NVIDIAは9月22日から23日にシンガポールで開催した「AI Day Singapore」にあわせ、東南アジア各国でのAI導入事例を相次いで発表しました。なかでも注目を集めたのが、Shopee・Garena・Moneeを運営するSea Limitedが、次世代プラットフォーム「Vera Rubin」を東南アジア企業として初めて採用したというニュースです。

Vera Rubinとは

Vera RubinはNVIDIAが「Blackwell」の後継として投入した最新のAI基盤で、2026年後半から順次初号機の出荷が始まっています[2]。データセンター向けの「DGX Vera Rubin NVL72」構成では、72基のNVIDIA Rubin GPUと36基のNVIDIA Vera CPUを組み合わせ、20.7TBのHBM4メモリを1,400TB/sの帯域幅で接続します[3]。9基のNVLinkスイッチによって72基のGPUを1つの巨大な演算資源として扱えるのが特徴で、NVFP4形式の推論性能は3,600PFLOPSに達するとされています[3]。AIモデルの学習だけでなく、複数のAIエージェントが自律的に連携する「エージェント型AI」の実行基盤としての性能を重視した設計です。

Sea Limitedが東南アジア初の採用企業に

Sea Limitedはシンガポールに本拠を置く総合テクノロジー企業で、数億人規模のユーザーを抱えるEコマース「Shopee」、ゲーム・エンターテインメント事業「Garena」、デジタル金融サービス「Monee」の3事業を展開しています[1]。今回の採用により、Sea LimitedはVera Rubinを導入する東南アジア初の企業となりました[1]。契約金額などの財務条件は公表されていません[2]。同社はこの投資を、事業全体をAIネイティブな組織へ転換する取り組みの一環と位置づけているとされています[2]

Shopee・Garena・Moneeでの活用計画

Shopeeでは、出品者が商品ページを作成する手間を減らすAIツールや、商品の検索性向上、購入者とのやり取りを支援する仕組みにAIを活用しています[1]。ある報道では、こうした施策が第1四半期の購入転換率を前年同期比で14パーセント押し上げたと伝えられています[2]。Moneeでは、トランスフォーマー型のAIモデルを不正検知や与信審査に応用しており、同じ報道によれば、リスク水準を維持したまま融資の承認率を約10パーセント改善したとされています[2]。Garenaでは、チームが開発したAIチャットボットやワークフロー、ゲーム内コンパニオンなどが1,300件を超える規模で稼働しているとも報じられており、ゲーム体験の向上に役立てられています[2]。NVIDIAは、こうした基盤を活用することで、従来は大企業に限られていた高度な演算資源へ中小規模の事業者もアクセスできるようになる点を強調しています[1]

AI Day Singaporeが映す東南アジアのAI競争

AI Day Singaporeでは、Sea LimitedのVera Rubin採用以外にも、シンガポールの公共機関HTXやNCS、ST Engineeringがオープンモデル「NVIDIA Nemotron」を治安・防災用途で試験導入する事例や、マレーシアのYTL AI Labs、ベトナムのViettel AIが自国語向けにNemotronをファインチューニングする取り組みが紹介されました[1]。各国がAIを国家戦略と位置づけ、実証段階から実運用へ移行しようとする流れのなかで、民間企業側でもSea Limitedのように最新世代の計算基盤へ先行投資する動きが出てきたことになります。

まとめ

NVIDIAのVera Rubinは、Blackwellの後継として演算性能とメモリ帯域を大きく引き上げた最新のAI基盤です。東南アジアで最初にこれを採用したSea Limitedは、Shopee・Garena・Moneeという性格の異なる3事業すべてにAIを組み込む計画を進めており、その成果は今後の東南アジアAI市場全体の動向を占う材料としても注目されそうです。

出典 [1]: https://blogs.nvidia.com/blog/ai-day-singapore/

出典 [2]: https://technode.global/2026/09/23/singapores-sea-ltd-becomes-first-in-southeast-asia-to-adopt-nvidia-vera-rubin/

出典 [3]: https://www.nvidia.com/en-us/data-center/dgx-vera-rubin-nvl72/