TCLが、ベルリンで開催中のIFA 2026に合わせてスマートフォンの新シリーズ「P80」を発表しました。上位2機種には、同社が長く育ててきた目にやさしい表示技術NXTPAPERを、初めてAMOLEDパネルと組み合わせた画面が載ります。最上位のP80 Ultraは3倍の光学ズームに対応する望遠カメラを備え、欧州では549ユーロから販売が始まっています。

LCDで培った技術がついにAMOLEDへ

NXTPAPERは、映り込みとブルーライトを抑えて紙のような見え方に近づけるTCLの表示技術です。これまでは液晶パネルと組み合わせるのが前提でしたが、今回のP80 UltraとP80 Proでは有機ELパネルに載せる形に変わりました。黒の締まりと色の出方はAMOLEDのまま、表面の処理で光の反射を殺すという狙いです。

パネル自体は3機種とも共通で、6.83型の1.5K表示(2772×1280ドット)、リフレッシュレート120Hz、ピーク輝度3200ニトという構成です。標準モデルのP80は通常のAMOLEDを積み、Pro以上にNXTPAPERの層が加わります。ProとUltraには画面モードを切り替えるための物理キーが側面に用意されており、指を伸ばすだけで通常表示と紙のような表示を行き来できます。

Ultraではさらに手が入っていて、TCLは反射を抑えるNano Crystal Shield Glassを採用したと説明しています。偏光フィルターも直線偏光ではなく円偏光を使うため、偏光サングラスをかけたまま画面を見ても暗く沈みにくくなります。有害なブルーライトの比率は2.9パーセントまで下げたとしています。

Ultraだけが持つ望遠、3機種の線引き

シリーズの差はカメラに最も分かりやすく出ています。P80 Ultraの背面は3眼で、1/1.56型センサーの5,000万画素メインカメラ、光学式手ブレ補正付きの5,000万画素望遠カメラ、そしてオートフォーカス対応の800万画素超広角カメラという構成です。望遠は3倍の光学ズームに対応し、6倍まではロスレスで寄れます。

P80 Proはメインカメラと超広角をUltraと共有しつつ、望遠を省いた2眼です。標準のP80も同じ2眼構成で、薄さと扱いやすさを優先した位置づけになります。前面のカメラは3機種とも3,200万画素で共通です。

中身に目を移すと、UltraのプロセッサーはMediaTekのDimensity 7400 Eliteです。メモリはLPDDR5規格で8GB、ストレージはUFS 3.1の256GBまたは512GBが選べます。バッテリーは5,800mAhで、45Wの有線充電に対応します。防水防塵はIP68、耐衝撃の試験規格であるMIL-STD 810Hにも通しているとしています。

7日もつ「Max Ink」と、姿勢まで見るアシスタント

紙のような表示に切り替えるだけでなく、電池の持ち方まで変えるのがMax Inkモードです。このモードでは通話とメッセージを除く通知が止まり、バックグラウンドで動いていたアプリも休止します。TCLはこの状態で最大7日間の駆動が可能だとしています。読書端末として使う日と、普段のスマートフォンとして使う日を、1台の中で切り替えられるという発想です。

読み物そのものも用意されていて、Ultraには500冊を超える書籍が最初から入っています。本の内容をオーディオブックやポッドキャスト風の音声に変換するAI機能も備わり、目を休めたいときは耳で聞くという逃げ道が用意されました。

もう1つ目を引くのが、目の使い方を見張るアシスタントです。画面に顔が近づきすぎたとき、姿勢が崩れたとき、輝度が明るすぎたり暗すぎたりするとき、そして休憩を取るべきタイミングで通知を出します。表示技術で対策するだけでなく、使い方の側にも介入してくるのが今回の特徴です。

ソフトウェアの更新方針も示されており、OSのメジャーアップグレードが4回、セキュリティ更新は7年間提供されます。この価格帯としては長めの部類に入ります。

価格と入手性

P80 UltraのカラーはMidnight Blue、Burgundy、Sunlit Goldの3色です。価格は256GBモデルが549ユーロ(約9万9,000円)、512GBモデルが599ユーロ(約10万8,000円)で、欧州ではすでに販売が始まっています。市場によっては本体に合わせたケースや充電器が同梱されます。

※1ユーロ=181円換算(2026年9月5日時点)

通信面はWi-Fi 6とBluetooth 5.4、eSIMに対応し、スピーカーはDTSのサラウンド処理に対応したステレオ構成です。日本での取り扱いについては、この記事の時点で示されていません。構成や色、価格は市場と販売チャネルによって変わるとTCLは断りを入れています。

まとめ

P80シリーズの核心は、映り込みを抑える表示技術を有機ELへ持ち込んだ点にあります。輝度3200ニトの明るさと、紙のように読める落ち着いた表示を1枚のパネルで切り替えられるという提案は、スペック競争とは別の軸で分かりやすい価値です。549ユーロからという値付けを踏まえると、望遠カメラを積んだUltraは中位価格帯の選択肢として現実的な位置に収まっています。あとは実機で、AMOLEDらしい発色と紙のような見え方がどこまで両立しているかを確かめたいところです。