Metaは、役目を終えたサーバーから取り外した旧世代のDDR4メモリを、最新のDDR5専用サーバーに組み込んで再利用していると明らかにしました。新旧のメモリを橋渡しするのは、同社が独自に設計したCXL方式の専用チップ「Vistara」です。メモリの価格が世界的に高騰するなか、この仕組みでAI向けの推論サーバーの台数を最大25パーセント減らせるとしており、ハードウェアを買い増さずにコストを抑える工夫として注目されます。
メモリ高騰のなかで浮かんだ「使い回し」という発想
2026年は、AI向けの旺盛な需要がメモリの供給を圧迫し、DRAMの価格を押し上げています。新品のメモリをそのまま増やせば費用がかさむため、Metaは発想を変え、退役したサーバーに残るDDR4メモリを最新機に転用する道を選びました。
通常、世代の異なるDDR4とDDR5を1台のマシンで混在させると、互換性の問題や大きな遅延が生じます。Metaはこの壁を、独自のCXL 2.0対応ASIC「Vistara」で乗り越えたと説明します。CXL(Compute Express Link)は、PCIeの配線を使ってCPUとメモリなどを高速につなぐ規格で、メモリの拡張や共有に向いた技術です。今回の成果は、コンピューターアーキテクチャの国際会議ISCA 2026で今週公開された技術文書で明らかになりました。
新旧メモリを共存させる「Vistara」の仕組み
Vistaraの肝は、遅いDDR4を無理に速いDDR5と同列に扱わない点にあります。Metaはソフトウェア側で、CXL経由でつないだDDR4を「CPUを持たない独立したNUMAノード」として扱い、CPUに直結したDDR5の領域とは切り離して管理しています。NUMAとは、CPUから見たメモリの近さ(アクセスの速さ)に差がある構成を指す考え方です。
この切り分けによって、頻繁に使うデータは高速なDDR5に置き、あまり触られない「冷たい」データは低速なDDR4に回すという振り分けが可能になります。性能を大きく損なわずに、余っていたメモリを有効活用できるという理屈です。Metaは、公式にはDDR4を想定していないプラットフォームで旧DIMMを動かすため、LinuxのCXLドライバーにも手を入れており、そのコードはすでに本流に取り込まれているか、近く追加される見込みだとしています。
Vistara自体の仕様も具体的に示されています。CXL 2.0/1.1準拠のPCIe Gen5 x16インターフェースでDDR4メモリをホストのプロセッサへ橋渡しし、制御には独自のRISC-Vプロセッサを用います。1チップあたり72ビットのDDR4チャネルを2系統内蔵し、最大3,200MT/sの速度、64GBのDIMMを使えば最大256GBの容量に対応します。
サーバー構成と削減効果
この技術を載せた新型サーバー「MemServer」は、AMDのEpyc Turinを採用し、158コア・316スレッドという規模を備えます。Turinは仕様上DDR5専用ですが、Vistaraを介することでDDR4も接続できるようにしたわけです。
1台あたりのメモリは合計1TBで、内訳はCPU直結のDDR5-6400が768GB、CXL経由でつないだDDR4-2400が256GBという構成です。Metaによれば、この方式でAI推論用サーバーの台数を最大25パーセント削減し、ジョブの再起動やメモリの断片化にともなう余分な処理も33パーセント抑えられたとしています。
もっとも、これらの削減率はMetaが自ら公表した数値です。実際の効き目は扱うモデルや負荷の条件によって変わるため、第三者による検証もあわせて見ていく必要があります。
同じ課題に挑む企業も
新旧メモリの共存に取り組むのはMetaだけではありません。韓国のファブレス半導体企業Panmnesiaも、独自のCXLコントローラーと、経路制御に対応したCXLファブリックスイッチを開発し、ISCA 2026で6月29日に研究を発表しています。同社はPCIe 6.4/CXL 3.2対応の「Fusion Switch」を一部顧客向けにサンプル出荷しており、さらに最新のCXL 4.0機能に対応するPCIe 7.0/CXL 4.0のコンボIPコントローラーも開発中だとしています。メモリ調達の負担を軽くする手段として、CXLを軸にした工夫が業界全体で広がりつつある様子がうかがえます。
まとめ
Metaは、退役サーバーに眠るDDR4を専用チップVistaraとOSレベルの制御で呼び戻し、性能への影響を抑えつつメモリコストを圧縮しました。メモリ不足が続くAI時代にあって、CXLを使った既存資産の再利用は、ハードウェアの経済性を左右する現実的な一手になりつつあると言えそうです。
