NVIDIAが、GPUからストレージへ直接読み書きするための「cuFile」APIと、その下層にあるストレージソフトウェアスタックをオープンソース化すると発表しました[1]。8月4日から6日まで米カリフォルニア州サンタクララで開かれているFuture of Memory and Storage(FMS)に合わせた発表で、40社を超えるストレージ関連企業を巻き込んだ「Storage-Next」構想も同時に示されています[1][2]。
ストレージがデータの通り道そのものになる
これまでストレージは、データを置いておく受け身の場所という扱いでした。ところがAIエージェントが大量のデータを消費するようになり、GPU自身がストレージへの要求を直接発行できるようになったことで、同時並行の入出力が数千単位で発生します[1]。
ストレージ側は、その要求をさばきながら暗号化・圧縮・検証・再構築を絶え間なく続けなければなりません。NVIDIAはこうしたデータサービスがボトルネックになりつつあると指摘しています。同社の技術ブログで示されたベンチマークでは、NVIDIA Vera BlueField-4 STXに含まれるVera CPUが、圧縮と暗号化を2段構えで処理するパイプラインにおいてx86 CPUの最大3.21倍のスループットを記録したとされています[1]。
メモリに置くか、ストレージに置くか。この判断の基準は40年前に整理された当時、データへ到達するまでの時間を分単位で測っていました。現在のGPUとAI向けストレージの組み合わせでは、同じ判断がマイクロ秒単位で行われます[1]。前提が変われば設計も変わるという話です。
cuFileの公開とGoogle・Intel・Metaの参加
cuFileは、NVIDIA GPUDirect Storageを構成する要素の1つです。CPUを介さずGPUが直接ストレージを読み書きできるようにする仕組みで、数十万規模のGPUスレッドと広帯域メモリを使い、マイクロ秒単位でのデータ取得を可能にします[1]。
今回のオープンソース化で新設されたサイトには、Google、Intel、NVIDIA、Metaの4社が発足時のメンテナーとして名を連ねます[1]。特定のハードウェアに閉じた最適化ではなく、複数のソフトウェア・ハードウェア環境で使える形に育てる狙いがうかがえます。
NVIDIAはセキュリティ面の効用も挙げています。高速で安全なデータアクセスは、攻撃を防ぐ側と検知する側の両方にとって土台になる要素です。cuFileを開くことで、AIを使った防御が求める速度でセキュリティの文脈やデータを扱えるようになるとしており、新たに立ち上がったOpen Secure AI Allianceのような取り組みを後押しすると説明しています[1]。
40社超が参加するStorage-Nextと、SCADAという枠組み
Storage-Nextは、ストレージメーカー、コントローラーベンダー、熱設計や冷却、オーケストレーションの事業者、そして標準化団体を集め、GPU主導のストレージがどう振る舞うべきかをすり合わせる取り組みです。合意した内容は相互運用可能なオープン標準へ落とし込む方針が示されています[1]。
参加企業は40社を超え、DDN、キオクシア、Micronといった名前が挙がっています[1]。この枠組みを支える技術がSCADA(scaled, accelerated data access)で、並列度の高いGPUが必要なデータだけをストレージから自前の高速メモリへ直接引き込めるようにします。DDNは自社のデータ基盤Infiniaへ、SCADAの統合を進めているとのことです[1]。
DDNの最高技術責任者であるSven Oehme氏は、AIの成否はインフラをどれだけ所有しているかではなく、どれだけ生産的に使えるかで決まると述べ、GPUとデータをより直接的に結ぶ取り組みだと位置づけています[1]。
速さと安全性を両立させる分割の作法
アプリケーションがドライブと直接やり取りするのは速い一方で、扱いを誤れば他プロセスのメモリを壊しかねません。機能ではなく脆弱性になってしまいます[1]。
SCADAはこの問題を、役割を2つに割ることで回避します。生の速度が必要なアプリケーションのユーザー側部分は、信頼される計算基盤の外に置いたままにします。そのうえで、権限を持つ別の構成要素が初期設定の段階でユーザーアプリと許可されたストレージの間に保護されたアクセス経路を用意し、Linuxの標準的なセキュリティ手続きに従って守るという分担です[1]。
なお、Storage-NextやSCADAの土台となるNVIDIA Vera BlueField-4 STXは、Vera Rubinプラットフォーム、Vera BlueField-4ストレージプロセッサ、Spectrum-X Ethernetを組み合わせたラック規模のモジュール構成です。統合されたDOCAセキュリティスタックにより、AIのデータ経路上でポリシーを継続的に適用できるとしています。長い文脈を扱う多ターンのエージェント型推論に向けた階層として、STX上にNVIDIA CMX Context Memory Storageも用意されます[1]。
まとめ
NVIDIAはFMSに合わせ、GPUがストレージを直接読み書きするcuFile APIと配下のソフトウェアスタックをオープンソース化し、Google・Intel・Metaとともにメンテナンスする体制を発表しました。あわせて40社超が参加するStorage-Next構想と、必要なデータだけをGPUメモリへ引き込むSCADAを示しています。演算性能の話に偏りがちなAIインフラの議論を、データを供給する側から捉え直す動きとして注目に値します。
