中国の自社設計プロセッサメーカーZhaoxin(兆芯)が、江蘇省蘇州で5月7日から9日まで開かれた「2026移動雲大会」で、サーバー向けの新世代プロセッサ「開勝(KaiSheng)KH-50000」を中心とした製品群を披露しました[1]。デュアルソケット構成で1台あたり最大192コアに達し、DDR5メモリやPCIe 5.0といった国際標準のインターフェースにネイティブ対応する点が特徴です[1]。海外勢に依存しない「自主算力(国産の計算基盤)」を掲げる同社の現在地を示す展示となりました。
中国移動クラウド大会で見せた自社プロセッサ群
「2026移動雲大会」は通信大手China Mobile(中国移動)が主催する年次イベントで、今年は「移動雲 智能新空間」をテーマに、AIや算力(計算能力)、トークンを使ったアプリケーションに焦点が当てられました[1]。
この場でZhaoxinは、サーバー向けの「開勝KH-50000」とPC・組み込み向けの「開先(KaiXian)KX-7000」という2系統の計算チップを軸に、新世代のAIサーバーや高性能サーバー、フルスタックの専用クラウド、そしてチップレベルのセキュリティソリューションをまとめて展示しました[1]。自社の処理技術と量産実績を、来場した業界パートナーや技術者に示す狙いです[1]。
サーバー向け「KH-50000」の中身
主役となる開勝KH-50000サーバープロセッサは、計算密度の高さ、複数ソケットへの柔軟な拡張、高速IOの全面的な刷新を売りにしています[1]。AI時代に急増する算力やストレージの需要に応えるため、汎用サーバーからAIの学習・推論用サーバー、高密度ストレージサーバーまで、幅広い構成の土台となることを想定した設計です[1]。
性能面では、データベース処理や仮想化において前世代プラットフォームから数倍の向上を実現したとしています[1]。AI用途ではDDR5やPCIe 5.0など主流のIOにネイティブ対応し、国内主要ブランドのGPUやAIアクセラレーターカードとの組み合わせを深く作り込むことで、大規模言語モデルの学習・推論や、ローカル環境での大規模モデル運用を支えるとしています[1]。大量の同時アクセスが発生する場面でも、1台あたりのIOPS(ストレージの入出力性能)は1,000万回規模に達するとされています[1]。
会場では、このKH-50000を採用したサーバーが各社から並びました[1]。Lenovo(聯想)の「開天KR722z G3」は、KH-50000を2基搭載して1台で192コアを実現し、DDR5メモリスロットを24基備え、ホットスワップにも対応します[1]。AI向けの「2S4U AIサーバー」はKH-50000/96を2基積んで192コアとし、全高全長のPCIe 5.0スロットを最大13基まで拡張できる構成です[1]。このほか、汎用サーバーやストレージサーバー、水冷を標準装備したワークステーションなど、パートナー各社が手がける複数の自社算力プラットフォームが集まりました[1]。
ZX86命令セットと国密対応のセキュリティ
Zhaoxinが技術の根幹に置くのが、自社で定義・拡張した命令セット「ZX86」です[1]。x86をはじめとする主流ソフトウェアとの互換性を保ちながら、外部に依存せず自前で改良を続けられる体制を整えたとし、同社はこれを「自主創新不封閉、兼容主流不依附(自前で革新するが閉じず、主流と互換だが従属しない)」という方針で表現しています[1]。サーバー向けの開勝シリーズと、PC・組み込み向けの開先シリーズをそろえることで、クラウドからエッジ、端末までを一貫してカバーする狙いです[1]。
セキュリティでは、SM2やSM3、SM4、SM9、ZUCといった中国独自の暗号方式(国密アルゴリズム)の高速化命令をCPUに組み込み、国家の商用暗号認証を取得していると説明しています[1]。全メモリの暗号化やセキュアブート、トラステッドコンピューティングにも全製品で対応し、システムの起動から演算、データ保存までを通したセキュリティ機構を構築したとしています[1]。
クラウドPCと専用クラウドへの展開
KH-50000は単体のサーバーにとどまらず、クラウド基盤への展開も示されました[1]。China MobileやZhaoxinなどが共同で構築する「フルスタック専用クラウド」では、開勝シリーズを汎用算力の支えとし、全体で6,400コア規模の計画になるとされています[1]。上海の国有企業向けに、アプリケーションの適合テストや性能比較、移行経路のシミュレーションを提供する基盤として位置づけられています[1]。
クラウドPC向けには、KH-50000を2基使うプラットフォームにMoore Threads(摩爾線程)のGPU「S3000」を2枚組み合わせる構成も紹介されました[1]。物理GPUを必要に応じて切り分け、仮想的な資源を動的に割り当てることで、クラウドデスクトップでの資料表示や高精細動画の再生といった、これまで引っかかりがちだった処理の改善を狙うとしています[1]。端末側の処理は、開先KX-7000シリーズを核とするクラウドPC端末が担います[1]。
まとめ
今回の展示は、Zhaoxinがサーバー向けの開勝KH-50000を中核に、PC向けの開先KX-7000やZX86命令セット、国密対応のセキュリティ、専用クラウドまでを一つの体系として打ち出したものです。DDR5やPCIe 5.0への対応、デュアル構成で192コアという仕様は、国際標準のインターフェースを取り込みながら国産で計算基盤をそろえようとする方向性を示しています。海外のx86勢とどこまで性能差を詰められるかは今後のベンチマーク次第ですが、中国国内で完結する算力エコシステムの広がりを確認できる発表でした。
出典:https://www.zhaoxin.com/news_view.aspx?nid=2&typeid=289&id=2033
