ベルリンで開かれたIFA 2026で、Roborockが車輪と脚を組み合わせた掃除ロボット「Saros Rover」を欧州で初めて実機公開しました。同時に発表されたのは、36,000Paの吸引力を持つ主力機や初のプール清掃ロボット、配線不要のロボット芝刈り機です。掃除の対象が居間の床から水中と庭へ一気に広がった格好で、同社が掲げる家全体の自動化がどこまで進んだのかが見えてきます。
脚を1本ずつ動かして階段を登り、踏面も掃除する
Saros Roverの特徴は、丸い本体の下に車輪を固定する従来の設計を捨て、車輪と脚を一体化した機構を左右2つ持たせた点にあります。脚は独立して伸縮でき、小さく跳ねたり、急に止まったり、進行方向を素早く変えたりしながら、本体だけは水平に保ったまま移動します。動きの制御にはAIのアルゴリズムに加えて、複数のモーションセンサーと3次元の空間情報が使われます。
狙いは、ロボット掃除機がずっと越えられなかった段差の壁です。Roverは階を移動しながら階段の踏面を1段ずつ掃除できるとされ、対象は直線階段だけではありません。曲がった階段や、段鼻が丸くなったカーペット敷きの階段、傾斜のある床、複数の段差が重なった部屋の境目まで含みます。2階建ての住宅で掃除機を2台置く必要がなくなる、という発想です。
ただし現時点では発売時期も価格も決まっていません。Roborockは開発中の実製品と説明しており、展示会で動く姿を見せる段階にとどまります。この機体は今年1月のCES 2026で初公開されており、IFAは欧州のユーザーが実機を目にする最初の機会となりました。
主力ロボット掃除機は36,000Paと8.8cmの段差越えへ
すぐに手に入る側の製品も動きがあります。ローラー式の水拭き機構を積む「Saros 20 Flow」と、薄型を突き詰めた「Qrevo Edge 3 Pro」は、いずれもHyperForceモーターによる36,000Paの吸引力を掲げます。
足回りに使われるのはAdaptiLift Chassis 3.0で、2段重ねの段差なら8.8cmまで乗り越えられるとしています。日本の住宅でも、和室の敷居や玄関まわりの立ち上がりで引っかかる場面は珍しくないので、この数字は実用上の差になりやすいところです。加えてRetractSenseと呼ぶ格納式のセンサー機構により、Qrevo Edge 3 Proはソファやベッドの下、高さ7.95cmの隙間まで入り込めます。
段差を越える力と、低い場所へ潜り込む薄さは本来相反します。センサー塔をしまい込む構造と、必要なときだけ持ち上がる車輪機構を組み合わせることで、両立を狙った設計と言えます。
拭き掃除の側では、水を含ませたローラーを回し続ける方式が主力に上がってきました。従来のモップは汚れを含んだまま床を往復しますが、ローラー式は洗いながら回すため、拭き戻しが起きにくいという考え方です。今回の主力2機種の性格の違いは、ここに現れています。
掃除の対象が水中と芝生へ広がる
今回のIFAでもう1つ目立ったのは、屋内から外へ出た製品群です。
「RockAqua P1」は同社初のプール清掃ロボットです。プールの底面と壁面、水面の境目、そして水深15cmまでの浅い段まで掃除の対象に入ります。吸引能力は毎時6,800ガロン、日本の感覚に直すと毎時約2万5,700リットルです。ゴミを受けるバスケットは4リットルで、180マイクロメートルと70マイクロメートルの2段構えでろ過します。連続稼働は最大3.5時間、充電も3.5時間です。単眼カメラで排水口や階段のような障害物を避け、汚れの多い場所を見つけて重点的に動きます。作業を終えると水面付近まで自分で上がって停止するため、引き上げる手間が減ります。
庭を担当するのが「RockNeo Q2 LiDAR」です。最大800平方メートルの芝生に対応し、境界線を埋めるワイヤーもアンテナも不要としています。SentisphereのLiDARによる環境認識に、カメラを使うReactiVision Fusionの障害物回避を重ねる構成です。刈り取り部は地面の起伏に追従して浮き沈みし、PreciEdgeモジュールにより芝生の縁から3cmの位置まで刈り込めます。
水拭き掃除機の側では、高温スチームと温水を組み合わせた「F25 Ultra Steam Gen 2」と、駆動部を取り外してコードレス掃除機としても使える5-in-1の「F25 Pro Turbo Combo」が並びました。
数字で見る Roborock の現在地
Roborockは、2026年上半期のロボット掃除機ブランド別販売でIDC調べの世界首位を掲げています。製品は170以上の国と地域で販売され、2026年8月時点で3,000万世帯を超える家庭で使われているとしています。本社は北京で、日本を含む6か国に現地法人を置いています。
同社プレジデントのQuan Gang氏は、日々の作業を自動化して顧客に時間を返すことが目的であり、賢いロボットを作ることは手段にすぎないと述べています。家事に費やす1分は家族や好きなことに使えたはずの1分だ、という言い回しです。展示会の場ではReal Madridとの提携にも触れており、通算15回のUEFAチャンピオンズリーグ制覇と36回のリーグ優勝を持つクラブとの組み合わせを、過去の実績に安住しない姿勢の共通点として説明しました。
まとめ
今回のIFAでRoborockが示したのは、段差と水面と芝生という3つの境界を同時に越えようとする姿勢です。すぐ買える主力機は36,000Paと8.8cmの段差越えという足元の性能を固め、その先に階段を登るSaros Roverが置かれています。プールや庭のロボットは日本の住環境にすぐ響くものではありませんが、床以外の場所へ自律清掃が広がる流れ自体は今後の製品構成に効いてきます。Saros Roverの価格と発売時期がいつ示されるのか、そこが次の見どころになりそうです。
