株式会社Jizaiが、卓上型のAIロボット開発キット「Palmimo DevKit」の先行販売を9月3日に始めました。6本の脚と首を合わせて21軸を持つ本体を、数行のPythonから動かせるのが特徴です。LLMのtool callをそのままロボットのふるまいに接続する実装が同梱され、ソフトウェアは順次オープンソースとして公開されます。先行価格は598,000円(税別)です。

数行のPythonで手を振らせる

Palmimo DevKitは、Jizaiが開発する汎用AIロボット「Palmimo」を卓上サイズにまとめ、利用者自身のコードでカスタマイズできるようにした開発キットです。Palmimoは2025年1月のCES 2025で「Mi-Mo」の名で公開された機体が原型で、今回の改称とあわせて開発者向けの製品として整理されました。

売りは、ロボティクスの前提知識が無くても動かせる点にあります。手を振る、歩く、首を向けるといった動作は、Pythonのメソッドを1つ呼ぶだけで実行できます。公式が示すサンプルでは、SDKをimportしたうえで robot.wave() や robot.look(pitch=0.3, yaw=0.5) と書き、さらに前進・ダンス・おじぎのような振り付けを秒数付きのリストで渡して連続再生させています。

from palmimo_sdk import Palmimo

robot = Palmimo()
robot.wave()                    # 手を振る
robot.look(pitch=0.3, yaw=0.5)  # 首を向ける

ソフトウェアは4層に整理されています。利用者が書くコードが最上位にあり、その下に robot.forward() のような呼び出しを受けるSDK、さらに下にドライバ抽象レイヤー、最下層が21軸の実機です。ドライバ層を差し替えるだけで実機とdry-runモードを行き来できるため、本体が届く前にモーションAPIを一通り試せます。シミュレータのような新しいバックエンドも、この層につながる設計です。

頭脳はRaspberry Pi 5、身体は21軸のサーボ

本体の外形寸法は400×300×300mm、質量は約2kgです。自由度は21軸で、内訳は脚が3軸×6本の18軸と、首の3軸になります。アクチュエータにはDYNAMIXEL XC330-M288-Tを21個使い、駆動電圧は5Vです。

計算機はRaspberry Pi 5の16GBメモリ版をオンボードで搭載し、サーボとはUSB経由のシリアル通信(1Mbps)でつながります。OSはRaspberry Pi OSの64bit版で、Python 3.12以降とPython SDKが動作環境です。顔にあたる部分には2.8インチの円形タッチディスプレイ(480×480、RP2350)が入り、表情を表示します。

センサー類は5MPのUSBカメラ、ReSpeakerのマイクアレイ、3Wのステレオスピーカーという構成です。電源はDC5Vアダプタに加えてRaspberry Pi用の27W USB PDを併用し、通信はWi-Fi、Bluetooth 5.0、USBに対応します。天板に木を使ったデザインで、生活空間に置いても機械然としすぎないようにまとめられています。

ソフトウェアから順にオープンソース化

Jizaiは、Palmimo DevKitを閉じた製品ではなく共創型のプラットフォームとして位置づけています。先行販売の開始に合わせて、Python SDK、ドライバ、AIエージェント実装といったソフトウェアからオープンソースとして公開を始め、シミュレーション用のロボットモデルを含む開発スタック全体へ公開範囲を広げていく方針です。リポジトリはGitHubに置かれ、開発ドキュメントも公開されています。

AIエージェント関連では、LLMのtool call、つまりモデルが関数を呼び出す仕組みを、そのままロボットの行動に接続する実装が同梱されます。頭脳となるAIモデルは差し替えが可能で、API、MCP、SDKを介して自社のデータやサービスとつなぐこともできます。同社が示すエージェントの動作例は、来客が手を振っているのを見て、あいさつを返そうと判断し、wave() と発話を実行するという、見る・考える・動くの一連の流れです。

背景としてJizaiが挙げるのは、フィジカルAI(身体を持って現実世界で動くAI)に向かう流れが世界中で加速している一方、オープンなロボットや開発ツールの多くが海外発である点です。ソフトウェアとハードウェアの両方を扱える人材を増やすことが必要だとして、日本で設計から開発まで手がけた製品として投入されました。

価格と提供形態

先行販売の対象は、開発者・研究者にあたるEarly Buildersと、PoCやサービス開発に取り組む事業会社・研究機関にあたるEarly Partnersです。本体価格は598,000円(税別)で、組立と検査を終えた完成品として届きます。月額費用は不要で、初期不良に対する30日間の初期保証が付きます。

これとは別に、Jizaiのメンバーが並走するカスタムサービスも用意されます。開発力のある企業向けにハードウェアと技術支援だけを提供する伴走型、アプリ開発から運用までを引き受けるフルサポート型、研修や技術レクチャーを単発で行うスポットの3種類で、料金は内容に応じた個別見積です。

想定される使い道として挙げられているのは、AIコンパニオンや人とロボットのインタラクション研究、オフィスや店舗での受付・案内のPoC、Sim2RealやVLAファインチューニングといったロボット学習の実験、大学や企業でのフィジカルAI人材育成、そして複数台を連携させたサービス設計です。実機は日本科学未来館1階のTokyo Mirai Parkで、東京都主催の展示企画「未来の1日」の一部として9月23日まで体験展示されています。

なお、価格は法人・研究機関向けの本体価格であり、初期ロット分の提供内容です。以降のロットでは提供形態が変わる可能性があるとされているため、購入を検討する場合は現時点の条件がそのまま続くとは考えないほうがよさそうです。仕様も改良のため予告なく変更される場合があるとされています。

まとめ

Palmimo DevKitは、21軸の脚と首を持つ卓上サイズのAIロボットを、Pythonのコード数行から動かせる開発キットです。Raspberry Pi 5とDYNAMIXELサーボで構成され、LLMのtool callを身体のふるまいに接続するエージェント実装が同梱されます。ソフトウェアはSDKやドライバから順にオープンソースとして公開され、シミュレーション環境まで範囲を広げる予定です。先行価格は598,000円(税別)で、対象は開発者・研究者と、実証に取り組む企業・研究機関に絞られています。