ソニーが、レンズ一体型の高倍率ズームカメラ「RX10 V」を発表しました。1台で広角24mmから超望遠600mmまでをカバーする構成はそのままに、AIを使った被写体認識オートフォーカスや最大4K120pの動画記録など、上位ミラーレス「Alpha(α)」シリーズ譲りの機能を取り込んだのが今回の刷新点です。前モデルのRX10 IVは2017年の登場で、シリーズの更新は約9年ぶりとなります。希望小売価格は米国で2,299ドル99セント、発売は2026年8月を予定しています。

1台で24-600mmをカバーする万能ズーム

RX10 Vの最大の特徴は、レンズを交換せずに広角から超望遠までを1台でまかなえる点です。搭載するのはZEISS(ツァイス)ブランドの「Vario-Sonnar T*」レンズで、35mm判換算の焦点距離は24mmから600mm、光学ズームでは25倍に相当します。開放F値はF2.4-4.0と、この画角域を1本でカバーするレンズとしては明るい部類に入ります。手ブレを抑える光学式の補正機構も内蔵し、望遠側で起きやすい画面の揺れを軽減します。

センサーは有効約2010万画素の1.0型積層型「Exmor RS」CMOSを採用します。1.0型はスマートフォンのセンサーより大きく、背景を自然にぼかしやすいサイズです。画像処理エンジンには上位機と同じ「BIONZ XR」を積み、中〜高感度でのノイズを抑えながら、肌の色や空、緑の質感を高い解像感で残せるとしています。広角側では被写体に約3cmまで寄れるマクロ撮影にも対応し、花や小物の接写までこの1台でこなせます。

AIを使った被写体認識と高速連写

今回の刷新でソニーが強調するのが、AI処理による「リアルタイム認識AF」です。人物や動物、鳥、昆虫のほか、車・列車・飛行機まで自動で見分けて追い続ける仕組みで、被写体の種類を自動で判別するモードも備えます。人物については姿勢を推定して追尾するため、後ろを向いたり、ヘルメットやサングラスで顔が隠れたりしても捉え続けやすくなっています。

連写性能も強化しました。撮影中も画面が暗転しない「ブラックアウトフリー」の連続撮影に対応し、最大で毎秒30コマ、ピント合わせと露出調整(AF/AE)は毎秒最大60回まで追従します。動きが速く予測しづらい野生動物やスポーツでも、ピントを外しにくいのが利点です。連写の途中でさらに速度を上げられるブースト機能も用意しました。

動画は4K120pに対応、Alpha譲りの操作性

動画は最大4K120pで記録でき、最大5倍のスローモーション表現にも対応します。手持ち撮影のブレを抑える「アクティブモード」の電子手ブレ補正や、被写体を画面の中央に収め続ける「オートフレーミング」も備えます。色づくりでは、そのまま映画的な発色になる「S-Cinetone」や、撮影後の色補正(カラーグレーディング)を前提とした「S-Log3」に対応し、最大16個までのユーザーLUT(色の設定ファイル)を読み込めます。

操作系はAlphaシリーズの握り心地とボタン配置を受け継ぎ、ファインダーをのぞいたままでも扱いやすい8方向のマルチセレクターを搭載します。ファインダーは約368万ドットの0.5型有機ELで、背面モニターは約162万ドットに向上しました。電池は大容量の「NP-FZ100」を使い、静止画は1回の充電で約630枚(背面モニター使用時)と、前モデルよりおよそ50パーセント多く撮影できます。防じん・防滴に配慮した設計や、Wi-Fi(2.4GHz/5GHz)、高速転送に対応するUSB Type-Cも押さえています。

価格と発売時期

RX10 Vの希望小売価格は米国で2,299ドル99セント(約37万円)、カナダで2,899ドル99セントで、いずれも2026年8月の発売を予定しています。日本での価格や発売時期は、今回の発表時点では明らかにされていません。※1ドル162円換算

コンパクトなカメラとしては高価な部類ですが、レンズ交換なしで広角から超望遠までをカバーできる手軽さと、AI認識AFによる追尾性能を1台に凝縮している点が、この価格の根拠と言えそうです。一方で、センサーの有効画素数は約2010万画素と前モデルから据え置かれており、解像度そのものの底上げよりも、AFや動画といった「撮り逃さない」性能の強化に振った刷新である点は、購入前に押さえておきたいところです。

まとめ

RX10 Vは、24-600mmの万能ズームと1.0型センサーというRX10シリーズの持ち味を保ちつつ、AIによるリアルタイム認識AFや最大4K120pの動画、Alpha譲りの操作性を取り込んだ約9年ぶりの刷新機です。画素数は据え置きで価格も安くはありませんが、レンズ交換の手間なく旅先や野鳥・スポーツの撮影を1台で完結させたい人にとっては、有力な選択肢になりそうです。