NVIDIAは、台湾・台北で開催した「GTC Taipei」の基調講演で、AIデータセンター向けの新しいCPUとGPUを組み合わせたプラットフォーム「Vera Rubin」のフル生産を始めたと発表しました。あわせて、AIデータセンターそのものの設計をまとめてパッケージ化した「NVIDIA DSX AI Factory Platform」も公開しています。サーバーやラック単位にとどまらず、施設まるごとの設計にまで踏み込んだ提案で、AIインフラの作り方そのものを変えようという狙いが見えてきます。

「Vera Rubin」とは何か

今回の発表は、CEOのジェンスン・フアン氏が台北音楽中心(Taipei Music Center)で行った基調講演の中で明らかにされました。NVIDIAは近年、COMPUTEXに合わせた台北での講演でデータセンター向けAIの重要な発表を重ねており、今年もその舞台が使われた形です。

Vera Rubinは、2024年のCOMPUTEXで初めて公開された、AIファクトリー(AI処理に特化したデータセンター)向けの次世代CPU「Vera」とGPU「Rubin」を組み合わせたプラットフォームです。フアン氏は、このVera Rubinのフル生産が始まったことを明らかにし、出荷に向けた準備が予定通り進んでいると説明しました。開発中の製品が「量産段階に入った」というのは、実際に世界のデータセンターへ届き始める時期が近いことを示す節目と言えます。

AI推論に振り切った「Vera」CPU

講演でフアン氏が特に時間を割いて語ったのが、自社設計のCPU「Vera」です。

従来のCPUは、処理を並行してこなすためにコア数を増やす方向で進化してきました。これに対してVeraは、データのやり取りにかかる待ち時間の短さ、つまり低遅延を重視した設計になっているといいます。土台となるのは自社開発の「Olympus Core」で、フアン氏はこの設計がAI推論(学習済みのAIが実際に答えを出す処理)に最適だと強調しました。

具体的な優位性として示されたのが処理速度の比較です。データベース操作に使うSQLの処理はx86プロセッサに比べて約3倍、刻々と流れ込むリアルタイムのストリーミングデータの処理では約6倍高速だとしています。AIエージェントのように、CPUとGPUを効率よく行き来しながら自律的に動くAIが増えるほど、こうした低遅延設計の価値が効いてくるという理屈です。

データセンターを丸ごと設計する「DSX」

もう一つの目玉が、NVIDIA DSX AI Factory Platformです。

世界各地で建設が進むAIファクトリーは、AIの学習や推論に特化した新しいタイプのデータセンターで、従来型とは求められる設計が大きく異なります。規模によってはギガワット級の電力を必要とし、800VのDC(直流)給電に加え、バッテリーやキャパシタによる安定した電力供給も欠かせません。さらに液冷を前提とした熱設計のため、水回りまで含めた作り込みが必要になります。

DSXは、こうしたAIファクトリーの設計手法や必要な素材の手配方法といったノウハウをまとめて提供する仕組みです。NVIDIAはこれまで、サーバー機の「DGX」から始まり、ラック単位の設計を示す「GB200/300 NVL72」や「Vera Rubin NVL72」(72基のRubin GPUと36基のVera CPUを束ねる構成)へと提供範囲を広げてきました。今回のDSXは、その延長線上でデータセンターそのものの設計にまで踏み込んだものになります。

台湾のサプライチェーンが下支え

NVIDIAによれば、Dell Technologies、HPE、Lenovo、Supermicro、ASUS、Foxconn、GIGABYTE、Pegatron、Quanta Cloud Technology (QCT)、Wistron、WiwynnといったメーカーがDSXとVera Rubinを採用し、顧客向けにAIファクトリーを提供していく計画です。名前が並ぶのは台湾を中心とするサーバー製造の主力企業で、NVIDIAの新プラットフォームを実際のモノとして世に送り出す供給網の厚みがうかがえます。

台北での発表が持つ意味も見逃せません。昨年の同じ舞台では、異なるチップ同士をNVLinkでつなぐ「NVLink Fusion」が発表され、それがのちのIntelとの提携へとつながりました。データセンターAIの節目が台北で示される流れは、今年も変わっていません。

まとめ

NVIDIAは、CPUとGPUを組み合わせたVera Rubinの量産開始と、データセンターを丸ごと設計するDSX AI Factory Platformを発表しました。AI推論に最適化したVera CPU、施設全体の設計ノウハウ、そして台湾勢を中心とした供給網という3つの要素がそろい、AIインフラを「部品」ではなく「一式」で届ける体制が整いつつあります。AIエージェントの普及を見据えたこの動きが、今後のデータセンター建設をどこまで加速させるのか注目されます。