韓国科学技術院(KAIST)の研究チームが、スマートフォンに小さなLEDケースを取り付けるだけで隠しカメラを見つけ出せる技術「SweepLED」を発表しました。LEDの照射方向を次々に切り替えながら撮影し、反射の動き方をAIが解析してレンズだけを見分ける仕組みです。実物を使った検証では約94パーセントの精度で検出でき、1つの物体を調べるのにかかる時間は5秒未満でした。ケースの主要部品は7ドル(約1,100円)に収まるとしており、誰でも手に取れる価格帯の検出ツールへ発展する可能性があります。

ホテルや民泊で増える「見えないカメラ」への対策

充電器や置き時計、リモコンといった日用品に仕込まれた小型カメラは、宿泊施設や民泊、トイレなどでの盗撮に使われ、世界的な社会問題になっています。市販の携帯型検出器もありますが、その多くは強い光を当てて「光る点」を人の目で探す方式です。金属やガラス、光沢のあるプラスチックもよく反射するため、レンズと見間違えて誤検出しやすく、逆に小さなレンズを見逃す恐れもありました。

KAIST(総長 ペ・チュンシク)は8月30日、電算学部のハン・ジュン教授率いる研究チームが、シンガポール国立大学(NUS)およびシンガポール経営大学(SMU)と共同でSweepLEDを開発したと発表しました。「見つけにくい点を目で探す」のではなく、反射そのものの性質をAIに判定させる点が従来との違いです。

光を動かすと、レンズの反射だけが「違う動き」をする

SweepLEDの中核は、スマートフォンのカメラを固定したまま、ケースに並んだLEDの点灯位置だけを順番にずらしていく「照明のスイープ」です。光源の位置が変わると、普通の光沢面に映った反射は位置が移動したり消えたりします。ところがカメラのレンズは、内部にレンズ群、絞り、センサーという構造を持つため、反射の形が独特な変化を示します。

研究チームはこの「時間とともに反射がどう変形するか」という差を、深層学習モデルで見分けるようにしました。動画として撮影した連続フレームの中から反射の候補を拾い上げ、フレーム間の変化パターンを分析して隠しカメラかどうかを判定します。さらに、複数の視点から得た判定結果を組み合わせることで、判定の信頼性を高めています。単に明るい点を探す方式と違い、反射の「動き」と「形の変化」の両方を同時に手がかりにできるのがポイントです。

30種類の物体で約94パーセント、1つあたり5秒未満

研究チームは、実際の生活空間にありそうな30種類の物体を用意し、その中にカメラを隠した状態で検証しました。結果は検出精度が約94パーセントで、1つの物体を調べるのに必要な時間は5秒未満でした。宿泊先の部屋で怪しい小物を1つずつ確認しても、現実的な時間で済む水準です。

ハードウェアは、安価なプリント基板にLEDを並べたアレイと、スマートフォンに取り付けるモジュール式のケースで構成されます。主要部品のコストは7ドル(約1,100円)未満、韓国ウォンにして約1万ウォン(約1,100円)とされており、高価な専用検出器を買わなくても、手持ちのスマートフォンにケースを足すだけで済む設計です。

※1ドル160円、1ウォン0.11円換算

ハン教授は「隠しカメラは日常空間における個人の安全とプライバシーへの深刻な脅威です」としたうえで、「低コストのスマートフォン用ハードウェアとAI解析を組み合わせ、専門家でなくても使える実用的な検出技術の可能性を示した点に意義があります」と述べています。

MobiSys 2026で発表、論文は公開済み

この研究は、KAISTの博士課程学生ユン・ジョンヒョク氏を第一著者とする論文「Hide-and-Sweep: Detecting Concealed Cameras via LED Illumination Sweeps」としてまとめられ、モバイルコンピューティング分野の主要国際会議であるACM MobiSys 2026で6月20日に発表されました。著者にはKAISTのほか、NUSとSMUの研究者が名を連ねています。研究は韓国の科学技術情報通信部と韓国研究財団の支援を受けて行われました。

現時点では研究段階のプロトタイプで、製品として販売される予定は示されていません。ただし、スマートフォンのケースという形で持ち歩ける点、部品代が1,000円程度で済む点、専用アプリで結果が自動的に出る点は、いずれも一般向け製品に落とし込みやすい要素です。旅行先や出張先での「念のための確認」を、誰でも数秒でできる時代が近づいていると言えそうです。

まとめ

KAISTがNUS、SMUと共同で開発した「SweepLED」は、スマートフォンに取り付けた安価なLEDケースで照明の向きを切り替え、反射パターンの変化をAIで解析して隠しカメラのレンズを見分ける技術です。30種類の物体を使った検証で約94パーセントの検出精度と5秒未満の検査時間を実現し、主要部品は7ドル(約1,100円)に抑えられています。論文はACM MobiSys 2026で発表済みで、宿泊施設などでの盗撮対策を身近にする技術として注目されます。