中国のCPUメーカーであるZhaoxin(兆芯)が、上海で開かれた情報技術応用イノベーション産業の発展フォーラムで、自社命令セット「ZX86」を土台としたAI向け計算基盤を披露しました。サーバー向けの開勝KH-50000とPC向けの開先KX-7000を軸に、AIサーバーからAI端末までを1つの体系で揃えたのが今回の主張です。パートナー各社の実機も並び、国産CPUがAI用途でどこまで実運用に近づいたのかが見える内容になっています。
上海のフォーラムでAI向けの立ち位置を示す
このイベントは、2026年の上海情報技術応用イノベーション産業発展フォーラムのAIイノベーション分科会として開かれたものです[1]。国産の計算基盤、自主開発の大規模言語モデル、AIエージェントといったテーマが議論の中心に置かれ、Zhaoxinは上海に拠点を置く国産演算チップの担い手として、ZX86プロセッサのAI分野での取り組みを紹介しました。
会期中には、上海の国有資産系企業向けサービス窓口である上海国資信創実験室の2.0版も発表されています[1]。ZX86の演算能力を基盤に、複数種類のチップを同一クラウド上で扱う体制を通信事業者と共同で構築し、適合性認証のワンストップ提供、デジタル化支援、ローコード開発とエージェント活用、オープンソースコミュニティという4つの柱でサービスを提供するとしています。あわせて、応用パートナーと演算基盤パートナーの戦略提携の調印式も行われました。
ZX86命令セットという土台
Zhaoxinが繰り返し強調しているのが、ZX86という自主命令セットの体系です[1]。同社はこれを「自主でありながら閉じない、互換性を保ちながら依存しない、新しい用途に向き合う」という言い方で説明しています。x86系との互換を保ったまま知的財産の体系を自前で構築することで、後続のCPU製品と応用を自力で改良し続けられる、という主張です。
この土台の上に、サーバー向けの開勝KH-50000とPC・組み込み向けの開先KX-7000を置き、クラウドからエッジ、端末までを一続きの製品群として扱う構成になっています[1]。AIの計算需要が端末側の推論からデータセンターでの学習まで幅広く散らばるなかで、国産GPUやAIアクセラレータ、大規模モデル、データベースといった周辺の製品群に対応できることを、販売担当の副総経理である陳暁旻氏が円卓討論で説明しています。
96コアのKH-50000と2倍速のKX-7000
サーバー側の主役である開勝KH-50000は、Chiplet(複数のチップを1つのパッケージにまとめる設計手法)を採用したプロセッサです[2]。1個あたり最大96コア96スレッドを集積し、基準周波数は2.2GHzまたは2.6GHz、最高動作周波数は3.0GHzとなります。3次キャッシュは最大384MB、メモリーは最大12チャネルのDDR5 RDIMMに対応し、容量は最大3TBです。入出力は最大128レーンのPCIe 5.0とZPI、CXLに加えて、16レーンのPCIe 4.0を備えます。中国の国家暗号規格であるSM2、SM3、SM4の高速化命令にも対応します。
拡張面では2ソケットと4ソケット構成に対応し、1台のサーバーで最大384コアという計算密度になります[2]。世代を新しくしたZPI 5.0による相互接続で、帯域を広げつつ遅延と消費電力を抑えたと説明されています。
PC側の開先KX-7000は、自社開発の「世紀大道」マイクロアーキテクチャとChiplet接続を採用しています[3]。最大128GBのDDR5/DDR4メモリー、24レーンのPCIe 4.0、USB4やSATA3といった入出力に対応し、GPUを内蔵してDX12と4K映像の2系統同時デコードを扱えます。演算性能は前世代比で2倍、グラフィック性能は4倍に達するとしています。
パートナーの実機で見せた端末側AI
フォーラムでは、Zhaoxinのチップを使ったパートナー各社の製品も並びました[1]。目を引くのは、KX-7000を搭載したLenovo(聯想)開天のAI端末です。容積1リットルという小型筐体でありながら、1リットルあたり640TOPSという演算密度を実現し、主要なローカル大規模モデルをそのまま動かせるとしています。
サーバーとワークステーションでは、KH-50000を2基積んだLenovo開天のKR722z G3や、大容量ストレージ向けの機種、国産GPUを組み合わせたAIサーバーなどが展示されました[1]。人民網と信投智科によるAI一体型機は、ZX86のCPUに中国製GPUを組み合わせ、麒麟OSと国産ミドルウェアの上に自社の大規模モデルを載せる構成で、公文書やレポートの起草から校閲、管理までを一貫して扱う用途を想定しています。液冷方式のAI推論ワークステーションのように、静音性と設置のしやすさを求める官公庁や企業のオフィス向けに振った製品も出ていました。ZTEやSeewo(希沃)などのパートナーからは、ZX86搭載のAI PCやノートPC、電子黒板なども展示されています。
もっとも、今回示された内容は展示とフォーラムでの説明が中心で、第三者による性能検証や実際の導入規模を示す数字は公表されていません。国産化の要請が強い分野で採用が広がっているのは確かですが、汎用市場での競争力をどう見るかは、今後の独立したベンチマークや採用実績を待つ必要があります。
まとめ
Zhaoxinは、自主命令セットのZX86を軸に、96コアの開勝KH-50000から小型AI端末向けの開先KX-7000までを一続きの製品体系として整えつつあります。今回の上海のフォーラムでは、パートナー各社のサーバー、ワークステーション、AI PCといった実機を通じて、その広がりを示す形になりました。第三者検証の乏しさという課題は残るものの、中国の国産演算基盤がAI用途でどこまで手が届くのかを測るうえで、注目しておきたい動きです。
出典:https://www.zhaoxin.com/news_view.aspx?nid=2&typeid=289&id=2051
出典:https://www.zhaoxin.com/prod_view.aspx?nid=3&typeid=605&id=3601
出典:https://www.zhaoxin.com/news_view.aspx?nid=2&typeid=283&id=1857
