から、生産現場の自動化提案を担う形です。

床がモーターになっている

CUEBUSの中身を少し覗くと、この倉庫の性格が分かりやすくなります。床にあたるTILEにはリニアモータと多数のセンサーが内蔵されており、毎秒22,000回のセンシングで上に載ったTRAYの走行を制御します。TILEは寸法がW800×D590×H59mmで重量は17.8kg、TRAYはW664×D454×H57mmで11.5kg、可搬重量は100kgです。

面白いのはTRAY側で、モーターもバッテリーも積んでいません。駆動力は床から与えられるため、充電待ちで止まる台車が出ませんし、壊れる部品そのものが少なくなります。停止精度は±1cm以下とされ、ピッキングステーションの前にきちんと止まります。

設置のハードルが低いのもこのシステムの特徴です。電源はAC100Vのコンセントで足り、アンカー固定も不要とされています。基礎工事を伴わないため、レイアウト変更や増設に追随しやすく、実証のように「まず置いて試す」用途と相性が良い設計です。

ワイヤーハーネスの会社が自動化を試す意味

矢崎総業は1941年創業で、自動車用ワイヤーハーネスで世界トップクラスのシェアを持ち、世界46の国と地域に拠点を構えています。ワイヤーハーネスは車種ごとに形状が異なり、長尺で扱いづらい部品の代表格です。細かな品番を大量に管理しながら、工程間を行き来させる作業が避けられない分野でもあります。

CUEBUSは幅1,500mmのZハンガーラックのような長尺品も複数台の連結協調制御でそのまま搬送できるとしており、扱いにくい形状を得意としています。矢崎総業の現場が抱える課題と噛み合う部分があり、実証の主体が部品メーカー自身であるという点も、絵に描いた実験では終わりにくい理由になりそうです。

Cuebusは2026年9月4日に多階層・高密度の立体自動倉庫「CUEBUS Pallet 200kg」を発表し、9月8日には国土交通省の令和8年度自動物流道路の社会実装に向けた実証実験に採択されたことを明らかにしています。ここ数週間で展開が続いており、今回の製造現場での検証はその流れの中にあります。

まとめ

3社が目指しているのは、人とロボット、さらに異種のロボット同士が協働する次世代の生産モデルです。倉庫が自動で出し、ヒューマノイドが受け取り、次の工程へ渡す。この受け渡しがどこまで滑らかに回るかが、今回の実証で一番見たいところになります。開始は2026年9月21日です。