自動車の運転支援でおなじみになった技術が、そのまま自転車に載りました。n+がVolkswagenのライセンスを受けて開発した「Smart eBike」は、ハンドル中央のディスプレイに後方の映像を映し、レーダーが接近車両を検知すると死角警告を出します。トップチューブのLEDはブレーキで赤く、曲がるときは黄色く光ります。2026年7月14日にドイツのヴォルフスブルクで発表されました。

振り返らなくても後ろが見える

中核となる機能はSmart Viewと名付けられています。後方を向いたレーダーが接近する車両を捉えると、リアカメラの映像が自動で立ち上がり、ハンドル中央に組み込まれたディスプレイに映ります。同時に死角警告も表示されるため、車道で振り返る動作そのものを減らせるという発想です。

自転車で後ろを確認する動きは、その一瞬だけ前方から目が離れます。クルマのバックカメラやブラインドスポットモニターが当たり前になった今、同じ理屈を自転車に持ち込んだのがこの製品と言えます。メーカー側は、市街地を走るeBikeが増えるほど事故も増えており、クルマ側と自転車側が互いの動きを予測できる状態をつくる必要がある、という立場を取っています。

トップチューブが光って意思を伝える

もう1つの柱がSmart Lightsです。フレームのトップチューブに全長のLEDストリップが埋め込まれており、日中は被視認性を高めるデイタイムランニングライトとして働きます。ブレーキをかけると赤、進路を変えるときは黄色に切り替わり、周囲のドライバーに乗り手の意図を伝えます。Volkswagenの車両で使われている灯火デザインの考え方を、そのまま二輪に移した部分です。

ただし、この挙動連動型のLEDは公道での使用が認められていない国があり、メーカーはドイツとフランスを名指しで注記しています。日本での扱いについては現時点で公式な言及がありません。海外の先進機能がそのまま国内で使えるとは限らない点は、頭に入れておきたいところです。

ヘルメットとサングラスまで連動する

車体の外側にも仕掛けがあります。Smart HelmetはBluetoothでeBikeとつながり、ブレーキや方向指示の動作に合わせて後方へLEDで合図します。加速度センサーを内蔵しており、転倒を検知すると家族などに緊急連絡のテキストメッセージを送る機能も備えます。

Smart Glassesはヘッドアップディスプレイ付きのサングラスです。ナビの進行方向、レーダーによる死角警告、走行情報が視界の中に重ねて表示されます。視線を右上に向ける動作で表示のオンとオフを切り替える仕組みで、開発には戦闘機のヘルメットマウント型HUDを手がけた技術者が関わっているとされています。eBike専用というわけではなく、単体のスマートグラスとしても使える設計です。

価格は自転車としてはかなりの上位

駆動系はYamahaのミッドドライブユニットで、定格出力は250W、アシストが働くのは時速25kmまでです。航続は最大160kmとされていますが、これは体重や風、路面によって変わる目安値だと公式に注記されています。勾配や加速に応じて自動でアシスト量を調整するオートマチックモードが用意されているのも特徴です。盗難対策としては85dBのアラームとAppleの「探す」への対応が組み合わされています。

ラインアップは2種類で、機敏なハンドリングに振ったSportが3,999ユーロ(約74万円)、快適性と航続に振ったCrossoverが4,349ユーロ(約80万円)です。Smart Viewは単体では699ユーロ(約13万円)ですが、先行予約分には無料で付属します。Smart HelmetとSmart Glassesはそれぞれ499ユーロ(約9万円)、Smart Securityが149ユーロ(約3万円)、航続を伸ばすSmart Range Extenderが848ユーロ(約16万円)という設定です。

※1ユーロ185円換算

出荷は2026年第4四半期からの予定で、現在販売されているのは先行予約枠です。公式サイトでは、EUの規制に適合する認証を完了したうえで出荷されると明記されており、現段階の車体は量産前のモデルという位置づけになっています。製造はN Plus North America、欧州での販売はN Plus Europeが担当します。

まとめ

Volkswagenのライセンスのもとでn+が開発したSmart eBikeは、レーダー連動の後方カメラ、挙動に合わせて光るトップチューブのLED、HUD搭載のスマートグラスまでを1つの安全システムとしてまとめた製品です。価格はSportが3,999ユーロ、Crossoverが4,349ユーロで、出荷は2026年第4四半期の予定です。自動車の安全技術がどこまで自転車に降りてくるのか、その現時点での到達点を示す1台と言えます。