Googleが、自律型のコーディングエージェント「Google Antigravity」を、Gemini Enterpriseの対象プランに追加費用なしで含める形へ切り替えました。これまで別枠での調達や個別アカウントの管理が必要だった機能が、既存の契約にそのまま乗ります。あわせて主要なコードエディタ向けの拡張機能も用意され、専用アプリを開かなくても同じエージェントを呼び出せるようになりました。

別枠のライセンス調達が不要になる

対象はGemini EnterpriseのStandardとPlusです。この2つのライセンスを持つ組織であれば、Antigravityの機能が契約の範囲に含まれ、開発者はアドオンの承認を待たずに使い始められます。

エージェント型の開発ツールは、部門単位で試験導入したあと全社展開の段階でライセンス調達が壁になりがちでした。今回の変更は、その手続きそのものを消す方向の調整です。管理する側から見ても、利用状況の把握、セキュリティ統制、コスト管理を1カ所に集約できます。

ログイン周りも整理されました。各提供面がWorkforce Identity Federation(WIF)とApplication Default Credentials(ADC)にネイティブ対応しており、社内で使っている既存のIDでそのまま認証できます。APIキーを手作業で設定してエージェントに渡す、という工程が要りません。

使い慣れたエディタから直接呼び出せる

今回はIDE拡張機能も同時に用意されました。対応するのはVisual Studio Code、Visual Studio、JetBrains製のIDE、Zedの4種類です。このうちVisual Studio、JetBrains、Zedの企業向けサポートは、現時点ではプレビュー段階とされています。専用のAntigravity 2.0アプリやコマンドライン版も引き続き選べるため、チームごとに違う環境を使っていても入口を揃えやすくなります。

Antigravityが担うのは、コード補完の一歩先にある作業です。コードベースを自分で調べ、ローカルでビルドを走らせ、ブラウザーを操作しながら一連のタスクを最後まで実行する、という設計になっています。

自律実行に付ける手綱

ターミナルコマンドの実行やローカルコードの読み取り、ブラウザー操作までエージェントに任せる以上、企業側には制御手段が要ります。今回の提供では、管理者向けに次のような仕組みが用意されています。

  • サンドボックスとポリシーの設定。ワークスペースのサンドボックス化を強制し、ブラウザーやMCP(Model Context Protocol)サーバーへの権限を制限して、許可された環境の中だけで動かせます。
  • 予算上限と共有トークンプール。Google Cloud Billing上でプロジェクト、チーム、個人の単位に月次のしきい値を設定できます。購入済みの枠を遊ばせずに、必要としているチームへ回す運用が可能です。
  • 超過時の制御。上限付きで超過を許可する設定を選べるため、進行中の処理が枠切れで途中終了する事態を避けられます。
  • 監査ログ。トグル1つで、プロンプト、エージェントによるツール実行、生成された成果物を丸ごと記録できます。

データの扱いについては、エージェントの活動が企業の境界内に留まり、Google Cloudの利用規約が適用されると説明されています。投入したコードが基盤モデルの学習に使われることはない、という点も明記されました。

先行事例と、まだ読み取れない部分

先行して使っている例として挙がっているのが、航空会社のAirAsiaです。同社のエンジニアリングチームは、本番環境のQAコードの50パーセント超をAntigravityで生成しているとされています。テスト工程は反復作業の比率が高く、エージェントの効果が数字に出やすい領域と言えます。

なお、対象となるライセンスの細かい条件、共有トークンプールの単価、すでにアドオンとして個別契約している組織の扱いといった運用面は、現時点の公開情報からは詳細まで読み取れません。全社展開を前提に見積もるなら、この辺りは事前に確認しておきたいところです。

まとめ

Google Antigravityが、Gemini EnterpriseのStandardとPlusに追加費用なしで含まれるようになりました。VS CodeやJetBrains、Zedなど主要IDE向けの拡張機能も同時に提供され、既存の企業IDで認証できます。サンドボックス、予算上限、監査ログといった統制機能が揃った点も含め、エージェント型開発を部門単位の試験から全社運用へ持ち上げるための整備、という位置付けです。実際の効果は、AirAsiaのような数字が他の業種でも再現するかどうかで見えてきます。

参考リンク