NVIDIAと韓国科学技術院(KAIST)は7月23日、ソウルにAIの共同研究所を設立すると発表しました[1][2]。総額3億ドル(約490億円)規模の協業で、韓国の産業や言語に合わせた「エージェント型AI」の開発を主眼に置きます。サンフランシスコで開かれた「AIサミット」に合わせた発表で、NVIDIAは韓国の大学と世界的なテクノロジー企業が組む初のAI共同研究所だとしています。
韓国向けの「エージェント型AI」を開発する拠点
共同研究所は、KAISTのKim Jaechul AI大学院(ソウル)に置かれます[2]。狙いは、韓国の産業・言語・将来に合わせたエージェント型AI(人間の指示を受けて自律的に一連の作業をこなすAI)のモデルとエージェントシステムを前進させることです[1][2]。
研究所には、NVIDIAのフルスタックのAI技術、オープンモデル群「NVIDIA Nemotron」、そしてNVIDIAのクラウドパートナーが提供する計算資源が持ち込まれ、アジア屈指の研究大学であるKAISTの人材と組み合わされます[2]。
NVIDIAで首席科学者兼リサーチ担当上級副社長を務めるBill Dally氏は「韓国は世界有数の先進的な技術エコシステムを持ち、優れたAI研究者を擁している。NVIDIAとKAISTの共同研究所は、韓国の産業・言語・将来のためのAIモデルとエージェントシステムを加速させる、次のフロンティア研究の土台になる」と述べています[2]。研究所の責任者には、KAISTのKim Jaechul AI大学院に着任予定のHyunwoo Kim氏が就く予定です[2]。
5年で3億ドル、人材の育成と定着に主眼
今回の協業は総額3億ドル規模で、このうち計算資源の提供が当初5年間で年5,000万ドル(約82億円)に上る見込みです[2]。研究者は、韓国内のNVIDIAクラウドパートナーが用意する計算基盤を通じて、最新のNVIDIA製AIインフラに直接アクセスできるとしています[2]。
※1ドル=164円換算(2026年7月24日時点)
金額の大きさに加えて、人材面の仕組みが具体的です。共同研究所は毎年最低10人のKAISTの研究者に資金を提供し、それぞれにNVIDIAでのインターンシップの機会を用意します[2]。さらにNVIDIAは、優秀な韓国人研究者を正社員として採用する計画です[2]。研究資金・インターン・正規雇用を一続きにすることで、韓国のトップ人材が国内で腰を据えて研究に取り組み、産学の橋渡し役として長く働ける道筋をつくる狙いです[2]。
KAISTは韓国の大田(テジョン)に本部を置く1971年設立の国立研究大学で、科学・工学の分野でアジアの上位に数えられ、韓国を代表する科学者や技術者、起業家を多く輩出してきました[2]。
韓国語に最適化したモデルとNemotron
研究所の優先課題の一つが、韓国語や韓国固有の用途に最適化したモデルの開発です[2]。ここでオープンモデルのNemotronを活用し、大学での研究成果を、企業や国家規模のAI導入へとつなげる流れをつくるとしています[2]。
言語や商習慣は国ごとに事情が異なるため、汎用の大規模モデルをそのまま使うよりも、現地のデータや用途に合わせて調整したモデルのほうが実務で役立ちやすい場面があります。学術研究から実運用までを一つの拠点でつなぐ設計は、その調整を継続的に回すための土台と位置づけられます。
サミットとSKとの連携が映す韓国のAI戦略
今回の発表は、サンフランシスコで開かれたAIサミットに合わせて行われました[1]。同サミットには韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領や国内の経済界・研究者が出席し、NVIDIAやパートナー企業と韓国のAI戦略について協議したとされます[1]。NVIDIA創業者兼最高経営責任者(CEO)のJensen Huang氏が前月に韓国を訪問したのに続く動きで、韓国が掲げるフルスタックでのAI基盤・人材の拡充を後押しする内容だと説明されています[1]。
パートナー連携も進んでいます。NVIDIAとSKは6月、AIインフラや個人向けAI、フィジカルAIにまたがるNVIDIAプラットフォーム向けのメモリを共同開発する協業の拡大を発表済みです[1]。SK Telecomも同月、フィジカルAIやロボティクスなどでの革新を支えるAIインフラの構築計画を明らかにしています[1]。今回のKAISTとの研究所設立は、こうした計算基盤・メモリ・人材という複数の層を束ねる韓国の動きの一部といえます。
もっとも、示された投資額や採用計画の多くは今後実行される見通しであり、成果が出るまでには時間がかかります。研究所がどの程度の実績を積み上げるかは、今後の運営を見ていく必要があります。
まとめ
NVIDIAとKAISTは、ソウルに総額3億ドル規模のAI共同研究所を設立します。韓国向けのエージェント型AIとNemotronを軸に、毎年最低10人の研究者への資金提供やインターン、正規雇用を通じた人材育成に主眼を置く点が今回の要点です。サミットやSKとのメモリ共同開発と合わせ、計算基盤から人材までを一体で強化する韓国のAI戦略が背景にあります。投資や採用の多くはこれから実行される段階で、実際の成果は今後の運営次第です。
出典:https://blogs.nvidia.com/blog/ai-summit-korea-partners-and-nvidia/
