中国の半導体メーカーZhaoxin(兆芯)が自社開発したサーバー向けCPU「開勝 KH-50000」が、2026年(第3回)「金霊光杯」中国インターネット創新大会で、専門部門の一等賞と総合決勝の金賞を同時に受賞しました[1]。単一ソケットで96コアを詰め込み、12チャネルのDDR5と128レーンのPCIe 5.0を備える、中国国産サーバーCPUの現時点での旗艦モデルです。
「金霊光杯」で2つの賞を同時に獲得
受賞したのは、中国インターネット協会が主催する「金霊光杯」中国インターネット創新大会の第3回大会です。同大会は中国のデジタル技術分野で権威のあるコンテストとされ、優れた科学技術プロジェクトの発掘を目的に開催されています[1]。
KH-50000は、情報技術応用イノベーション部門の一等賞と、総合決勝の金賞という2つの賞を同時に手にしました。決勝の審査には、中国で最高位の学術称号にあたる院士6名が招かれており、Zhaoxinは技術的な自立性と製品としての総合力、産業面での価値が評価されたと説明しています[1]。
KH-50000の受賞はこれが初めてではありません。2025年の「人民匠心産品」、2026年の「中国IC設計成就賞・年度プロセッサ」に続く受賞で、中国国内では国産サーバーCPUの看板役として扱われている製品です[1]。
単一ソケット96コア、4ソケットで384コアまで
KH-50000の中身を公式スペックで見ると、サーバー向けとしてかなり本格的な構成になっています。コア数は96コア、72コア、64コア、48コアの4種類が用意され、いずれも同時マルチスレッド(SMT)には対応せず、コア数とスレッド数が一致します[2]。
96コア版のベースクロックは2.2GHzで、72コア版以下は2.6GHzです。最大動作クロックはいずれも3.0GHz、3次キャッシュは96コア版と72コア版が384MB、64コア版が256MB、48コア版が128MBという構成になっています[2]。
メモリは12チャネルのDDR5-5200 RDIMMに対応し、ECC付きで最大3TBまで搭載できます。拡張インターフェースは128レーンのPCIe 5.0に加えて16レーンのPCIe 4.0を備え、PCIe 5.0側はCXL 2.0にも対応します。USB 3.2 Gen2が4ポート、SATA 3.2が12ポートという内訳です[1][2]。
さらに、自社開発の相互接続技術を使った2ソケットおよび4ソケット構成に対応しており、1台のサーバーに4個のKH-50000を載せれば合計384コアに到達します[1]。パッケージはLGAで、サイズは72mm×76mmと大柄です[2]。命令セットはx86および64ビットに対応し、拡張命令はSSE4.2、AVX、AVX2までをサポートします[2]。AVX-512が入っていない点は、用途によっては効いてくる部分でしょう。
暗号アルゴリズムをハードウェアに埋め込む
KH-50000でZhaoxinが前面に出しているのが、セキュリティ機能の作り込みです。中国の国家暗号標準であるSM2、SM3、SM4、SM9などのアルゴリズムを加速する命令を自社で実装し、暗号処理をCPUのハードウェアに直接組み込んでいます[1]。
加えて、セキュアブート、鍵管理、メモリ全体のハードウェア暗号化、トラステッドコンピューティング、コンフィデンシャルコンピューティングといった機能に対応します。暗号モジュールとしては中国の規格であるGM/T 0012-2020の要件を満たす形で設計されており、行政や金融のようにデータの取り扱いが厳しく規定される分野を明確に狙った構成です[1]。
ZX86という独自路線と、広がりつつある採用先
Zhaoxinは自主開発の汎用プロセッサに10年以上取り組んできたメーカーで、命令セット、コアのマイクロアーキテクチャ、高速インターコネクト、高性能IPなど11項目の中核技術を自社で握っているとしています。同社はこれを「ZX86」という独自の知的財産体系としてまとめ、自主性を保ちながらも互換性を捨てないという方針を掲げています[1]。
KH-50000はすでに、中国国内の主要なサーバー向けOS、クラウド基盤、データベース、AIハードウェアとの適合検証を終えています。前世代のサーバーCPUと比べ、データベース処理、クラウドデスクトップ、AIの学習と推論といった場面で性能が大きく向上し、1台で1000万IOPS規模を支えられるとしています[1]。
採用も広がっており、Lenovoの開天ブランドやZTE、Unisplendour(紫光)といったパートナーが、AIサーバー、汎用サーバー、高密度ストレージサーバー、AIワークステーションなど複数の形態の製品を投入済みです。行政、金融、教育、エネルギー、電力、交通、通信、医療といった分野が想定される導入先として挙げられています[1]。
まとめ
KH-50000は、96コアと384MBの3次キャッシュ、12チャネルDDR5、128レーンのPCIe 5.0という、国際的な主力サーバーCPUを正面から意識した仕様でまとめられた製品です。今回の「金霊光杯」での2冠は、その仕様と中国国内での実装実績が評価された結果と言えます。日本国内で手に入る類の製品ではありませんが、x86互換の系譜から中国独自のサーバーCPUがどこまで積み上がってきたかを測る材料としては、押さえておく価値のある1本です。
出典[1] https://www.zhaoxin.com/news_view.aspx?nid=2&typeid=289&id=2063
出典[2] https://www.zhaoxin.com/prod_view.aspx?nid=3&typeid=605&id=3601
