Googleは、文章による指示だけで新しい声を一から作り出せる音声合成モデル「Gemini 3.8 Flash TTS」と、高速・低コスト処理に特化した「Gemini 3.8 Flash-Lite TTS」を公開しました。従来モデルは用意された声の中から選ぶ方式でしたが、新モデルは役柄や話し方を言葉で指定して声そのものを生成できるようになり、ゲームやオーディオブック、ポッドキャスト制作などでの活用が見込まれます。

声を「選ぶ」から「作る」へ

これまでのGoogle製TTSモデルは、30種類ほどの既定音声から選んで使うのが基本でした。今回のFlash TTSでは、この既定音声に加えて、役柄やアクセント、声質などを自然言語で指定するだけで、新しい声をゼロから生成できるようになったのが最大の変更点です。地域ごとの話し方の違いを含めた2000種類以上の音声ライブラリも用意されており、声色や高さ、話す速さ、アクセントを後からプロンプトで調整する「ボイスリミックス」機能も近く提供予定とされています。対応言語はFlash TTSが130言語、大量処理向けのFlash-Lite TTSが101言語で、いずれも日本語を含みます。

30秒程度の音声サンプルから話者の声を再現する「ボイスレプリケーション」機能も搭載されました。対象は自分の声か、利用権を持つ声に限られ、利用時には声の持ち主が口頭で同意したことを示す録音の提出が求められるほか、その録音の話者が参照音声と一致するかを確認する仕組みも設けられています。なお、この機能はGoogle AI Studio上では、米イリノイ州・テキサス州、欧州経済領域(EEA)、英国、スイス、インドでは利用できません。

演技指示と長尺コンテンツへの対応

両モデルとも、台本に1行ごとのト書きのような指示を書き込むことで、話すペースや感情を細かく制御できます。数時間に及ぶ長尺の音声でも声質や自然な間合いを保ったまま生成できるほか、1つの台本から2人の話者による会話を作ることも可能です。笑い声やため息、息をのむ音といった言葉以外の音や、相づちをタグで挿入する機能も備えています。生成した音声にはGoogleの電子透かし技術「SynthID」が組み込まれ、ボイスレプリケーションで作った音声にはコンテンツの来歴を示す「C2PA」の認証情報も付与されます。

提供範囲と価格体系

両モデルは発表当日から順次提供が始まりました。開発者向けにはGemini APIとGoogle AI Studioで、一般ユーザー向けにはFlash TTSが「Gemini Notebook」の音声解説機能で、Flash-Lite TTSが「Google Vids」で利用できます。企業向けには「Gemini Enterprise」でのAPI提供も近く始まる予定です。Agora、LiveKit、Pipecat、Vercelといった開発者向けプラットフォームもGemini API経由での対応を進めているほか、Figma、HeyGenなどが自社サービスへの組み込みを進めています。

料金はGemini APIの有料プランで、100万トークンあたりFlash TTSが入力0.5ドル(約79円)・出力9ドル(約1,400円)、Flash-Lite TTSが入力0.5ドル(約79円)・出力6ドル(約940円)です。いずれも2026年12月31日までの価格で、2027年1月1日からはそれぞれ2倍に引き上げられる予定です。無料枠も用意されており、非同期処理の「Batch」「Flex」を使えば標準料金の半額で利用できます。

性能評価では、音声デザインの専門機関であるHume AIのベンチマークでFlash TTSが総合1位を獲得し、アクセント表現の項目でもトップの評価を得ました。同社の総合品質指標ではFlash TTSが1位、Flash-Lite TTSが2位という結果です。人が実際に聞き比べて評価する「Voice Arena」でも、日本語をはじめとする複数の言語で上位にランクインしています。両モデルは、リアルタイム音声対話の「Gemini 3.8 Live」や文字起こしの「Gemini 3.5 Transcribe」などと並ぶ、Googleの音声モデル群「Gemini Audio」の新たな一員となります。

まとめ

Googleが公開した「Gemini 3.8 Flash TTS」と「Gemini 3.8 Flash-Lite TTS」は、既定の声を選ぶだけだった従来のTTSモデルから一歩進み、言葉による指示だけで新しい声を作り出せる点が特徴です。演技指示や長尺コンテンツへの対応力を高めつつ、SynthIDやC2PAによる真正性の担保にも配慮しており、開発者向けAPIから一般ユーザー向けのGemini Notebook・Google Vidsまで幅広い提供経路が用意されています。

※1米ドル=157円換算(2026年9月25日時点)