BVIO Technologyが、ベルリンで開催中のIFA 2026で手のひらサイズのAI機器「Violoop」を初公開しました。PCとモニターの間にHDMIとUSBで割り込ませると、画面の内容を機器側で読み取り、キーボードとマウスとして人の代わりにアプリを操作します。8BのモデルとAIアクセラレータを内蔵し、生の画面映像を外に出さない設計が特徴です。9月15日にKickstarterで支援募集を始め、出荷は10月からの予定です。

画面を「見て」、キーボードとして「動く」

Violoopの仕組みは、PC側にソフトを入れないという点でこれまでのAIエージェントと大きく異なります。PCの映像出力をHDMIで機器に通し、機器はその映像をHDMI 2.0の4K/30Hzで取り込んで解析します。操作は、USBで接続した際に標準的なキーボードとマウス(USB-HID)として認識される経路を使い、人が手で入力するのと同じ形でPCに指示を送ります。

ドライバーの導入も設定変更も不要で、PCから見ればただの入力機器がつながっているだけです。このためWindows、macOS、Linuxのどれでも動作し、モニターは2台まで対応します。機器本体にはAMOLEDのタッチ画面が載っていて、進行中の作業や承認待ちの内容を手元で確認できます。音声での指示にも対応します。

使い方は3通りに整理されています。1つ目は、画面の文脈から次の操作を提案し、Tabキーで受け入れる即時モードです。2つ目は、複数のアプリをまたぐ長い作業をまとめて任せるモードで、ブラウザ、文書、表計算、メール、社内システムといったAPIのないソフトでも、画面に映っていれば操作対象になります。3つ目は「Away Mode」で、PCの画面をロックして席を離れても作業が続き、確認が必要になるとスマートフォンのアプリに通知が届きます。

BVIOは、顧客からの注文メールを受け取ってから、顧客情報を調べてCRMを更新し、返信の下書きをモデルに書かせてメールアプリに戻すまでを1つの流れとして処理する例を挙げています。実行の経路も一律ではなく、スクリプトやAPIが使える場面ではそれを直接使い、次にキーボードショートカット、アクセシビリティの操作、最後にGUIのクリックという順で、速く確実な方法から順に試す設計だとしています。学習には200を超えるアプリと1万を超える実際のソフトの画面が使われたとのことです。

8Bモデルを内蔵し、Mac mini M4より速いと主張

本体はRockchipのオクタコアSoC「RK3576」と、26 TOPSのAIアクセラレータを組み合わせた構成です。メモリは8GBのLPDDR4Xと5GBの3D積層DRAMで合計13GB、ストレージは128GBのeMMC 5.1です。Wi-Fiは2.4GHzと5GHzの802.11ac/axに対応し、Bluetooth 5.2も備えます。サイズは90×92×80mm、重さは450gで、電源は12Vです。

この構成で、Qwenの8Bモデル(4bit量子化)を機器内で完結して動かします。BVIOの計測では、同じモデルと精度をOllamaで動かした場合、Mac mini M4(16GB)が毎秒20トークンなのに対し、Violoopは毎秒53トークンで、2.7倍の速さになるとしています。簡単な質問や調べ物はこのローカルモデルが処理するため、クラウドに送るトークンを最大90パーセント減らせるという説明です。

大きなモデルが必要な作業では、ClaudeやOpenAI、Gemini、CodexといったサービスのAPIキーを自分で持ち込んで使います。日常的な処理は機器内、専門的な処理は適したモデル、より強力なクラウドは本当に必要なときだけ、という振り分けを機器側の経路制御が担います。その際もクラウドへ送るのは必要な文脈を文字に要約したものだけで、画面の映像そのものは配信しない仕組みです。

承認ボタンはAIとは別のチップにつながっている

Violoopがもっとも力を入れているのが、AIに「勝手に実行させない」ための作りです。PCへの操作を担うUSB-HIDは、STMicroelectronicsのマイコン「STM32H563」を専用のセキュリティ処理として切り出して制御しています。本体の物理的な承認キーはこのセキュリティ側のチップに直結しており、AI側のソフトウェアやPC上のプログラムから押したことにはできません。AIが準備し、別のチップが決裁するという2チップ構成です。

Away Modeで確認が必要な操作に当たった場合は、作業をいったん止めてスマートフォンのアプリに承認依頼を送り、許可が出るまで再開しません。作業の手順や好み、アプリ間の受け渡しといった学習内容は機器内に保存され、設定で有効にしないかぎりモデルの学習には使われないとしています。

価格は699ドル、Kickstarterの早期価格は399ドル

Kickstarterでの募集開始は2026年9月15日で、想定小売価格は699ドル(約10万8,000円)です。早期支援者向けの価格は399ドル(約6万2,000円)からで、300ドル(約4万6,000円)の割引になります。出荷は2026年10月に始まる予定です。公式サイトでは返金可能な10ドルの事前予約も受け付けており、こちらを経由するとさらに30ドル引きの369ドル(約5万7,000円)からになるとしています。BVIOは今回の発表に先立ち、2,000万ドル(約31億円)のシード資金を調達しています。

※1ドル155円換算(2026年9月4日時点)

まとめ

Violoopは、PCの中にAIを入れるのではなく、PCの外側に「もう1人の利用者」を置くという発想の機器です。HDMIで画面を見てUSBで手を動かす仕組みなので、OSやアプリを選ばず、APIのない古いソフトまで操作対象に入ります。8Bモデルの内蔵と、AIとは別のチップに直結した承認ボタンで、速さと安全側の歯止めを両立させようとしている点は他のAIエージェント製品にない切り口です。一方で、画面認識の精度やクラウドとの連携がどこまで実用になるかは、10月に出荷が始まってからの評価を待つ必要があります。