Hugging Faceのロボット部門であるPollen Roboticsが、身長25cmの二足歩行ロボット「Microduck」の予約受付を2026年8月27日に開始しました。価格は399ドル(約6万3,000円)で、初回出荷はクリスマス前を目標としています。箱から出してすぐ遊べる一方、歩く・掴む・立ち上がるといった動作の中身は強化学習で作られたモデルで、シミュレーターで鍛え直してそのまま実機に載せられるのが最大の特徴です。

※1ドル159円換算

25cmのアヒル、価格は399ドル

Microduckを作っているのは、フランスのボルドーを拠点とするPollen Roboticsです。2016年にInria(フランス国立情報学自動制御研究所)出身の研究者が立ち上げ、2025年4月にHugging Faceへ合流し、そのままロボット部門になりました。デスクトップ向けの「Reachy Mini」に続く、一般向けとしては2機種目の製品にあたります。

本体は身長25cm、幅14cm、重さは800gを切ります。関節は15自由度で、脚・首・頭に配分されています。カラーはCream、Graphite、Lavender、Skyの4色で、外装の色が違うだけで中身はどれも同じです。

発売時点で販売されるのは北米と欧州のみです。日本からの購入手段は現時点で示されていないため、国内で手に入るかどうかは続報を待つ必要があります。

中身はRK3566、LiDARとNFCまで載る

頭脳にあたるのはRockchipのSoC「RK3566」で、AIアクセラレーターを内蔵しています。メモリは1GB、ストレージは32GBと、スマートフォンの感覚で見ると控えめですが、学習済みの制御モデルを50Hzで回すという用途には足りる構成です。

センサー類は思いのほか充実しています。前方カメラに加えて、8x8のToF(Time of Flight、光の往復時間で距離を測る方式)マトリクスによる小型LiDAR、そして胴体と頭にひとつずつ計2基のIMU(慣性計測装置)を積みます。頭とくちばしにはNFCのアンテナが1基ずつ入っていて、タグをかざして反応させるような遊び方が想定されています。マイクとスピーカーも備え、声は個体ごとに生成されるという凝りようです。

カメラには、使用中であることを示す専用のインジケーターが付きます。ビデオカメラのRECランプから発想を得たもので、カメラ付きのロボットを部屋に置くことへの抵抗感を和らげる狙いがうかがえます。

電源は、着脱式のNP-F550、つまりビデオカメラ用として広く出回っている2600mAhのバッテリーを流用しています。駆動時間は使い方次第で1時間ほど。専用バッテリーではないため、替えを調達しやすいのは実用面で効いてきます。

同梱物はロボット本体、バッテリー、USB Type-Cケーブル、そしてゲームコントローラーです。コードを1行も書かずに動かせる状態で届きます。

7つの動きは、すべて作り直せる

出荷時点で7つの動作モデルが入っています。速度指令に追従して歩く、座って姿勢を保ってから立ち上がる、片脚で蹴る、くちばしを地面に下ろして物をすくい上げる、ローラーを装着してスケートする、仰向けの状態から自力で起き上がる、といった内容です。くちばしで持ち上げられる重さは最大800gとされており、自分の体重と同じくらいのものを咥えられる計算になります。

面白いのはここからで、これらの動作は固定されたプログラムではなく、それぞれが差し替え可能な学習済みモデルとして扱われます。物理シミュレーターのMuJoCo上で強化学習を回し、できあがったモデルを実機に転送し、動きを見て調整し、また学習し直す。この一連の流れがそのまま公開されています。学習は手元のマシンでもHugging Face Jobs上でも実行できます。

SDK、シミュレーション環境、強化学習の訓練スクリプトはGitHubで公開され、ライセンスはApache 2.0です。ブラウザ上で動くシミュレーターもHugging Face Spacesに用意されており、実機を持っていなくても訓練環境だけ先に触れます。実機に載っているものと同じコードを読んで、改造して、共有できるという設計です。

ただし、オープンソースなのはソフトウェアだけです。機構設計や電子回路の設計データは公開されないとPollen Robotics自身が明記しており、オープンソースハードウェアではありません。ここは誤解されやすい部分です。

拡張パックと、まだ確定していない仕様

本体とは別に、3種類の拡張パックが用意されています。2連充電器とバッテリー2本の「Charger pack」が39ドル(約6,200円)、予備モーター3個・モーターケーブル5本・バッテリー2本・充電器・NFCタグ10枚・ドライバー・ネジ類が入る「Dev pack」が119ドル(約1万9,000円)、レーザーポインター・ローラー2個・ボール・NFCタグ10枚などの「Accessory pack」が39ドルです。開発で酷使する前提なら、モーターの予備が入るDev packは現実的な選択肢になりそうです。

なお、カメラの解像度と画角、LiDARの測距範囲、無線の対応規格、SDKの対応言語、そして対象年齢の目安は、まだ確定していないとされています。399ドルという価格も「導入価格」と位置づけられており、税と送料は別です。予約するかどうかを判断する材料としては、この確定していない部分をどう見るかが分かれ目になります。

まとめ

Microduckは、25cmのアヒル型ロボットという見た目の親しみやすさと、強化学習の一通りの流れを実機で回せる開発環境を、399ドルの1台に同居させた製品です。買ってすぐコントローラーで遊べて、飽きたら自分で動きを作り直せる。ロボット開発の入口としては、これまでになく段差の低い1段目と言えます。発売は北米と欧州が先で、日本での扱いは現時点で不明です。